原作とドラマの違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 05:11 UTC 版)
「嫌われ松子の一生 (テレビドラマ)」の記事における「原作とドラマの違い」の解説
基本的に原作に忠実に作られているが、大きな違いもある。 大きな違い松子がピアノを演奏するシーン、妊娠・流産、および10章から終章にかけてのエピソード(シスターの下家庭学校で働く)はドラマオリジナルのものになっている。 「トルコ風呂」というフレーズは全て「ソープランド」に置き換えられている。松子らのソープ嬢としての仕事も清掃などのシーン以外は映像化されていない。 トルコ嬢として働く決意をした松子に対する八女川徹也の反応が逆。原作では生活費を得るために、松子にトルコ風呂で働かせようとし、面接に失敗した松子を張り倒していたが、ドラマではこのことに気付いていない。事実を知った後、「白夜」に乗り込み、「ここで働くような人間じゃない」と松子を連れ出そうとしていた(ここで松子に会えなかったことが自殺の一因とも受け取れる)。 物語の終盤、龍洋一は刑務所での宗教教育(教誨)を受け、牧師の言葉から、田所の孫娘が自らを許すと言ったことの真意と、松子が暴力に耐えて自分を愛し続けた理由を悟り、クリスチャンとして更生する、という件があるが、ドラマではこの牧師が「白夜」の元マネージャー・赤木であったという強引な展開になっている。これは赤木役の北村一輝が好評だったため、一度はクランクアップしたものの、その後牧師役に急遽決まったためである。よって北村はこのドラマで、二回クランクアップを経験している。 松子が引きこもる経緯。原作では洋一に去られた後、住む場所を失い、弟からも見放されたことで人間不信になったためであるが、ドラマでは覚せい剤中毒の後遺症による精神疾患と家庭学校の火災で職場を失ったためと変わっている。 松子を殺害した犯人。公園で名刺を探している途中で襲われるという原作・映画に対し、ドラマでは、この場面で登場する若者たちが松子が教会の家庭学校で勤めていたころの教え子で、一緒になって名刺を探している。このため、名刺探しと松子の死に因果関係がない(ドラマでの犯人は外国人の窃盗グループ)。 教育者としての松子の設定。中学教師となった理由は、原作では専ら父の要求とされるが、ドラマでは明日香が「自ら望んだ道」である可能性を示唆している。また教師辞職の未練も龍洋一に対して語っている。晩年の教会学校の仕事の設定もあり、松子のライフワークが教育者であるかのような印象を持たせている。その他、中学教師時代において、松子が多くの生徒に思慕されていたことが、随所で強調される。 松子の太宰治等の日本近代文学への関心と予備知識。原作では近代文学については専ら中学教師になるために学んだ程度と語られるが、ドラマでは自宅で文学書に親しんでいた(若いころは作家も志したという)父の影響で、松子自身が文学に関心を持ったと語っている(第2章)。 細かな違い第1章原作では、紀夫がアパートまで来て松子の部屋を片付けるよう依頼している(このとき持っていた骨壷の音が物語の鍵を握る)が、ドラマでは電話のみ。 修学旅行先で龍洋一たちが旅館の部屋でしていた行為は原作の「成人雑誌の回し読み」ではなく、「枕投げ」になっている。 松子が教師辞職を校長から言い渡される場面で、原作では告げ口をした龍洋一も同席しているが、ドラマでは田所と杉下のみ。 原作では松子が家を出るときは歩きではなく、ミニサイクルを使っていた。また、道中で父・恒造や龍洋一には会っていない。 第2章八女川と同棲中紀夫からお金を借りるために待ち合わせをする場所が原作ではデパートの屋上だったが、川原になっていた。また、手切れ金として紀夫が渡した金額は原作では5万円だったが、ドラマでは10万になっている。 「白夜」で、松子が最初に面接を受けたとき、綾乃はその場に居合わせていない。綾乃との初対面は、2度目に面接を受けに行ったとき。第2章の綾乃の台詞は、原作では赤木が語ったもの。 原作では父の死を告げられたとき、松子は泣いていない(正確には泣くことができなかった)。また、八女川の自殺を知ったときも泣いていない(気を失っている。泣いていた人物は付き添っていた岡野である)。 第3章原作ではソープ嬢になり、雄琴に向かう前に大野島を訪れているが、ドラマではスーパーのレジの仕事をしているときに戻っている。 岡野の妻は、原作では電話で松子に岡野との関係を切るよう言うが、ドラマではアパートに上がりこむ。 第4章綾乃の出身地。原作では仙台であるが、ドラマでは信州の諏訪になっている。また、浅野輝彦と付き合いだした時期は、原作では店をやめた後で、赤木をはじめ誰も知らなかったが、ドラマではソープ嬢のときから付き合っており、周りにも明言していた。 小野寺は金を全額使っている。 第5章島津の出身地(原作では長崎であるが、ドラマでは佐賀) 自殺しようとした松子に声をかけたのは原作では夕方~夜であるが、ドラマでは日中になっている。 原作では島津との同棲生活中、覚せい剤の禁断症状は出ていない(これは刑務所での会話で明らかになっている)。 第6章AV女優として活動していためぐみの芸名が本名(沢村めぐみ)。また、服役時の苗字が「沢村」になっている。 原作で松子が脱走を企てたのは、仮釈放の身元引受人を島津賢治が拒否したとき。 第7章原作で釈放時の身元引受人の話を切り出すのは清水分類課課長であるが、ドラマでは瀬川保安課課長。 松子が、AV女優としての活動を決意しためぐみのヘアメイク担当を拒否している(原作では躊躇することなくヘアメイクを担当、めぐみの髪型をベリーショートにする。以降、この髪型がAV女優・水沢葵のトレードマークになる)。 第8章めぐみがAV女優になったことで夫と離婚する(原作では死別)。 めぐみと洋一が会うのは、原作では虐待を受けて美容室を休みがちになった松子を見舞いにいったときであるが、ドラマではその前に出会っている。 第9章洋一のスパイルートが完成しない。 田所を射殺しに行く際、洋一は一度アパートに戻っている(原作ではアパートに戻ることを拒否。松子から離れそのまま射殺しに行く)。また、田所を射殺した場所が飲食店の前になっている。 田所からのレイプ未遂事件を語ったのが、逃走先のホテルの中になっている。 覚せい剤使用の罪での懲役が松子2年、洋一6年に変わった。 荒らされたアパートを最初に発見したのが、あかねではなく、めぐみに変わっている。 出所後の松子の職が、ラーメン店のバイトになっている。 第10章幼児誘拐の容疑がかけられるエピソードと、大野島に戻る順が逆。また、幼児誘拐の件は荒川に越す前の出来事。 洋一が松子にしたためた手紙の内容(『愛されることに慣れていなかった』その他)は、原作では笙に語った台詞。 田所の孫娘は原作では一度も洋一を問い詰めることなく、「あなたを許す、あなたのために祈る」と語っている。 最終章めぐみに子供がいない。 松子殺しの犯人を知らせたのが汐見刑事(原作では後藤刑事)。 松子は、暴行を受け死ぬ前(帰宅後)に社会復帰を誓う。また、親兄弟やその他これまで関わった人々に感謝する。
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