各地の納豆系食品
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中国 - 雲南省の苗族は大豆から豆豉や水豆豉と呼ぶ納豆を作る。北部の豆豉は浜納豆に近いもので、麹カビと塩で熟成させる。南部の豆豉は褐色でより水っぽい。過去には、布とシダの葉で包んで仕込んで作っていたという。豆豉は生食の習慣もあり、醤油、ネギ、唐辛子と混ぜて米飯にかけて食べる。干豆豉は唐辛子やネギと炒め物にもする。 インド - 納豆がある地域は、チベットから南下した民族や、タイやミャンマーから西に移動してきた民族が多い。ネパールに近いシッキム州やダージリン県(英語版)ではキネマが作られており、仕込みにはシダの葉を使っている。他にナガランド州のザーチェイ、フクマタ、アクニ、マニプル州のハウアイザール、アーンドラ・プラデーシュ州のペルヤン、チュクチョロなどもあり、ナガランド州には15の民族があり納豆の呼称は19種類ある。 インドネシア - テンペと呼ばれる食品があり、大豆を煮てテンペ菌(クモノスカビ)で発酵させてブロック状にする。そのまま食べたり煮物、揚げ物などに調理する。インドネシアでは、大豆の他にもナタマメやギンネムなどの有毒な豆をテンペ加工して食用とする。 ネパール、ブータン - キネマ(英語版)と呼ばれる。ブータン東部ではリビイッパ(リビは大豆を指す)、ネパール東部ではバタマス・ゴエン(バタマスは大豆を指す)とも呼ぶ。煮た大豆を臼と杵で搗き、灰をかけたバナナの葉を竹籠に敷いて豆を詰めて発酵させる。バナナの他にパパイヤの葉やプラスチック袋なども使う。料理では、生の納豆は唐辛子をはじめとするスパイスと炒めてカレーにする。乾燥した納豆はトマトや唐辛子と混ぜて漬物のアチャールにする。ダルバートのカレーや、タルカリ(おかず)に入れる。ブータン東部には数ヶ月や1年以上保存する納豆があり、麹やチーズで仕込み、調味料や家畜の薬とする。イギリスに勤務したグルカ兵もキネマを食べる。 タイ - 北部のシャン族を中心に、トゥアナオまたはトナオ(Thua-Nao)という加工食品を作る。トゥアは豆、ナオは臭いを意味する。仕込みには、過去にはフタバガキ科の樹木の葉を使っており、樹木の減少によってバナナの葉やプラスチック袋を使うようになった。トゥアナオは形状で3種類に分けられ、トゥアナオ・ケップ、日本の納豆に似た糸を引く粒納豆のトゥアナオ・サ、ブロック状のトゥアナオ・ウがある。トゥアナオ・ケップは、ゲーン(汁物)やカノム・ジーン(米麺)の具にする。トゥアナオ・サはトゥアナオ・メッ・コーという炒め物や、ソースのナムプリック・トゥアナオ、ナムプリック・オーンに使う。ひき割り状のものはナムプリックに混ぜて餅米につけて食べ、蒸してペースト状にしたり焼いたりして食べる。農民の野良仕事の日常食でもある。トゥアナオ・ウは調味料として使い、粉末にした納豆はトゥアナオ・ポンとも呼び、茹でた野菜などにつける。 ラオス - トゥアナオを作る。せんべい状の乾燥したトゥアナオ・ペーン、粒状のトゥアナオ・メット、ひき割り状のトゥアナオ・ムン、味噌状の納豆がある。。生産ではプラスチック袋が多く使われ、植物の葉を使う際にはラーオ語でバイ・トンチンと呼ぶフリニウム属(英語版)の葉を使い、バナナやカンナの葉も代用にする。調理では、米麺のカオソーイの豚そぼろソースに入れる。他に粒状とひき割り状のものはチェオと呼ぶソースの素材にしたり、せんべい状のものは炒め物や揚げ物にする。 ミャンマー - シャン州ではトゥアナオ、ベーセイン、ペーボウッ、カチン州ではノップー、ノーシー、アノシと呼ぶ。シャン族は餅米とともに食べる。ノップーは油で炒めて米と食べたり、米と混ぜて炒める。糸引き納豆はビルマ語でペー・ボウと呼び、塩を加えて発酵させる塩辛納豆にあたるものはペー・ンガピと呼ぶ。ナガ族にはタンクル語(英語版)でシュシュエと呼ぶ納豆があり、仕込みにはイチジク属、ガジュマル、バナナなどの葉を使う。味噌状のものは塩、唐辛子、ショウガと混ぜて熟成させる。長期保存用には、塩や唐辛子とともに竹筒に入れる。料理では、牛肉や野菜を使った納豆汁を作るほか、炒め物や揚げ物にも使う。食習慣は部族ごとに異なり、1週間ほどで食べる部族から、1ヶ月以上保存する部族もある。粒状のものは、シャン米と呼ばれるジャポニカ米と合わせて食べる場合もある。 カンボジア - シエンと呼ばれる。大豆を煮てから竹製のザルで発酵させ、糸を引くくらいに発酵したものを食塩水に漬ける。調味料として使われる。 朝鮮半島 - チョングッチャン(清麹醤、청국장)。チョングッチャンとは調理した汁物を指し(チョングッチャンチゲとも呼ばれる)、豆だけの状態は生チョングッチャンと呼ぶ。オンドルを使う寒い季節に仕込みをする。大豆を煮てザルに入れて藁を混ぜ、蓋をしてオンドルで温める。ザルの前には竹籠を使っていた。
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各地の納豆系食品
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ナイジェリア - ハウサ語でダワダワ(dawadawa)、ジュラ語でスンバラと呼ばれる発酵調味料は、パルキア(ハウサ語でカルワ)の実から作る。パルキアの入手が難しくなってからは大豆が使われている。豆を炒ってから煮てひき割りにし、灰を混ぜてヒョウタンに入れる。パルキアの実を使う場合は大豆よりも手間がかかる。発酵した豆はペースト状にして乾燥させ、スープの調味料などに使う。ダワダワから分離した微生物株を調べたところ、大小2種類のプラスミドのうち分子量の大きいプラスミドは納豆菌と相同性を示した。ヨルバ族はイル(英語版)、イボ族はオギリ(英語版)と呼ばれる発酵食品を作る。 セネガル、ギニア共和国 - ウォロフ語でネテトウ(netetou)と呼ばれる、スンバラと同様の発酵調味料をパルキアから作る。塩辛い豆や、干した豆、つぶして固めたもの、粉末などがある。調理では、スープや炊き込み飯などに使う。ギニア共和国やギニアビサウで作られたネテトウもセネガルに輸入されている。 ブルキナファソ - モシ族を中心にスンバラを食べ、モシ語でカールゴとも呼ぶ。調理では、魚、鶏、米と混ぜて炊き込み飯にしたり、クスクスと混ぜたり、スープに入れる。スンバラを混ぜた米料理はモシ語でムコロゴ(米飯を意味するムイと、スンバラを意味するコロゴを合わせた単語)とも呼ばれる。また、ビカラガと呼ばれるハイビスカス(ローゼル草)の種を使ったものは、調理のダシに使う。バオバブの実を使ったトゥイ・ビカラガは、2日間煮てから臼で搗いて蒸す。
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