宗教と食事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 19:30 UTC 版)
宗教と食事・食生活には大きなかかわりがある例のひとつとして、キリスト教における聖餐がある。これは新約聖書に「イエスが十字架に架けられる前に、弟子たちと食事し、自分の記念としてこの食事を行うよう命じた」との記述による。キリスト教徒はこの儀式を行うことで「そこにキリストが確かに現存している」という信仰を保持している。 宗教によっては、特定の食品を食べることを禁じたり、調理法についても厳格な定めがある場合もある。 「食のタブー」も参照 ユダヤ教 ユダヤ教では、旧約聖書に食べてよいもの、食べていけないもの、一緒に食べてはいけないものの組み合わせ、動物の屠り方、調理法に関する規定が細かく記述されており、ユダヤ教のこの食物規定を「カシュルート」や「コーシェル」と呼ぶ(ユダヤ教もいくつもの教派に分かれている。厳格な教派ではそれを厳格に守る一方、緩やかな教派ではあまり守られてはいない)。カシュルートを守っているユダヤ教徒の場合は、現在でもさまざまな食べ物を「穢れている」と考えており、海老や蟹のような甲殻類・貝類・タコ・イカは一切食べられない。またヘブライ語聖書に「子ヤギの肉を、その母の乳で煮てはならない」という規定があるので、チーズバーガー(「ある動物種の親と子を同時に食べてはいけない」と解釈されている)や親子丼も食べられない。 キリスト教 イエス・キリストは、当時のユダヤ教のファリサイ派(律法学者)の者たちがこまごまとしたルールばかりを持ちだして、人生のさまざまな分野のさまざまなことをこまごまと禁止ばかりして、人々を苦しめてばかりいることを眼にし、「口に入るものは人を汚すことはない。その逆で、口から出るもの(=人が言う言葉)が人を汚すのである」(『マタイによる福音書』15:11)と述べて、ユダヤ教の食物規定全体を真っ向から否定し、ファリサイ派や律法学者たちの、物質的な面ばかり重視する姿勢や、心や言葉のほうをないがしろにする姿勢、その宗教者としてのありかたを根本から批判した。キリスト教徒の多くはイエスの言葉にしたがうようになり、トーラー(モーセ五書)に書かれた食物規定は全て無効となった、と見なすようになった。キリスト教はその初期段階において、ユダヤ教における厳格な食事規定を大幅に緩め(使徒行伝第10章)た。これはユダヤ教のこまごました規定になじめない人々に歓迎され、地中海世界でキリスト教が広まる遠因にもなった。ユダヤ教とは異なり、「(キリスト教徒として)食べてはいけない食材」は無く、鶏肉・牛肉・豚肉、魚介類も全て食べられる。また、飲酒も許されている。 イスラーム イスラームには、ハラールがあり、食べて良いもの/いけないもの、調理に関する細かい規則が定められている。豚は不浄とされ、食べるのは禁じられている。 ラマダーンの月には、(日が昇ってから沈むまでの間は)水や食べ物をいっさい口にしない。そうすることで、「貧しくて食べるものが無く苦労している人々の状況を体感し、そういった人々の気持ち、つらさを皆で意識的に共有する」のを目的としている。また、ラマダーンの期間には、恵まれない人々への寄付も行われる。日没後には、家族・親族が大勢集まり、にぎやかに、楽しく、一緒に食事をする。イスラームにとって、ラマダーンは「食べられることの大きな喜び」や「家族・親族やコミュニティとの一体感」を共有する時期でもある。また、ラマダーンは全世界にいるムスリムたちが同時に行うものであり、(国境を越えて)全世界のイスラームとの連帯感を共有する期間でもある。 ヒンドゥー教 ヒンドゥー教では、牛を神聖なもの(大切なもの)として、食べるのを禁じている。 日本の仏教 日本の仏教においては、(僧侶は)早朝の乞食行によって、午前中のみ食事をし、午後には固形物を一切食べない。 日本においては、かつて仏教に影響された天武天皇が肉食を禁ずる勅令を出したことで、日本人は長きに亘ってほとんどの動物性食品を公には食べられなくなった(675年に公布された「天武の勅令」)。なお、釈迦自身は「肉食を禁止したことは一度も無い」点に注意すべきである。原始仏教においては、「動物が殺されるところを見ていない」「自分に供するために動物を殺した、とは聞いていない」「自分に供するために動物を殺した、とは知らない」、これらを満たしていれば、それが動物の肉であっても食べてよい、ということであった(→「三種の浄肉」)。釈迦が死んでおよそ500年経過してから発生した大乗仏教においては、「肉食は厳禁」となった。修行の一環である「托鉢」(「たくはつ」, 修行の一環である物乞い)においては、他人が取っていた食事で余ったものを物乞いし、頂いたものを食べる。あくまで余りものを食べるのであり、それが肉であったとしても問題にはならない。他人に物乞いする以上、好き嫌いを示してはならない、という教えである。相手から施されたものは、肉であれ、魚であれ、選り好みをせずに食べるのが原則であり、鉢に入れたものを日々の糧とし、僧侶による肉食は禁止されてはいなかった。 食事 習慣食朝食 ブランチ イレブンシス 昼食 アフタヌーン・ティー 夕食 夜食 要素アミューズブーシュ オードブル チーズ カクテル デザート 飲料 アントレ アントルメ(英語版) 果実 主菜 ナッツ サラダ 副食 関連項目宴会 食べ放題 料理 摂食 テーブルマナー 食品 各国の料理(英語版) 料理の概要(英語版) 間食 表 話 編 歴
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