パスタ 栄養と健康

パスタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 00:58 UTC 版)

栄養と健康

パスタの主な栄養素炭水化物 (糖質) であるため、糖質制限ダイエットなどにおいて目の敵にされがちであった。だが2018年カナダトロントセント・マイケルズ病院英語版の研究チームにより、実際にはGI値の低い食品であり、たとえ精白小麦を原料に使用している場合でも、パスタはほかの精白小麦食品と比べて平均的にビタミンやミネラルなどの微量栄養素の含有量が多いことや全粒粉を使用したものでもGI値には通常のものと大きな違いがないことが明らかとなった。

これにより「同じ炭水化物でも白米やパンとは違う」特徴があることが解明されることとなり、研究チームは論文で、

炭水化物を食べると太るという情報が氾濫しているだけに、この研究結果は重要だ。こうした情報は、毎日の食卓に影響を及ぼしており、炭水化物、特にパスタの消費量は最近になって減少する傾向にあった。

と記している。

また、研究論文の筆頭筆者で、同病院の臨床栄養・リスク緩和センターに所属する臨床科学者のジョン・シーベンパイパーは、「太ると敬遠されるパスタは、実際は低GI食として、健康的な食事のメニューに加えて良さそうだ」とコメントしており、研究の結果においては、「パスタを食べても太ることはないと、ある程度の確証を持って言うことができる」と述べている。

同研究結果は学術誌「BMJオープン英語版」に掲載された[9]

パスタの種類

ロングパスタ

様々なロングパスタ
様々な平打ちパスタ
様々なパスタ
様々なパスタ。上よりコンキリエ、カンネッローニ (2種)、レジネッテ、ラザーニェ
様々なパスタ
様々なパスタ
様々なパスタ
様々なパスタ
スパゲッティ (spaghetti)
デュラム小麦セモリナを使った、円形の断面を持つロングパスタ。太さは様々だが、主に1.8 mm前後。名称は「ひも (spago) 」の指小形に由来する。
スパゲッティーニ (spaghettini)
名称はスパゲッティの指小形で、「より細いスパゲッティ」という意味。太さはさまざまだが、その名の通りスパゲッティより細く、1.6-1.7 mm
フェデリーニ (fedelini)
細めのスパゲッティ。1.4-1.5 mm
ヴェルミチェッリ (vermicelli)
名称はミミズやヒルのような長い虫という意味の「ヴェルメ」 (verme) の指小形で「小さいヴェルメ」の意。ナポリでは、スパゲッティやスパゲッティーニはヴェルミチェッリと呼ばれることの方が多い。スパゲッティよりやや太めの2.08-2.14 mm。英語読みの「ヴァーミセリ」としても知られている。
カペッリーニ (capellini)
円形の断面を持つロングパスタのうち最も細い種類のもので、名称は細さを「髪の毛」 (capelli) に喩えたところから来ている。カペッリ・ダンジェロ (capelli d'angelo、「天使の髪の毛」) の別名がある。スープや冷製に用いる。
リングイネ (linguine)
楕円形の断面を持つパスタ。短径1 mm、長径3 mmほど。
ブカティーニ (bucatini)
中央に穴の開いているロングパスタ。スパゲッティよりもやや太い。名称は「穴」 (buco) に由来する。
キタッラ (chitarra)
四角い断面を持つパスタで、アブルッツォ州の郷土料理に用いられる。スパゲッティ・アッラ・キタッラとも言う。chitarra は「ギター」の意で、このパスタをつくる弦を張った道具の名でもある。
タリアテッレ (tagliatelle)
フェットゥチーネ (fettuccine) と呼ぶ地域もある。卵を入れた練り粉をのばして、幅7-8 mmで平たく切り分けたパスタ。乾燥パスタもある。
パッパルデッレ (pappardelle)
薄い板状にのばした手打ちパスタを20-30 mmの幅に切り分けたリボン状のパスタ。
ピッツォッケリ (pizzoccheri)
蕎麦を主体とした練り粉を薄く伸ばし、きしめん状に切り分けた手打ちパスタ。
パッサテッリ (passatelli)
パン粉チーズナツメグを混ぜ合わせて生地にし、専用の押し出す道具で太い短めのスパゲッティ状に成形したもの。
ストロンカテッリ (stroncatelli)
スパゲッティ状のマルケ州アンコーナ地方の手打ち生パスタ。
タリオリーニ (tagliolini)
卵入りの練り粉を伸ばし、幅1-5 mmに細長く切り分けた蕎麦状から平ひも状のパスタ。タリエリーニともいう。ピエモンテ州で人気のパスタで、同州ではピエモンテ語のタヤリン (tajarin) として知られる。タヤリンは一般的なタリオリーニよりほんの少し細めの場合が多い。
トレネッテ (trenette)
3-4 mm、厚さ1-2 mmの断面が長方形のリグーリア州のパスタ。
ビゴリ (Bigoli)
ピチ (パスタ)(Pici)
フィレヤ(Fileja)
カラブリア州ヴィボ・ヴァレンツィアのパスタ。
ブジアーテ(Busiate)
カラブリア州及びシチリア州のパスタ。

