スケールフリーグラフの頑強性と脆弱性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/26 11:37 UTC 版)
「複雑ネットワーク」の記事における「スケールフリーグラフの頑強性と脆弱性」の解説
スケールフリーグラフが持つ注目すべき特性として、ネットワーク障害など「ランダムな故障や攻撃」に対して頑強性が高いことがあげられる。スケールフリーなトポロジーを持つネットワークでは、全頂点のうちのランダムに5パーセントがダウンしたとしても、代替経路の存在によって頂点間の接続を維持でき、系全体の平均経路長(平均最短距離)はほとんど変化しないのである。同じ頂点数、同じ辺数でトポロジーが異なる他のネットワークではこのような特性は見られない。頑強性は次数分布のベキ指数と関係がありベキ指数が 2 < γ < 3 の場合は非常に頑健性が高くなることがモデルにより示されている。しかしながら、頑健性は両刃の剣である。見方を変えれば頑健性が高いということは感染症やコンピュータウイルスがネットワーク全体に広がり易いということでもあるからだ。実際、ランダムネットワークにおいては存在するウイルスあるいは流行の拡散に関する閾値(threshold)がスケールフリーネットワークでは存在しないため拡散しやすく退治するのも困難で時間がより長くかかることが判明している。 一方で、スケールフリーなネットワークは、特定の重要なハブをピンポイントで狙った攻撃に対しては脆弱であるという弱点も併せ持っている。次数の集中した上位5パーセントの頂点がダウンしたとすると、系全体の平均経路長は約2倍にまで増大してしまう。 同様の特性は自然界の食物連鎖のネットワークでも観察されている。食物連鎖のネットワークは生物種のランダムな絶滅に対しては頑強であるが、特定の重要な種が絶滅すると大きな影響を受けてしまう。こうした点を考慮することは生物多様性に関する議論においても重要であろう。
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