当事件の犯行に関連する諸説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:23 UTC 版)
「狭山事件」の記事における「当事件の犯行に関連する諸説」の解説
当事件の犯行に関連する説には以下などがあるが、説のすべての網羅ではない。 石川一雄 - 「第1番目に自殺した人(被害者宅の元使用人 - 引用者註)が犯人じゃないかと、私は今でも思っています」 と2014年2月22日に発言している。しかし、被害者宅の元使用人は石川の逮捕前に死亡しているにもかかわらず、「Yさん(被害者)には、申し訳ないことをした。自分があともうすこしがんばっていれば、犯人はつかまったはずだ」とも語っている。 伊吹隼人 - 被害者の家に怨恨を持つ何者かを主犯として想定。この主犯の指示で養豚場の1名ないし2~3名の従業員(ただし石川一雄以外)が極めて計画的に誘拐・強姦殺人を行った可能性が高い、との説を唱えている。また、被害者宅の元使用人も協力(場所貸しなど)したほか、被害者の中学時代の男友達もおびき出しに手を貸したものと推測している。関係者たちへの取材を通じて「N家は家族関係が複雑で、Yさんは親が違っていた。そのことが事件の遠因になっている」「中田家は事件直前に某政党員Tを"村八分"にしており、相当な恨みを買っていた」「その政党員はI養豚場ともつながっている人物だった」「警察が捜査を始めた際には、その党に属する刑事が盛んに捜査を妨害していた」とも伝えている。 甲斐仁志 - 被害者と肉体関係があった中年男による、不倫の清算を目的とした単独犯行との説を提唱。その中年男は、被害者の中学時代の教師か長兄の詩の仲間であろうと考える。甲斐説の欠点として、被害者には男性との交際の形跡はなかったこと、事件当時は中学時代の同級生に片思いしていたこと、高校進学直後に結婚を考えるはずがないこと、被害者の実家では家族内の結婚順序が既に決められていたことが指摘されている。 亀井トム(亀井兎夢) - 財産争いを理由に、被害者の長兄が養豚場経営者の兄弟を雇って妹を殺害せしめたとの説を提唱。被害者宅の元使用人も共犯であったと推測。かつて部落解放同盟がこの説を一部変更して提唱していた。脅迫状については、犯人たちがアーサー・コナン・ドイルの『ライゲートの大地主』をヒントにして「まず脅迫文の下書きを主犯がつくり、それを共犯者にうつさせ、その共犯の筆跡を練習して露骨な不統一をなくすようにしてから、こんどは主犯が自分の書く部分を先に書き、共犯の書きこむ部分をあけておき、あとから共犯にそこに書きこましたもの」 と推測している。このほか、「本当の身代金受け渡しは1963年5月1日に被害者宅の門前でおこなわれたが、結果として犯人を取り逃してしまった。警察はその失態をごまかすため、脅迫状の文言を一部改竄して5月2日の佐野屋前における身代金受け渡し劇を演出し、被害者の死に対して警察が責任をとらないで済むよう仕向けた上で、無実の石川一雄をスケープゴートに選んで冤罪に陥れた」などとも主張。『狭山事件への告発状』(三一書房、1978年)の中で、被害者の長兄と上田明(埼玉県警本部長)と中勲(埼玉県警本部刑事部長・捜査一課課長)の3人を証拠隠滅・偽証・同教唆・公務員職権濫用・特別公務員職権濫用・同幇助・殺人未遂・同幇助の容疑で刑事告発。もともと被害者の長兄は狭山事件に関連してたびたび迷惑電話を受けていたが、亀井に公然と真犯人扱いされて以降は狭山事件研究者からの取材を一切拒むようになった。亀井説の欠点として、事件当時まだ父親が健在だったのに高校進学直後の少女がなぜ殺されなければならなかったか説明できないこと、被害者の自宅一帯は市街化調整区域のため土地の切り売りは不可能であること、地元では長子の一括相続が半ば常識となっていたことが指摘されている。 礫川全次 - 被害者宅に関わる者が真犯人とする説。この説によると、真犯人は被害者宅の元使用人の弱みにつけ込み、架空の誘拐計画に使用するかのように偽って脅迫状を作らせたという。被害者宅の元使用人は、みずからがそれと知らぬまま殺人事件に加担させられたことへの絶望から自殺したのではないか、と礫川は推測する。 殿岡駿星 - 亀井同様に被害者の長兄を真犯人と想定。さらに、長兄が被害者と近親相姦の関係にあったとも推測。妹との暗い秘密の発覚を恐れて殺害し、目くらましのために「営利誘拐・強姦殺害事件」を偽装した、佐野屋の身代金受け渡し現場では声色を使って別人を演じていたと見る。自説の裏付けを取るため、長兄に質問状を送りつけたが、「書状は確かに受け取りました。その設問にはお答えする事は出来ません。平成2年4月18日」とワープロ打ちの葉書で回答を拒否された。著書『犯人─「狭山事件」より』の冒頭では「名乗るべきは真犯人 あなただ 己の罪を告白すれば神も許すというのに 二十数年間も無実の獄にいる人をよもや忘れてはいまい あなたは沈黙を続けている それなら私があなたに代わってその罪を懐疑的に綴らねばならない……小説という鬼面をつけて」と呼びかけている。殿岡の主張は、伊吹隼人から「トンデモ推理」と批判されている。殿岡説の欠点として、声色については単なる空想で根拠が何もないこと、被害者宅には事件発生から遺体発見まで常時警察が張り込んでおり長兄が夜中に遺体を埋めに行くのはまったく不可能だったことが指摘されている。 苫米地英人 - 被害者の「小中高の担任の先生」「捜査に積極的に協力した先生」 を真犯人と推測した。苫米地説の欠点として、当該教師は佐野屋での張り込みに参加しており、単独犯とするとアリバイが成り立つことが指摘されている
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