ショートパスタ

マッケローネ (maccherone)
日本ではマカロニという表記が一般的。マッケローニはもともと、穴のあいた棒状のものを指す。
セーダニ (sedani)
マカロニよりもやや大型で、わずかに湾曲している。
ペンネ (penne)
ペン先のように斜めに切られた筒状のパスタ。表面に波状の筋が入ったものはペンネ・リガーテ (penne rigate)、小型のものはペンネッテ (pennette) と呼ばれる。
リガトーニ (rigatoni)
外側に波状の筋が入った、太めのショートパスタ。
ファルファッレ (farfalle)
イタリア語で「蝶」の意味。蝶の形をしたパスタ。
コンキリエ (conchiglie)
イタリア語で「貝」の意味。貝殻のように小さく巻いたパスタ。大型のものをコンキリオーニ (conchiglioni)、小型のものをコンキリエッテ (conchigliette) とも言う。
フジッリ (fusilli)
螺旋 (らせん) 状のショートパスタ。
ルオーテ (ruote)
車輪のような形をしたパスタ。中国では、この変型として、内側を「福」や「壽」などの漢字に変えた物が作られている。日本では、ハローキティなどのキャラクターマカロニとして市販されている。
オレッキエッテ (orecchiette)
「小さな耳」を意味する。プッリャ州で作られる。
ガルガネッリ (garganelli)
ロマーニャ地方産の手打ちマカロニ。
ガッセ (gasse)
十文字に結んで結び目を作り、両端を密着させたリグーリア地方のパスタ。
ステッリーネ (stelline)
星形をしたパスタ。
ツィーテ (zite)
マカロニより太い管状のパスタ。
カサレッチェ (casarecce)
切り口がS字状で2本のパスタが絡み合っているようなパスタ。シチリア島生まれで主に南イタリアで食される。
コルツェッティ
直径5 cmから7 cmほどの平べったい円形のパスタでの総称。イタリア北西部リグーリア州が発祥。専用の木製スタンプで家紋などの模様が押されている。
ジェメッリ
イタリア語の双子から来ているパスタの一種。1本のパスタがS字型にひねってある。
トロフィエ (trofie)
イタリア北西部リグーリア州ジェノヴァで生まれた手打ちのショートパスタ。小麦粉に水、塩、オリーブオイルを加えて練った生地を手のひらで4 cmから5 cmの長さの細いひも状に伸ばし、左右の端がねじれた形につくる。 木くず、かんなくずを意味する“TRUCIOLO“が語源。
パッケリ
カヴァタッピ (カバタッピ) ≒トルテリョーニ

