当事件の捜査・刑事・司法手続における問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 13:52 UTC 版)
「足利事件」の記事における「当事件の捜査・刑事・司法手続における問題点」の解説
当事件においては、事件未解決や冤罪被害発生の直接の原因になった、警察当局や裁判関係者の捜査上や裁判手続きでその理由や動機が不明な行動や事象が多数確認される。 最初の有力な目撃証言に基く捜査を早々に打ち切った(当事件捜査において最大の不審点でもある。その実質の捜査実態も不明)。 1997年からの再審やDNA型再鑑定の請求を長期間拒否した(その明確な理由や動機も不明)。 いずれも、適切な捜査と対応をしていれば、事件解決に繋がったと考えられる重要点である。 特に最初の目撃証言の時点で、それに基づく適正な捜査を行っていれば、その時点で犯人検挙が実現し当然のことながら冤罪も起こらなかった可能性。 1997年のDNA再鑑定の請求から2005年の公訴時効成立までの間に司法がDNA型再鑑定請求を認め、再審が行われていれば、その時点で菅家の無罪が確定し、事件の再捜査も可能だった点も指摘されている。 最初の有力な目撃証言に基づく捜査を打ち切った正当な理由についても警察当局は明らかにしていない。目撃証言については、近年の清水潔による調査報道を受けて、菅家利和の自白と矛盾するということで事件とは無関係とする警察の見解もあるが、通常の捜査であれば、反対に有力な目撃証言と矛盾するから菅家利和の自白は虚偽(強要された)と判断するところである。そもそも目撃証言に基づく捜査は早期に打ち切っているので、打ち切った正当な理由があれば、菅家利和の自白と矛盾しているとする旨をわざわざ警察発表でする必要もないはずのものである。 最初の目撃証言をした証言者たちの中の一人に対し、自宅を訪れ、「正直言ってアンタの証言が邪魔なんだ。消したいんだ」と目撃証言の撤回を迫り、証言を撤回させ調書も勘違いに書き換えた。 この事件の捜査に当時導入されたばかりのDNA型鑑定が採用されたのは、実際の事件でその実績を作りたかったためである。しかし、当時の鑑定の精度の低さゆえ時期尚早であり失敗であったことは、後年の再鑑定の結果明らかになっている。 菅家利和をマークをしていた時期により確実性の高い前科・前歴から数人の男の行動調査をしていた。しかし、理由不明のままその数人の男に対しての捜査を中止している(いくつかの冤罪事件に共通して見られる、犯人決めつけに基づく行為。この場合は、菅家を犯人と決め付けたことにより、より容疑性の高い数人の男に対しての精査を怠った。同じようなことは、菅家を犯人とするあまり、初期目撃証言に対して精査を怠った行為にもみられる。)。 菅家利和が自白した、手で首を絞めたことによる「扼死」と被害者の鼻の穴などから細かい泡状の液体(泡沫液)が漏れていたという「溺死」の鑑定所見と、被害者の死因の鑑定の点で矛盾が見られる。 菅家利和の自白(強要されたものと判明)そのものを重要証拠とし、秘密の暴露として認定し起訴し公判でも採用されている点。だが、その秘密の暴露を元として有罪とするだけの裏付ける検証結果や状況証拠は何一つ見つかっていない(現に、女児の死因の矛盾、女児を自転車の荷台に乗せて土手を下る男の姿の目撃証言が存在しない、犯行ルートが時間的に不可能である等が生じている。自白を精査すれば虚偽であることは起訴前に判明した可能性がある。なお、前述のとおり、自白と反する目撃証言や状況証拠はいくつも判明している)。 当時のDNA鑑定に、当時の「精度の低さ」の他に「型の取り違え」の可能性などの重大な問題が潜在していたことが判明している。また、検察はこの問題を検証しない。
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