入れ替わり
『とりかへばや物語』 権大納言家の若君は女装して尚侍(ないしのかみ)、姫君は男装して中納言となって、内裏に出仕する。ところが男装の中納言は、宰相中将に女と見破られて懐妊し、出産のため宇治に身を隠す。それを機に若君と姫君は、「本来の男姿・女姿になろう」と相談して互いに入れ替わる。若君は中納言、姫君は尚侍となって、京に戻る。
『ふたりのロッテ』(ケストナー) 父子家庭のルイーゼと母子家庭のロッテは、夏の休暇村で出会い、自分たちが、両親の離婚の結果引き離された双子であることを知る。2人は相談して互いに入れ替わり、ルイーゼがロッテの家へ、ロッテがルイーゼの家へ帰る。そして、両親を再び結婚させることに成功する。
★2a.王子と乞食が衣服を交換したために、入れ替わってしまう。
『王子と乞食』(トゥエイン) エドワード王子と乞食のトムは衣服を交換して、お互いが瓜二つであることに気づく。そのためエドワードは乞食と見なされて宮殿の外へ追いやられ、トムは王子と見なされて廷臣にかしづかれる。やがて国王ヘンリー8世が病死し、トムが国王となって戴冠式が行なわれる。そこへ乞食姿のエドワードが駆けつけ、「自らが真の国王である」と名乗る。トムは乞食に戻ることはなく、国王直属の臣下に任命される。
★2b.殿様と百姓が衣服を交換したために、入れ替わってしまう。
『絵姿女房』(昔話) 百姓が、美人の女房を殿様に奪われる。百姓は女房の教えで桃を作り、殿様の屋敷へ売りに行く。それまで笑わなかった女房がはじめてにっこり笑うので、殿様は「桃売りの格好をすれば喜ぶのか」と思い、百姓と衣服を取り替える。桃売り姿の殿様はそのまま御殿から閉め出され、桃を売って歩く。百姓は新しい殿様になって、女房と一緒に楽しく暮らす(秋田県仙北郡田沢湖町田沢)。
『転校生』(大林宣彦) 斉藤一夫の通う中学校のクラスに、斉藤一美が転校して来る。ある日、2人は誤って石段を転げ落ちたために、互いの身体と心が入れ替わってしまう。以来、斉藤一夫はオカマのごとくになり、斉藤一美は超おてんばになって、周囲を驚かせる。何ヵ月かが過ぎ、将来に絶望した斉藤一夫は呆然として石段を踏み外しかけ、斉藤一美が助けようと抱きとめて、再び彼らは転げ落ちる。2人の心はそれぞれもとの身体に戻る。
*2人の男の魂が入れ替わり、また元に戻る→〔入れ替わり〕4bの『和漢三才図会』巻第71・大日本国「伊勢」。
『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)「あの道この道楽な道」 のび太が「クロス・スイッチ」を押して、しずちゃんと人生のコースを交換する。しずちゃんは「ただいま」と言ってのび太の家へ帰って来る。そして「しずちゃんの所へ遊びに行こう」と言い、どこでもドアを通ってしずちゃんの浴室へ飛び込む。そこではのび太が裸で身体を洗っているので、しずちゃんは真っ赤になって「いやだァ」と叫ぶ。
『スター・キング』(ハミルトン) 20世紀半ばのニューヨーク。保険会社の社員ゴードンの心に、20万年後の未来世界から、中央銀河系帝国王子ザース・アーンが語りかける。「過去探求のために、数週間、私の心と君の心を入れ替えたい」。ゴードンの心はザース・アーンの身体に入り、彼は帝国宇宙艦隊を率いて、暗黒星雲同盟と闘う。一方、ザース・アーンは保険会社の仕事をやり通すことができず、仮病をつかって休んでしまった。
*金持ち老人が、貧しい少年と心を交換する→〔若返り〕6の『未来ドロボウ』(藤子・F・不二雄)。
