教育内容・教育課程への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 22:06 UTC 版)
「朝鮮学校」の記事における「教育内容・教育課程への批判」の解説
朝鮮学校で使用される教科書は、学友書房が朝鮮大学校の協力のもとに作成したものを朝鮮民主主義人民共和国教育省が検閲したものであり、日本の文部科学省が示す学習指導要領に沿った検定教科書ではない。この教科書は朝鮮民主主義人民共和国の歴史だけでなく、朝鮮総連の歴史にもふれているが、一貫しているのは本国と同じく金日成、金正日父子への礼賛と一体化という命題である。教科書では、北朝鮮による核開発や光明星を発射したことを受けて、「日本政府が朝鮮総連を瓦解させようと謀略活動をした」などという本国の朝鮮中央放送が報じる見解と全く同じものが記述されていたり、金日成は194回、金正日は107回に渡って「敬愛する」「偉大な」などの修飾語を付して繰り返し記述されている。また、日本人拉致問題については、2002年9月の日朝首脳会談で金正日総書記が拉致の事実を認めて謝罪して以降、朝鮮総連も「絶対に許されない犯罪行為」(当時の徐萬述議長)と謝罪し、朝鮮学校の教科書も翌年度から改編したとされてきたが、2003年初版発行の教科書の記述に「拉致は犯罪」という認識は全く見られないという。 朝鮮学校は朝鮮語と「民族教育」を一義的に学ばせる教育機関としての傾向が強い。朝鮮学校内では授業はもちろん日常会話でも朝鮮語を使用し、日本語は外国語教科として教えられている[要出典]。内容は日本の国語教科書に出てくるものとほぼ同じであるとされるが、日本の「現代文・現代国語」に相当する領域ではプロレタリア文学の比重が高い。民族教育の割合は35%と高く、ほとんどすべての科目において、北朝鮮の最高指導者である金日成・金正日父子に対する忠誠教育が施され、到達目標とされている。また、卒業生の中には「非常識な教育だった」、「自分が一般の教育レベルから落伍し、常識面でも適応できなかった」などと語る者も少なくない。 朝鮮学校に対するこうした批判は、長らく学校在籍者や保護者などから出てきていた。これに対し朝鮮学校側は、カリキュラムの更新などで一定の応答を見せたとされる。中井洽国家公安委員長・拉致問題担当大臣(当時)は「全生徒に対して放課後に先軍思想や主体(チュチェ)思想の洗脳教育を行っている」と主張した上で、「朝鮮学校の授業料無償化によって、日本国の支出が朝鮮総連から金正日総書記に渡る」と述べた。日本政府独自の経済制裁措置に伴った万景峰号の入港禁止措置が解除されていない2014年現在も、高級部3年次に「祖国訪問」と称する北朝鮮への修学旅行が全国の朝鮮学校高級部で実施されている。 2010年11月17日の参院予算委において公安調査庁は、朝鮮総連は朝鮮学校の民族教育を愛国運動の生命線と位置づけ、北朝鮮と朝鮮総連に貢献しうる人物の育成に励んでいるという認識を示し、朝鮮総連が朝鮮学校の教育内容、人事、財政、教科書(朝鮮総連傘下の出版社)に及んでいることを示した。東京都の調査によれば、朝鮮学校の教育内容は、現代史教科書に「敬愛する金日成主席様」「敬愛する金正日将軍様」という表現が全409ページ中353回も出てきており、学校施設の一部を朝鮮総連支部の事務所として無料で長年使用させるなど、財産管理が不適切であることを指摘されている。 朝鮮学校における教育内容に対して、北朝鮮における教育と同様に、金日成・金正日父子の肖像画を教室に掲げたりと金父子を神格化しているという批判や、北朝鮮の立場を盲目的に支持する傾向・反日的傾向があるとの批判がある。スパイ事件として有名な辛光洙事件と李善実事件に共通するのは、在日朝鮮人の帰還事業により北に渡った者や帰化者はもちろん、日本に住んでいる朝鮮総連と関係するすべての人々の身上記録を労働党が工作に活用したことである。朝鮮総連の活動家たちはみな、組織に自叙伝を出すこととなっている。「朝鮮日報」は朝鮮語を学べるという単純な考えで、「民族教育」をさせる朝鮮学校に子どもを入れる行為は、子と家族を将来、北朝鮮の工作対象にする結果となりうることを忘れてはならないとの警告を発している。 関西大学経済学部の教員で在日朝鮮人三世の李英和は、インタビューで「朝鮮学校に通っている者のほうが、かえって北朝鮮に対する批判精神を持っている。北朝鮮民主化を目指す団体『救え! 北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク(RENK)』の主要メンバーも朝鮮学校の出身者である」と語っている。 1987年から毎年新年に朝鮮学校の子供たちを平壌に連れて行って、「我が祖国を宇宙強国に輝かせ、世界がうらやましく思う誇りをもたせてくれた金正恩元帥様が恋しく、本当に恋しく、私は祖国にやってきました!」と朝鮮学校生徒にソルマジ公演(迎春公演)という金一族を崇拝させる公演活動を行っており、こうした活動は脱北者やその支援者などから批判されている。ジャーナリストの萩原遼が翻訳して指摘した「敬愛する金日成主席様」「敬愛する金正日将軍様」との金一族崇拝や日本人への憎悪を煽って、北朝鮮への忠誠心を育成する洗脳教科書を使った教育について、脱北者の高政美は、「朝鮮学校の教育は、私が北朝鮮で受けた洗脳教育と同じ」と指摘している。また、「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の代表で元大阪経済大学准教授の山田文明は「北朝鮮を崇拝する組織に強制加入」「『元帥様の幼き日々』といったレクチャーなど金王朝礼賛の洗脳教育が頻繁に行われている」ことを批判している。脱北者を支援する「アジアン・リポーターズ」代表の蒲生健二は「朝鮮学校側は関与を否定しているが、校長が引率して、金父子の銅像に頭を下げさせている」と洗脳教育を「民族教育」だと主張して在日朝鮮・韓国人に教え込んでいることを批判している。「アジアン・リポーターズ」は、朝鮮学校を支援する日本人を「本来人権を大事にするリベラルから多くの声が上がっても良いはずなのに、理解に苦しむことにダンマリが続きます」と指摘している。
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