詰め物入りのパスタ

ラビオリ (ravioli)
詰め物入りのパスタ。2枚で閉じている。ピエモンテ地方には、デル・プリン (Del Plin) と呼ばれる、独特の食感のラビオリもある。
トルテッリイタリア語版 (tortelli)
詰め物入りのパスタ。1枚で閉じている。
トルテッリーニ (tortellini)
小型のトルテッリ。正方形の生地で詰め物を包み、三角形になるように二つに折り、両端を合わせて指輪状にして留める。詰め物挽肉リコッタチーズであることが多い。
アノリーニイタリア語版 (anolini)
イタリア北部エミリア=ロマーニャ州の詰め物入り小形パスタ。
カルツォニッキ (calzonicchi)
炒めたと卵のペーストを詰め、三角形にかたどったローマ地方のパスタ。
カンネッローニ (cannelloni)
詰め物を筒型に巻いたパスタ。日本では「カネロニ」とも表記される。
カソンセイ (casonsei)
方形状の詰め物入りパスタ。
チャルツォンス (cialzons)
イタリア北部、山岳地方のホウレンソウ干しブドウ、卵のペーストを詰めたパスタ。
クリンジョネス (culingiones)
サルデーニャ地方のラビオリ。
パンツェロッティ (panzerotti)
詰め物をした半月状のパスタ。揚げて食す。
アグノロッティイタリア語版 (agnolotti)
イタリアのピエモンテ地方の典型的なパスタの一種。ローストした肉や野菜の詰め物の上に折り畳まれた小さなパスタ生地で作られている。

その他のパスタ

ラザーニェ (lasagne)
板状のパスタ。中には縁に波状のよれを入れた物や、縁をギザギザにカットされたものもある。日本国内では「ラザニア」という呼称が一般的。さらにこれを小さくしたようなラザニエッテというパスタも存在する。
ニョッキ (gnocchi)
潰したジャガイモ、ホウレンソウ、リコッタチーズ、カボチャなどを混ぜて作られるダンプリング (団子) 状のパスタ。
クスクス (couscous)
デュラム小麦セモリナに水をふりかけ、粟粒大に丸めたもの。アメリカ以外ではパスタとして扱わない。起源は北アフリカで、ベルベル人の伝統料理とされ、モロッコ料理などで用いられる。イタリアではシチリアサルデーニャリヴォルノで作られる。
リゾーニ (risoni)
米粒状のパスタ。元々オオムギを原料に作られていたことから、イタリアではオオムギを意味する「オルゾ (またはオルゾー) 」 (Orzo) と呼ばれることもある[注 2]。しかし日本では、イタリアのバリラ社がニップンを通じて「risoni」 (イタリア語で大きな米の意味) という商品名で販売していることからこの名が定着している。現在ではセモリナ粉を原料としており、マカロニの一種として分類されることもある。
マルタリアーティ (maltagliati)
変則の梯形状に切った細長い手打ちパスタ。
パスタ・ミスタ (pasta mista)
「混ぜたパスタ」の意。「パスタ・ミスキアータ」 (pasta mischiata) とも。パスタ・ミスタとはパスタの種類ではなく、形や大きさの異なるパスタを取り混ぜたもので、主な用途はパスタを使ったミネストラ (minestra、スープの一種) である (「料理法・ソース」で後述)。第一次世界大戦後に包装されたパスタが広く市販されるまでは、パスタは食料品店で量り売りされていた。少量残ったパスタは、欠けたり折れたりしたパスタと混ぜて「ミヌッツァリア」 (minuzzaglia) または「ムンネッツァリア」 (munnezzaglia) と呼び、安い値段で売った。現在では「パスタ・ミスタ」という名称で、箱入りや袋入りの混合パスタが市販されている[10]
フレグラ
トルテッローニ
サルデーニャのパスタの一種。

料理法・ソース

ギャラリー

アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ
アラビアータ
カルボナーラ
ジェノヴェーゼ
ヴォンゴレ
パスタ・アル・ポモドーロ
トルテッリーニのスープ
Frittata di pasta

