国会の事故調査委員会
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「福島第一原子力発電所事故」の記事における「国会の事故調査委員会」の解説
2011年9月30日、第178回国会で「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」を設ける『東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法』が成立し、10月より施行され、2011年12月1日に事故調査委員会のメンバーは「東京電力福島原子力発電所事故に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会」から推薦され、翌2日衆参両院本会議で承認された。委員長は黒川清、委員は田中耕一ら9人。 この法に基づき設けられる事故調査委員会は、2011年5月24日の閣議決定により政府の内閣官房に設置される「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」とは異なり、国会が主体となり独自の調査を行う。事故調査委員会は東京電力やその関連事業体、また政府・内閣を含む関係行政機関などから聞き取り調査や資料などの提出を求めることができる。調査委員会は委員長と9人の委員任命した日から起算しておおむね6か月後に調査結果報告書を衆議院議長および参議院議長に提出しなければならない。なお『東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法』は施行から1年で効力を失う。調査への協力拒否には議員証言法による罰則もあり得る。委員会の会議は原則公開することとされた。 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は、報告書をまとめ、2012年7月5日、衆参両院議長に提出した。報告書では本事故を以下のように結論付けた。 事故は継続しており、被災後の福島第一原子力発電所の建物と設備の脆弱性及び被害を受けた住民への対応は急務である。今後も独立した第三者によって継続して厳しく監視、検証されるべきである(国会事故調 2012, p. 10)。 事故の根源的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊」が起きた点に求められ、何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である(国会事故調 2012, p. 12)。 事故の直接的原因について、安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない(国会事故調 2012, p. 13)。 過酷事故に対する十分な準備、レベルの高い知識と訓練、機材の点検がなされ、また、緊急性について運転員・作業員に対する時間的要件の具体的な指示ができる準備があれば、より効果的な事後対応ができた可能性は否定できない。すなわち、東電の組織的な問題である(国会事故調 2012, p. 14)。 被害を最小化できなかった最大の原因は「官邸及び規制当局を含めた危機管理体制が機能しなかったこと」、そして「緊急時対応において事業者の責任、政府の責任の境界が曖昧であったこと」にある(国会事故調 2012, p. 15)。 避難指示が住民に的確に伝わらなかった点について、「これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の危機管理意識の低さが、今回の住民避難の混乱の根底にあり、住民の健康と安全に関して責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制は機能しなかった」(国会事故調 2012, p. 16)。 被災地の住民にとって事故の状況は続いている。放射線被ばくによる健康問題、家族、生活基盤の崩壊、そして広大な土地の環境汚染問題は深刻である。いまだに被災者住民の避難生活は続き、必要な除染、あるいは復興の道筋も見えていない。当委員会には多数の住民の方々からの悲痛な声が届けられている。先の見えない避難所生活など現在も多くの人が心身ともに苦難の生活を強いられている。政府、規制当局の住民の健康と安全を守る意思の欠如と健康を守る対策の遅れ、被害を受けた住民の生活基盤回復の対応の遅れ、さらには受け手の視点を考えない情報公表がその理由(国会事故調 2012, p. 17)。 事故原因を個々人の資質、能力の問題に帰結させるのではなく、規制される側とする側の「逆転関係」を形成した真因である「組織的、制度的問題」がこのような「人災」を引き起こしたと考える。この根本原因の解決なくして、単に人を入れ替え、あるいは組織の名称を変えるだけでは、再発防止は不可能である(国会事故調 2012, p. 17)。 規制された以上の安全対策を行わず、常により高い安全を目指す姿勢に欠け、また、緊急時に、発電所の事故対応の支援ができない現場軽視の東京電力経営陣の姿勢は、原子力を扱う事業者としての資格があるのか疑問(国会事故調 2012, p. 18)。 規制当局は組織の形態あるいは位置付けを変えるだけではなく、その実態の抜本的な転換を行わない限り、国民の安全は守られない。国際的な安全基準に背を向ける内向きの態度を改め、国際社会から信頼される規制機関への脱皮が必要である。また今回の事故を契機に、変化に対応し継続的に自己改革を続けていく姿勢が必要である(国会事故調 2012, p. 18)。 原子力法規制は、その目的、法体系を含めた法規制全般について、抜本的に見直す必要がある。かかる見直しに当たっては、世界の最新の技術的知見などを反映し、この反映を担保するための仕組みを構築するべきである。(国会事故調 2012, p. 19)。
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