スケールの拡張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/05 14:41 UTC 版)
「カルダシェフ・スケール」の記事における「スケールの拡張」の解説
カルダシェフ・スケールに対する拡張や修正案がいくつか提案されている。 タイプ0、IV、V文明:スケールの最も直接的かつ仮設的な拡張として、宇宙全体を制御または使用できるタイプⅣ文明と、複数の宇宙の集合を制御できるタイプV文明がある。また、カルダシェフスケールに載らないタイプ0文明も考えられる。可視宇宙の出力は1045Wの数桁以内である。このような文明は現在の科学的知見に基づく推測の限界に近いか、あるいは超越しており、存在不可能かも知れない(フェルミのパラドックス)。Zoltán Galántaiは、そのような文明は自然の働きと見分けがつかない(他に比較可能なものが無い)ため、検知できないと主張した。 理論物理学者ミチオ・カクは自身の著書で、例えばダークエネルギーのような「超銀河的」なエネルギー源を利用できるタイプⅣ文明を取り上げた。 科学ジャーナリストのジョリーン・クレイトン(英語版)は、タイプⅠに到達していない惑星文明は基本的にはタイプ0文明であると述べており、タイプ0.1は原始時代、タイプ0.2は火の発見程度であると細分している。クレイトンはタイプⅣ文明は一つの銀河系を超えて複数の銀河群や銀河団、或いは超銀河団以上の範囲を支配できるに至った文明であり、宇宙のインフレーションに伴う加速膨張を飛び越えて移動可能となった時点で、事実上観測可能な宇宙全体を支配可能であると見なされる段階であるとしており、タイプⅤ文明は観測可能な宇宙を超えて、多元宇宙へと進出、或いは宇宙その物の創造すら可能となったとされる段階であり、事実上宗教における創造神に等しいとも記述している。 タイプⅣ以上の拡張はサイエンス・フィクションに近いものであり、論者によってその分類は様々である。SF作家のベロニカ・シコエはタイプⅤ文明は多元宇宙へ進出可能となった段階、宇宙の創造が出来る段階はタイプⅥ文明であるとしており、Kurzgesagt - In a Nutshellは複数の銀河への進出から一つの超銀河団を支配するに至る段階をタイプⅣ文明、複数の超銀河団から観測可能な宇宙全体を支配するに至る段階をタイプⅤ文明、多元宇宙の進出から宇宙の創造へ至る段階をタイプΩ文明と分類しているが、人類文明を参考にした動機の均一性(英語版)で、ある地球外文明の技術水準や行動理念の推測が可能であるのは精々複数の恒星系への進出を開始したタイプ2.5文明程度までであるとも述べており、タイプⅢ以上の文明の内容を推測する事は、蟻塚のアリが人類文明を認知するレベルの困難さが伴う為であると結論づけている。 カルダシェフ・スケールの代替案 スケールに対する他の修正案として、異なる計量を採用するものがある。例えばシステムの「成熟度」や利用される情報量、または極大スケールではなく極小スケールを制御する技術の進捗などである。 星の成熟度(ロバート・ズブリン)純粋なエネルギー使用量以外の指標も提案されている。一つはエネルギーだけではなく惑星、星系、や銀河の「成熟度」を指標とするものである。 提唱者のズブリンによる分類では、文明が宇宙のどの範囲まで広がっているかを重視しており、一つの惑星全体に文明が浸透した段階をタイプⅠ、複数の恒星系まで広範なコロニーを形成して広まった段階をタイプⅡ、銀河全体に広まった段階をタイプⅢと規定している。 情報の量(カール・セーガン)カール・セーガンは、純粋なエネルギー使用に加えて、文明が利用可能な情報という別の次元を追加することを提案した。 セーガンは106ビットの情報量(これは人類史上で知られる如何なる文明の情報量よりも小さい)にAの文字を割り当て、続く各アルファベットで情報量が一桁ずつ上がるものとした。従ってレベルZ文明は1031ビットを持つ。 この分類では、1973年の地球は0.7 H文明であり、1013ビットの情報にアクセスできる。 セーガンはレベルZに到達した文明は未だ存在しないと推測している。根拠としては、それほどの情報量は超銀河団に存在する全ての知的種族が持つ情報量の総計を超え、かつ、観測上、現宇宙は大距離で効率的に情報交換できるほど古くないことを挙げている。 情報とエネルギーの軸は厳密に相互依存するわけではないので、例えレベルZの文明であっても、必ずしもカルダシェフのタイプⅢ文明である必要はない。 ミクロ次元の習得度(ジョン・D・バロウ)バロウは、人間が環境を操作する能力を、宇宙全体の操作といったマクロで漠然とした方向ではなく、原子や素粒子などよりミクロな物理学の操作能力によって文明の段階を分類する方がより効果的であると提唱している。従って、彼は文明段階をタイプ1マイナスからタイプΩマイナスという逆方向への分類を規定している。タイプⅠマイナス - 機械工学。構造の構築、資源の採掘、固体の結合と破壊など、目に見える範囲での物体を操作する事が出来る段階。 タイプⅡマイナス - 医用生体工学。遺伝子を操作し、細胞の発達を変化させ、それら自身の一部を移植または交換し、それらの遺伝情報を読み取り、操作することが出来る段階。 タイプⅢマイナス - 化学工学。分子と分子結合を操作して、新しい材料を作成することが出来る段階。 タイプⅣマイナス - ナノテクノロジー。個々の原子を操作し、原子スケールのナノテクノロジーを実現し、複雑な形の人工生命を作成する事が出来る段階。 タイプⅤマイナス - 原子核物理学。原子核を操作し、それを構成する核子をも操作出来る段階。 タイプⅥマイナス - 素粒子物理学。素粒子を構成する物質(クォークとレプトン)を操作して、素粒子の集団が構成する複雑な組織を人工的に作り出せる段階。人類が到達可能な技術水準としては最高クラスの段階でもある。 タイプΩマイナス - 空間と時間の基本構造その物を操作できる段階。 この分類によれば、人類の文明はタイプⅢマイナスとタイプⅣマイナスの中間付近の段階であるとされる。
※この「スケールの拡張」の解説は、「カルダシェフ・スケール」の解説の一部です。
「スケールの拡張」を含む「カルダシェフ・スケール」の記事については、「カルダシェフ・スケール」の概要を参照ください。
- スケールの拡張のページへのリンク