宇宙艦隊とは? わかりやすく解説

宇宙軍

(宇宙艦隊 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/24 09:18 UTC 版)

宇宙軍(うちゅうぐん)とは、主に宇宙空間を担当領域としている軍隊を意味する。

概要

SFなどにおいて空軍とは別に宇宙空間を活動範囲とする軍隊の名称として使用されてきたが、宇宙開発の発展により、アメリカ合衆国宇宙軍 (英語: United States Space Force) など、実際に「宇宙軍」の名称をつける国も現れている。独立せずに空軍内の部隊としたり、ロシア連邦における航空宇宙軍 (ロシア語: Воздушно-Космические Силы России) のように空軍を「航空宇宙軍」と名称変更する国もある。

弾道ミサイルの早期警戒や人工衛星管制から発展した軍種であるため、各軍から迎撃ミサイルを運用する部隊、人工衛星を運用する部隊などを統合した組織となっている。おもな任務は宇宙状況の把握、監視衛星の運用、大陸間弾道ミサイルの早期警戒・迎撃、衛星攻撃兵器による人工衛星の破壊、スペースデブリ等の監視であり、2023年現在では宇宙空間での直接戦闘や攻撃衛星(宇宙兵器)による地上への攻撃などは実現していない。

宇宙条約には宇宙空間の「平和利用の原則」が記載されているが、明確に禁止されているのは「宇宙空間への大量破壊兵器の配備」および「およびその他の天体の軍事利用」であるため、大量破壊兵器ではない兵器を天体以外の宇宙空間へ展開することや、軍事衛星の活用は、条約解釈によっては可能となる[1][2]部分軌道爆撃システムは宇宙条約に抵触しないよう、地球を周回する前に逆噴射により減速し弾頭を分離する仕組みが採用された。

第二次世界大戦中のドイツではアメリカ爆撃機計画のひとつとして、弾道飛行(衛星軌道ではない)により対蹠地でさえも爆撃できる有翼宇宙機ズィルバーフォーゲル(Silbervogel)が考案されたが、当時の技術水準では実現は困難であり、構想のみで終了した。

アメリカの戦略防衛構想 (SDI) では、ミサイル迎撃用レーザー衛星の打ち上げが予定されていたが、冷戦の終結等により計画は凍結されている。アメリカ空軍ではジェミニ計画のハードウェアを利用し軍事宇宙ステーション(有人軌道展開システム)や敵性人工衛星の偵察(ブルー・ジェミニ)などを計画していたが、費用を理由に中止された。

ソ連では早期警戒レーダー網に探知されにくい部分軌道爆撃システム(FOBS)を実際に配備されていたが、命中精度などの問題が多く短期間で退役している。また宇宙ステーションアルマースは宇宙からの偵察や監視を目的としていたが、『自衛用』としてNR-23機関砲が搭載された。地上からの遠隔操作で衛星を狙撃することに成功し、機関砲の代わりに無誘導ミサイルを搭載した機種も存在したが、実際には制約が多く実験のみで終了した。この他にも炭酸ガスレーザーを備えた軍事衛星ポリウスを打ち上げたが、軌道投入に失敗し運用に至っていない。また1970年代には宇宙飛行士の装備として、反動無しで相手の光学機器や目にダメージを与える非殺傷兵器としてフラッシュライト付きレーザーガンロシア語版が試作されたが、軍縮の流れによってプロジェクトは終了した。なおサバイバルキットには狩猟用の拳銃(TP-82)が含まれていた。

このように、宇宙空間に兵器を直接配置する事は技術的には可能だが、費用や政治の問題があり冷戦終結後に中止されている。

1991年に湾岸戦争が勃発すると、衛星を利用した攻撃目標の詳細位置の判別、GPS衛星を使用したミサイルの誘導、監視衛星による敵ミサイル発射の察知、気象衛星の情報を元にした作戦立案、通信衛星による連絡を通した戦場での部隊連携が行われた[3]。このためコリン・グレイは湾岸戦争を「最初の宇宙戦争」と呼んだ[3]。同戦争では、イラク軍によりGPSジャミング装置6台が試験的に導入され、衛星通信を妨害することでミサイルを外させることを試行しようとしていたが、実際に稼働する前に空爆で破壊されていたためにGPSジャミングは失敗したと見られる[3]。軍事部門における宇宙空間の重要性が知られるようになると、各国とも研究するようになり、中国は衛星破壊実験を、北朝鮮はGPSジャミング実験を行っている[3]。2007年には米空軍がGPS衛星が撃墜された想定で訓練を行っている最中に誤って民間使用分のGPS通信も切り、時刻同期にGPSの信号を用いる携帯電話やATMが停止するなど予想外の被害が広がった[4]。また、空港の管制システムの停止も確認され、GPSジャミング機を使用した実験では船のジャイロコンパスのクラッシュも確認されている。このように、先端技術は様々な形で衛星に依存しており、宇宙空間の安全の確保が軍事的にも経済的にも重要であるために、アメリカでは宇宙優勢システム航空団が設立されている。

