予備知識
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/29 13:30 UTC 版)
「無賃入場者のパラドックス」の記事における「予備知識」の解説
このパラドックスを理解するためには、いくつかの法的な予備知識が必要である。日本の民事訴訟法は自由心証主義を採用しており(民訴247条)、裁判官は、事実認定に関する心証(単純に言えば印象)を、審理に現れた全ての資料および状況にもとづいて自由に形成することができる。これに対して、一定の事実がある場合(例えば3人以上の証言が一致する場合)に一定の心証形成を強制するという規律の仕方は、法定証拠主義と呼ばれる。心証形成にあたって裁判官は、当事者の主張が事実かもしれないという程度の憶測ではなく、社会通念上高度の蓋然性があるという確信に従わなければならない。このような心証形成のための最下限の程度は、証明度と呼ばれ、通常、8割がた確かであることと言われる。 もっとも、裁判官が完全に主観的に心証形成を行えるわけではなく、論理法則や経験則を無視することは許されない。このため、民事訴訟における実体的な真実の発見と言う観点から見ても、事実認定の客観化・合理化が要求される。そして、このような客観化・合理化のひとつの手段として考えられるのが、確率的証明であり、アメリカでは「ハウランド夫人の遺言事件」以来、重要な役割を果たしている。このような確率的証明の典型例は、血液型鑑定やDNA鑑定である。 では、事実認定の客観化・合理化のために、従来の主観的な80%の証明度を客観的な80%の確率と置き換えることができるであろうか。これが、このパラドックスにおける主要な論点である。言い換えれば、事実の確率と心証の確率とをどの程度まで同一視してよいのかという問題である。
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