文学的評価
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『神曲』は、世界文学を代表する作品として評価は定着しており、西洋において最大級の賛辞を受けている。「世界文学」を語る際にはほぼ筆頭の位置に置かれ、古典文学の最高傑作、ルネサンスの先蹤となる作品とも評されている。特に英語圏では『神曲』の影響は極めて大きく、部分訳を含めれば百数十作にのぼる翻訳が行われ、膨大な数の研究書や批評紹介が発表されている。ダンテ文献を多く蔵するアメリカのコーネル大学図書館では、ダンテ関連の文献だけで4冊の目録が作成されているほどという。日本における『神曲』の受容も、西洋からの翻訳紹介から始まったこともあって、基本的にはこの流れを汲む。 『神曲』は、執筆当時から様々な毀誉褒貶を受けていた。ダンテとほぼ同時代に活躍したボッカッチョは、深くダンテに傾倒し、最初の崇拝者となった。彼は『神曲註解』や『ダンテ礼賛』を著してダンテを顕彰し、後には『神曲』の講義も行っている。一方で、ダンテによって地獄に堕とされた人々の子孫や関係者たちは、当然ながら『神曲』を快く思っていなかった。また、ダンテの正義、倫理観に反する者は、例え教皇であろうと容赦なく地獄に堕として責め苦に遭わせたため、この点を反教的と批判する者もいた。 また今日の評価からすると驚くべきことかもしれないが、ルネサンスが終わりかけに入る頃、ダンテも『神曲』もほとんど言及がなくなる。後輩格のペトラルカやボッカッチョがその他ヨーロッパ文学に与えた影響に比べると明らかに寂しい。例えばフランスの古典主義文学は完全に『神曲』を無視して成立している。 19世紀初頭、イタリアのロマン主義詩人アルフィエーリは、イタリアにおいて『神曲』はほとんど読まれていないと語り、スタンダールもイタリアでダンテは軽蔑されていたと書いている。ゲーテはこの作品の偉大さを理解していたものの、その苛烈な表現に不快感を示し、批判している。19世紀半ばからロマン主義運動とナショナリズムが高揚するにつれて、ダンテは注目されることになり再び読まれ研究されることとなった。そして20世初めにホフマンスタールやT.S.エリオットら詩人や作家によって、半ば神格化されて今日の評価に至るのであり、永続的な高評価を受けてきたわけではないことに留意する必要がある。 『神曲』の中には様々な書物からの引用がある。中でも聖書が最も多く、次にアリストテレスやウェルギリウスなどの哲学や倫理学、詩が多用されている。また、当時の自然科学における天文学、測量学などの知見を素材として論理的・立体的に構成されていることから、中世における百科全書的書物であるとも評価される。さらに聖書の伝説、ギリシャ神話やローマ神話の神々や怪物も多数登場し、古典文学の流れを引く幻想文学の代表作とも言えよう。実際、その幻想的な内容と豊饒なイメージから、後述するように数々の文学や芸術作品に大きな影響を与えてきた。『神曲』の持つファンタスティックな描写は、現代のSFやファンタジーの源流の一つともみなされている。
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文学的評価
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谷崎潤一郎賞の最年少受賞をはじめとして、国内の主要な文学賞を他の作家より二十年以上早いペースで次々に受賞して、1994年には日本人で二人目のノーベル文学賞を受賞している。 比較文学者小谷野敦は「大江は戦後日本最大の作家である」とした上で、三島由紀夫が、谷崎潤一郎が没したときに、明治末年に谷崎が現れてから没するまでの半世紀を「谷崎朝時代」と呼んだのになぞらえて、大江がデビューした1958年以降を「大江朝時代」であるとした。 「同時代の大江健三郎」(群像2018年8月号)と題された大江と同世代の筒井康隆×蓮實重彦による対談において、筒井は「1950年代から2010年代まで、ずっと大江健三郎の時代だった」と評している。蓮實は「大江さんが作家として一番偉いと思っている」と述べた。 読売新聞文化部記者尾崎真理子は、大江の最新作をいち早く的確に評することは同時代の批評家にとっての必須要件であったため、大江を軸にして日本の主要な批評家を並べることで1950年代から2020年までに至る日本現代文学史を描けるとした。 バージニア大学教授 Michiko Niikuni Wilson は「大江は現代日本文学を長年の孤立から脱け出させ、世界文学の中心に届けた」("Oe has delivered modern Japanese literature out of its long isolation and into the heart of world literature.") と評している。
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