巨人
『サムエル記』上・第17章 背丈6アンマ(キュビト)半の巨人ゴリアト(ゴリアテ)と、少年ダビデとが一騎討ちをする。ダビデは、石投げ紐で小石を飛ばし、ゴリアトの額にめりこませて倒す。ダビデは、ゴリアトの剣で彼の首をはねる。
『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第10章 トリスタンは、巨人モロルトと海上の小島で試合をする。彼は毒剣で傷つきながらも巨人を打ち倒す。トリスタンの剣のきっさきは、モロルトの頭蓋骨の中に残った。
『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第25章 またトリスタンは、貢ぎ物を要求する巨人ウルガーンと戦い、その片手を切り落とし両眼を潰して、橋から突き落とす。
『ドン・キホーテ』(セルバンテス)前編第8章 ドン・キホーテは、立ち並ぶ風車を巨人の群れと考えて攻撃するが、風車の翼にはじき飛ばされる。
★2.巨人の国を訪れる。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第2篇 「私(ガリヴァー)」は小人国から帰った後、再び航海に出て、1703年6月16日、身の丈60フィート以上の巨人たちが住むブロブディンナグ国に漂着した。「私」は巨人たちの見世物にされた後、王妃に気に入られて宮廷のペットになった。2年余りたったある日、「私」は箱に入ったまま鷲にさらわれ、海に落とされた。さいわい英国船に救助され、「私」は帰国した。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第44~47章 トールとロキと2人の召使が、巨人の国ヨトゥンヘイムを訪れる。彼らは巨人王ウートガルザ=ロキに対面して、王の側近と肉の食べくらべ・競走・相撲をし、海に通ずる杯で酒を飲み、ミズガルズ蛇の化身である重い猫を持ち上げる。
『風流志道軒伝』巻之3 浅之進(志道軒)は、風来仙人から得た羽扇の上に坐して海を渡り、身長2丈余りの巨人たちの住む島へ着く。彼はそこで見せ物にされたので、羽扇を使って空を飛び、脱出する。
★3.城に住む巨人。
『天路歴程』(バニヤン) 巡礼の旅をするクリスチャンとホウプフルが、「疑惑の城」に住む巨人ディスペーアに捕らえられ、土牢に入れられる。しかしクリスチャンは、「プロミス」という鍵で牢の戸と城門を開けて脱出し、目的地である天の都にいたる(第1部)。後、クリスチャンの妻クリスティアナが夫のあとを追って、子供たちとともに旅に出る。同行するグレートハートが、巨人ディスペーアの首を斬って退治し、「疑惑の城」を取り壊す。クリスティアナたちも、やがて1人ずつ天の都に召される(第2部)。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第7~8章 オーディンたちが巨人ユミルを殺した。彼らはユミルの肉から大地を、血から海を、骨から岩石を、頭蓋骨から天を作った〔*睫毛は砦となった〕→〔眉毛・睫毛〕5。
『述異記』(祖冲之) 昔、巨人盤古が死ぬと、その頭は四岳になり、2つの眼は太陽と月になった。脂膏(あぶら)は流れて川や海になった。髪の毛は草や木になった。
『変身物語』(オヴィディウス)巻4 ペルセウスが巨人アトラスにメドゥサの首を突きつけると、アトラスは山に変わった。ひげと髪が木々に、肩と手が尾根に、頭が山頂に、骨は石になり、全天空が無数の星々とともにアトラスの上に乗った。
『リグ・ヴェーダ』「原人讃歌」 原人プルシャは千頭・千眼・千足を有していた。神々がプルシャを犠牲獣として祭祀を行なった時、プルシャから馬・牛・山羊・羊などが生じ、身体を分割すると4つのカーストが生じた。さらに意から月が、眼から太陽が、口からインドラとアグニが、息から風が、臍から空界が、頭から天界が、両足から大地が、耳から方位が生じた。
*巨人の成長とともに天地が分かれる→〔天地〕2aの『三五歴紀』。
『月の女神をほしがった巨人』(インドネシアの昔話) 巨人カララウが月の女神を呑もうとするので、ウィスヌ神が弓でカララウの首を射る。頭と胴体が離れ、胴体は地上に落ちて、こなごなに砕け散る。その破片は、作物の害虫や雑草になった。
『常陸国風土記』那賀の郡 遠い昔、たいそう背の高い人がいて、身体は丘の上にすわっていながら、手で海辺の大蛤をほじくって食べるほどだった。その人の足跡は、長さ40余歩(=70メートル余り)、幅20余歩であった。
★5b.巨人伝説の起源は、膨張した溺死体だったかもしれない。
『巨人の磯』(松本清張) 秋の夜、法医学者の清水は常陸の大洗海岸で、普通の人間の3倍くらいもある巨大な溺死体を発見した。臓器内の腐敗物からガスが発生し、異常に膨れ上がったのである。『常陸風土記』の巨人伝説は、そのような溺死体を見た古代人の恐怖から生まれたのかもしれない、と清水は考えた〔*溺死体は殺害されたものだった。犯人は殺害日時をごまかすために、死体を風呂の湯で煮てから海へ棄てたのだ〕。
『捜神記』巻13-2(通巻320話) 華山と嶽山は、もとは1つの山であり、黄河は山の回りを曲がって流れていた。黄河の神の巨霊が手で頂上を引き裂き、山を真っ二つに分けて、川が流れやすいようにした。
『播磨国風土記』揖保の郡美奈志川 石龍比古命(いはたつひこのみこと)と、その妻石龍比売命(いはたつひめのみこと)が、川の水をそれぞれ自分の村に引こうと、争った。夫の神は、山の峰を足で踏み崩して、水を北へ流した。妻の神は、櫛で流水を塞ぎ、水路を南へ変えた。
★7.人を驚かす大入道。
『遠野物語拾遺』170 ノリコシという化け物は、影法師のようなものだ。最初は小坊主の姿で現れるが、はっきりしないのでよく見ると、そのたびにめきめきと丈(たけ)がのびて、ついには見上げるまでに大きくなる。だからノリコシが現れたら、はじめに頭部を見て、だんだんに下へ見下ろして行けば、消えてしまう。
『妖怪談義』(柳田国男)「妖怪名彙(ミアゲニュウドウ)」 佐渡では、夜中に小坂道を登って行く時に、しばしば「見上げ入道」が出る。はじめは小坊主のような形で行く手に立ち塞がり、「おや」と思って見上げると高くなる。だんだん高くなるので、見続けるうちに後ろへ仰向けに倒れてしまう。これに気づいたら、「見上げ入道見越した」という呪文を唱えて前に伏せば、見上げ入道は消え去る。
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