生産終了後の諸問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 03:57 UTC 版)
「ワードプロセッサ」の記事における「生産終了後の諸問題」の解説
生産終了後は、ワープロ専用機で作られた多くの文書資産をどうパソコンに移行させるかは、多くの企業にとって悩みの種だった。とりわけ専用機は罫線や振り仮名などで各社独自の工夫でデータ処理していた。パソコン側のソフトウェアでも変換機能を搭載したものもあるが、罫線や各社の絵文字、記号などは変換することはできず、また同じメーカーでも機能の多様化で処理方法が変化したりしており、本文のテキスト化がせいぜいといった程度であった。このため、各社ともにワープロの終焉とともにパソコンでの再現性を高め、データを移行させるためのソフトウェアの開発が求められた。それは必ずしも完全な復元を約束したものではなかったが、それなりに再現でき、一定の役割を果たした。「Power書院」・「Rupo Writer」・「キヤノワードJ for Windows」、またIMEとして「Rupo ACE」が発売されていたが、いずれも販売を終了している。2018年時点でも未だ「OASYS V10」のみ開発・販売が続けられていたが、2020年9月30日を以て個人向けの販売が終了し、法人向けもそれに続く。サポートは2023年まで継続される。 2000年代後半からスマートフォン・タブレットの技術を応用して作られた、年賀状印刷に特化した液晶・キーボード付きのフォトプリンタ(CASIO プリン写ル・EPSON 年賀状 宛名達人等)や、プレーンテキストの入力に特化したポメラなど、ワープロのコンセプトを取り入れた製品が発売されている。 リコーでは2009年にワープロ専用機のシステムFDコピーおよび文書コンバートサービスが、さらに 2017年にはお問い合わせ窓口の対応が終了した。 2018年現在であっても、パソコンやスマートフォンでは代替できない「書いた文書をその場ですぐサーマルプリンターで印刷して利用できる、場所を選ばずに印刷して相手に手渡したり推敲ができる、ラベルシールプリンターとして手軽に使用できる」などの部分があるため未だにオークションなどでは連日のように状態を問わず取引されている。その反面、ワープロ専用機の利用者は積極的にインターネットでの情報交換を行わない傾向が強い。また、レトロゲームや万年筆のような文化として再評価を行う動きは未だになく、既に動態状態かつ付属品が全て揃っている資料的価値の高いのものが絶滅してしまったと思われる機種も出始めている。 また、ワープロ専用機を支持する熱心なユーザーも多く、中古機市場での相場が上昇したこともある。理由には、1960年代中期までに生まれた世代には慣れ親しんだワープロ専用機への愛着が強いこと、小説家、翻訳家など文筆業などで連続稼働をしてもクラッシュを起こさない作業環境の高い安定性や快適さを求める層、一部の法律事務所などネットワーク経由での情報漏洩を懸念している現場での導入、昭和家電の収集愛好家からの支持。さらに、ワープロ専用機は必要な機能が本体ハードウエアに一体化されており電源を入れるだけですぐ使えること、パソコンのような色々な操作やパッチ(フィックス)適用などがほぼ不要なことが挙げられる。このため2010年(平成22年)には、ワープロの製造・修理サポートが終了以後には、修理専門の業者が既存で残った製品の部品から使えるものを選び出し、壊れた製品のそれと交換するかたち(いわゆるニコイチ修理)でしのいでいる事が報道された。 しかしながら、インクリボンや印字用紙の生産終了(TYPE-W型のインクリボン採用機など)、押入れや屋根裏部屋、ロフト、床下収納、車庫、物置など高温多湿下の劣悪な保管環境による液晶パネルの画面焼け(ビネガーシンドローム、システムディスクの破損)、システムディスク原本の破損や紛失(劣化やカビ、著作権法の制約による修理不能問題)、乾電池を抜かずに保管した結果として電池の液漏れによるメイン基板の破損、メーカーからの一部修理業者に対する訴訟リスクによる廃業、ベルトドライブ方式のフロッピーディスクドライブの補修部品供給終了、フロッピーディスク媒体の入手性低下、用紙送りノブの破損、プリンタのローラのゴムの劣化、修理費の高騰などにより年々維持が難しくなりつつあるのが実状である。 2018年1月時点では、1997年のワープロでインターネットサイトを閲覧しようとしてもその後登場した技術・規格に対応していないため、しっかり表示できるのはインターネット黎明期に誕生したサイトやテキストサイト程度である。Googleの通常検索と画像検索は使えるが地図検索は使用不能、ニュースサイトは閲覧できるがレイアウトが大きくずれる、さらにニコニコ動画などの動画サイトは動画ウィンドウが表示されないなど、実用に堪えない状況である。ニュースサイトによる報道ではこれについて「まともなブラウジングはできません」と断言している。なお当時の一般的なワープロでは、CPUが現代のものと比べると圧倒的に低性能であるため、液晶ディスプレイはモノクロ16階調で、画面解像度はVGA(640×480)以下、処理速度の問題からの動画再生には対応できず、インターネット閲覧機能を持っている機種も一部の高級機に限られていた。
※この「生産終了後の諸問題」の解説は、「ワードプロセッサ」の解説の一部です。
「生産終了後の諸問題」を含む「ワードプロセッサ」の記事については、「ワードプロセッサ」の概要を参照ください。
- 生産終了後の諸問題のページへのリンク