予備罪の中止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/22 19:05 UTC 版)
予備は実行の着手に至る以前の段階であり、予備行為につき中止未遂を認めないのが論理的であるが、現行刑法ではほぼ全ての予備罪で刑の免除が認められている(例えば、内乱罪につきb:刑法第80条、殺人罪につきb:刑法第201条を参照)。強盗予備罪(b:刑法第237条)のみ免除規定がなく、強盗予備の中止未遂の成否が争われている。別件で禁錮刑以上の罪を犯し、併合罪として処理する場合は、強盗予備罪の法定下限は1か月であるため、吸収し、実質不処罰とすることができるが、別件で起訴された罪状がないまたは罰金刑以下のときはどうしても酌量減軽をしても15日の懲役は最低でも課せられる。ただし初犯であれば執行猶予を付けることができる。 強盗予備の段階で中止行為をしても減免されないのに、強盗行為に着手してから中止すればb:刑法第43条ただし書の適用を受け必要的減免がされるのは不合理であると主張する学説もあるが、実際に強盗中止未遂で刑が免除されることは、脅迫罪・強要罪に比べて罪が軽くなってしまうことになるので、刑事政策上ありえないので、情状として考慮すれば足りるとする学説もある。 なお、判例は強盗予備罪の中止未遂を認めない一方で予備罪の共同正犯を広く認めており、一貫していないとする見方もある。すなわち、予備罪について実行行為の前段階であることを理由に犯罪としての定型性を認めず、「中止未遂の観念を容れる余地のないものである」(最大判昭和29年1月20日)とするならば、予備に該当する行為を共同で行った場合に「共同して犯罪を実行した」(b:刑法第刑法60条)と評価すること(最判昭和37年11月8日など)は予備行為を実行行為と同視していることとなり、論理矛盾ではないか(また、現行法は自己予備のみを処罰するという前提にも反する)という批判である。この批判に対しては、目的のない加功者を非身分者とみてb:刑法第65条1項を根拠に共同正犯を成立させてよいとする学説(藤木、大谷ら)もあるが、少数説に止まっている。
※この「予備罪の中止」の解説は、「中止犯」の解説の一部です。
「予備罪の中止」を含む「中止犯」の記事については、「中止犯」の概要を参照ください。
- 予備罪の中止のページへのリンク