2018年にアメリカのドナルド・トランプ大統領は新軍種としてのアメリカ宇宙軍(United States Space Force)の設立構想を明らかにし[5]、2019年12月20日に正式に設置された[6]

近年では他国の人工衛星の直接監視や、自国の人工衛星への補給を行う無人宇宙船も検討されている[7]

各国の宇宙関連部隊

アメリカ合衆国

軍種

統合軍

ロシア

イスラエル

中国

日本

フランス

スペイン

コロンビア

イラン

架空の宇宙軍

スペースオペラなどの宇宙を舞台とするSFでは、宇宙軍の設定は定番となっている。


脚注

出典

関連項目


宇宙艦隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 23:55 UTC 版)

惑星連邦」の記事における「宇宙艦隊」の解説

宇宙艦隊 (Starfleet) は惑星連邦所有するいわゆる宇宙軍である。『スタートレック:ディスカバリーによれば23世紀半ば時点で約7000隻の宇宙艦を所持。ただし惑星連邦設立趣旨上名目上は「軍」ではなく、あくまで外交深宇宙探査防衛目的の「艦隊」である。そのため戦闘目的特化した宇宙艦艇技術を持つことは保有しておらず、近隣クリンゴン帝国ロミュラン帝国見られる火力の強いディスラプター等の武器や透明偽装する遮蔽装置といった技術研究自体禁止となっている。とはいえ宇宙艦隊の艦艇クリンゴンドミニオンカーデシア等の戦艦決し引けとらない防衛力有している。また惑星連邦24世紀半ばからボーグ集合体ドミニオンといった前例見ない敵対勢力脅威さらされたため、戦闘目的新技術艦艇開発せざるを得なくなり事実上国軍としての実体有する至っている。 スタートレック主人公はいずれも宇宙艦隊に所属する士官もしくは所属経験のある者である。 惑星連邦宇宙艦隊前身は、2151年からエンタープライズNX-01による本格的な深宇宙探査行った地球連合宇宙艦隊である。2161年地球バルカンアンドリアテラライトによる惑星連邦設立同時に地球の宇宙艦隊を解消発展させ惑星連邦宇宙艦隊として新たに発足した地球連合時代から引き続き、宇宙艦隊本部宇宙艦隊アカデミー(宇宙艦隊の士官学校)を地球サンフランシスコに置く。構成員連邦加盟加盟問わず様々な種族成り立つが、設立経緯から艦隊士官地球人大多数占め次いでバルカン人が多い。ただし「宇宙艦隊=地球人艦隊」というイメージ根強く23世紀まではバルカン人をはじめ地球人以外の艦隊士官少数派であり、24世紀になってバルカンは独自の艦隊持っている(『スタートレック:ローワーデッキ19話)。 スタートレック劇中でよく耳にする「連邦艦」はほぼすべて宇宙艦隊所属の艦を指す。連邦艦の船体は薄いグレー~白を基調とし、形状バリエーションが多いものの概ね円盤型船体円筒型ワープ推進部が接続した形態をしている。船体にはアルファベット艦船接頭辞U.S.S.連邦宇宙艦/United Star ship)に続く艦名と、その艦固有の識別コードである登録番号書かれている登録番号接頭辞NCC正規の宇宙艦隊艦、NX試作艦、NAR艦隊所属していない民間の艦である(例:U.S.S.ENTERPRISE NCC-1701)。 「宇宙艦隊に所属する宇宙船とその乗組員は、いかなる社会に対してもその正常な発展への介入禁止する」という「艦隊誓い (en:Prime Directive) 」は宇宙艦隊のみならず惑星連邦基本方針である。

※この「宇宙艦隊」の解説は、「惑星連邦」の解説の一部です。
「宇宙艦隊」を含む「惑星連邦」の記事については、「惑星連邦」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「宇宙艦隊」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「宇宙艦隊」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「宇宙艦隊」の関連用語

宇宙艦隊のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



宇宙艦隊のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの宇宙軍 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの惑星連邦 (改訂履歴)、スタートレック:ディープ・スペース・ナインの登場人物 (改訂履歴)、銀河英雄伝説の用語 (改訂履歴)、スタートレック:ディスカバリー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS