デジタル簡易無線
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「ライセンスフリーラジオ」の記事における「デジタル簡易無線」の解説
デジタル簡易無線も参照 2008年(平成20年)制度化、2009年(平成21年)登録開始。DigitalとCR(Convenience Radio、簡易無線)と合わせて一般的には【DCR】と呼称されている。 デジタル簡易無線には免許局と登録局があるが、免許局の通信の相手方は「免許人所属の簡易無線局」であり不特定の相手の交信はできない。 呼出名称記憶装置が搭載されており、電波が発射されると自動的かつ利用者が認識できない形で送信される。従って登録申請をせずに使用すれば不法無線局を開設したことになり、電波法違反となる。また電波利用料の納付も義務となる。 周波数帯は351MHz帯で周波数間隔は6.25kHz、計35チャンネル(その内,5チャンネルはスカイスポーツ専用)。独自の混信防止機能としてキャリアセンス機能(他局の電波を受信している間は送信不能とする機能)が搭載される。 無線設備規則およびこれに基づく告示により、ARIBが標準規格「ARIB STD-T98 デジタル簡易無線局の無線設備」を策定している。 変調方式は三種類規定されているが、商品化されたものは四値周波数偏位変調(4値FSK)である。音声のコーデックは無線設備規則には規定されていないが、「STD-T98」には当初から「この規格に準拠すればケンウッドの特許の実施を無条件で許諾する」旨の注意がある。この特許はAMBE:Advanced Multi-Band Excitation(英語版)方式といい、アイコムやバーテックススタンダード(現・八重洲無線)はじめ各メーカーは、こぞって利用している。 ところが2011年(平成23年)アルインコは参入する際に、AMBE方式とは別に独自のRALCWI:Robust Advanced Low Complexity Waveform Interpolation(英語版)方式の併売を開始した。併売は以後も続いており、音声コーデックは二つの方式が存在している。 RALCWI方式はアルインコ以外のメーカーは採用しておらず少数派といえる。事業用としてはともかく、趣味としては特に理由のない限り多数派のAMBE方式を使用する。 AMBE方式は変調方式ごとの占有帯域幅にもよるが音声の圧縮効率には優れているものの自然さや明瞭さに欠け、放送事業用連絡無線では従前の方式(アナログ変調のFM)と比較し「機械的でこもったような声、鼻声」などの評価があり、この改善にコーデックのエンコード(送信側)とデコード(受信側)に改良を加えた事例がある。業務無線であれば改良した無線機に一斉に取り替えればすむが、趣味では強制することはできずメーカー毎に異なる改善方式が混在することになる。「特定のメーカーの無線機の音がいい」という説があるのも根拠のないことではない。 35チャンネルは、陸上のみで使用する30チャンネルと上空使用もできる5チャンネルに分かれ、陸上用は最大出力5Wでアンテナは取り外せ外部アンテナも使用可、上空用は最大出力1Wでアンテナは取り外せず外部アンテナも使用不可である。 上空用はスカイスポーツの隆盛に伴い設定されたもので飛行の安全を確保する目的がある。混信や妨害を与えるのは墜落の危険もあり趣味での使用は避けるべきものである。 DCRにて一部秘話コードを設定しないと,「ライセンスフリー局と交信できない。」といった,誤った情報が拡散されている。現在までそのような事実は全くなく、ライセンスフリー局用秘話(27144)のコード設定は、任意設定で運用すると言うスタンスで現在まで運用されている。 「STD-T98」では変調方式を数字、用途を英字で表す種別コードを規定しており、陸上用は「3R」、上空用は「3S」である。チャンネル番号は周波数順に1~30およびS1~S5と規定している。また、ユーザーコードと秘話機能を規定しており、アナログ変調のFMにおけるトーンスケルチ機能に相当するものであるが、351.2875MHz(15チャンネル)ではこれらの機能が動作せず、呼出チャンネルとされる。 出力が5Wのものには携帯形ばかりではなく車載形もあり、玩具や特定小電力無線局の無線機より高価であるが、登録人以外の使用が可能で、無線機を取り扱うレンタル業者があり個人間での貸借もできる。また包括登録制度により任意の時点で無線機を追加または削減することができる。 351MHz帯の電波伝搬はアマチュアバンドの430MHz帯に類似すると思われる。アンテナを外付けできるので性能の良いものを使用すれば遠距離交信できる可能性が高くなる。山頂同士や海を挟んだ陸地など条件を選べば200kmに迫る交信も可能である。 簡易無線#沿革デジタル局数の推移により、三年周期でしか確認できないが、平成26年度で172,443局、平成29年度で378,831局が登録されている。無線局等情報検索では、個人や一般企業・団体ばかりでなく官公署、消防団、医療機関、警備業者などの登録が確認でき、総務省の「非常通信確保のためのガイド・マニュアル」にある通り、災害時に貸与される無線機でもある。また中継器を介してIP無線と接続できるもの、データ通信に特化したものなど企業・団体の通信網の一翼を担うものもある。つまり、他の種類のものより公共性が高く混信や妨害を与えないよう最も注意する必要がある。
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