『列子』「湯問」第5 心が強く気の弱い男と、心が弱く気の強い男が、名医扁鵲(へんじゃく)に治療を受けた。扁鵲は2人の胸を断ち割って、心を交換する。2人はそれぞれの心に従って家へ帰るので、家人たちは「別人がやって来た」と思った。
『和漢三才図会』巻第71・大日本国「伊勢」 昔、当地(伊勢国)の人と日向国の旅人が、長源寺(伊勢国安濃郡)の堂の庇(ひさし)に暑を避け、2人とも熟睡した。日暮れになり、ある人がにわかに呼び起こしたところ、両人はあわてて目を覚ましたので、魂が入れ替わってしまった。各々、家に帰ったが、他人扱いされた。2人は再び長源寺へ来て眠ると、魂がまた入れ替わり、元のようになった。諺に『伊勢や日向の物語』(*→〔火葬〕1b)というのは、これである。
*少年少女の心が入れ替わり、また元に戻る→〔入れ替わり〕3aの『転校生』(大林宣彦)。
『和漢三才図会』巻第71・大日本国「伊勢」 〔第33代〕推古天皇34年(A.D.626)、伊勢国の佐伯小経来(さえきのこふく)と日向国の依狭晴戸(よさむのはれと)が同日に死んで、共に冥府へ赴いた。両人の寿命はまだ尽きておらず、冥使が彼らを故郷へ戻すが、魂を入れるべき身体を間違えてしまった。両家の子が「これは父ではない」と言うので、小経来は日向へ、晴戸は伊勢へ行き、名前も替えた(*→〔火葬〕1bの『伊勢や日向の物語』の異伝)。
『三軒長屋』(落語) 三軒長屋の真ん中に、質屋伊勢勘の妾が住む。両隣は、鳶(とび)の頭(かしら)の家と、剣術の先生の家なので、若い者が大勢出入りして、たいへん騒がしい。伊勢勘が「両隣とも追い出してやろう」と思っていると、両隣が「引っ越します」と言ってきた。伊勢勘は喜んで、転宅費用を50両ずつ与える。引越し先を聞いてみると、鳶の頭が剣術の先生の家へ、剣術の先生が鳶の頭の家へ引っ越すのだった。
『笑府』巻6⑤「好静」 閑静を好む男がいたが、その両隣りは銅職人と鉄職人で、たいへんやかましかった。男は「あの2人が引っ越してくれる日が来たら、ご馳走をしてやりたい」と言う。ある日、2人が「引っ越す」と言ってきたので、男は喜んで2人を饗応する。もてなしが終わってから、男が引越し先を尋ねると、2人は「私は彼の家へ、彼は私の家へ」と答えた。
『嫁ちがい』(落語) 長屋で一軒おいて両隣りに住む2人の男・甲と乙が、同じ晩にそれぞれ嫁を迎える。ところが手違いで、甲に嫁入るべき女が乙の家へ、乙に嫁入るべき女が甲の家へ来てしまう。一夜あけて甲と乙はそのことを知り、2人で相談する。甲「大変なことをしちまった。どうしよう」。乙「仕方がねえや。どっちの家も女房と畳建具つきにしておいて、お前が俺の所へ、俺がお前の所へ、引越ししよう」。
*『堤中納言物語』「思はぬ方にとまりする少将」も、嫁ちがいの物語である→〔取り違え夫婦〕。
『現代世界と禅の精神』(鈴木大拙) 鬼Aが旅人に飛びかかって、その四肢を抜き取った。鬼Bが旅人を気の毒に思い、死人の四肢を持って来て、もとのように補綴してくれた。鬼Aはさらに、旅人の頭や顔や内臓などを、すっかり引き抜いてしまった。鬼Bは、またいちいち、死体の頭や顔や内臓を持って来て、もとどおりにしてくれた。鬼Aと鬼Bは、旅人の抜き取られた手足や内臓を食べ尽くして、どこかへ消えて行った→〔アイデンティティ〕1a。
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