調理 

フォーク
  1. 大きめの深鍋にたっぷりの湯を沸かし、1%程度の塩を入れる[11]。パスタ100グラムに対して水1リットル、塩10グラムが基本である。200グラム以下のパスタを茹でる場合であっても、最低でも水2リットル程度は必要である。塩には、パスタに下味をつける、パスタを引き締める、表面がうどんのようにぬるぬるするのを防ぐ (澱粉の糊化を阻害する) といった役割がある。ヨーロッパでは水の硬度が高いため、塩を入れなくても問題ない。
  2. パスタを鍋に入れる。全体を湯に浸からせたらくっつかないよう、菜箸などでゆっくり掻き混ぜてほぐす。混ぜすぎるとパスタの表面が傷むのでほどほどに。火加減は強すぎず弱すぎず、ポコポコと沸き続けてパスタが静かに踊る程度である[11]
  3. パスタがほどよく (ロングパスタであれば一般にアルデンテの状態に[11]) 茹だったらザルなどに上げる。茹で汁は、ソースに入れることで濃度を調節したり、ソースや具に少量加えてパスタに絡めやすくしたり、パスタがくっついたりぱさぱさになってしまった場合に少量加えてほどくように活用できる。

種類

パスタはソースと組合わせて食べる。以下にその主な種類。

オイルソース

トマトソース

ミートソース

クリームソース

バジルソース

チーズ系ソース

その他

備考

パスタとソースには相性があり、例えばナポリではスパゲッティ (ヴェルミチェッリ) はトマトソースやミートソースと、リングィーニは魚介類と合わせることが多い。

日本ではたらこスパゲッティや、納豆きのこなどを使った和風のソースも数多くあり、軽食として供されてきたナポリタンもまた日本独特のものである。

パスタを使ったミネストラ (スープ)

日本ではソースがスープ状で粘度が低いパスタ料理がありスープパスタと呼ばれるが、イタリアのパスタソースは通常ソースがパスタに絡みついたものとなる。イタリアで類似のものとしてはスープにパスタを入れた料理となるが、あくまでもスープとして位置づけられる。

カンパーニア地方では、豆 (いんげん豆レンズ豆ひよこ豆グリーンピース)、じゃがいもかぼちゃなどをパスタと煮たスープがよく作られる。スープに入れたパスタは柔らかくなるまで煮込むのが普通で、アルデンテの状態で食べることはまずない。スープに入れるパスタの形状は管状のパスタ、幅広のパスタ、パスタ・ミスタ、折ったヴァーミチェリまたはカペッリーニなど様々である。具によって好まれるパスタの種類が異なり、例えば豆の入ったスープでは、豆が中に入るような管状のパスタが特に好まれるが、スープに入れるパスタの種類は地域によっても異なる[15]

パスタを使ったミネストラはイタリアの他の地域にも存在する。いんげん豆とパスタのミネストラ (パスタ・エ・ファジョーリ) はその最も一般的なものである。またトスカーナ州ルッカ県では、折ったラザーニェ、じゃがいも、トマトを煮込んだミネストラが作られている[16]


注釈

  1. ^ 細長い形状にこだわらないという点では、むしろ中国語の「」 (簡体字「」) に非常に近いと言える。
  2. ^ 日本では、本来のオオムギの意味と区別するために「オルゾ・パスタ」または「オルゾー・パスタ」といった呼び名も見られる。

出典

  1. ^ Emily Wise Miller - A Food Lover in Florence
  2. ^ Schwartz, Arthur. Naples at Table. Harper Collins, New York, 1996. p.128
  3. ^ a b c 池上俊一『パスタでたどるイタリア史』岩波ジュニア新書
  4. ^ 石毛直道『世界の食べもの 食の文化地理』P234 講談社学術文庫。
  5. ^ 10月25日は世界パスタデー”. 2014年10月25日閲覧。
  6. ^ 澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』彩流社、41頁。 
  7. ^ タイ料理:スパゲティキーマオ(สปาเก็ตตี้ผัดขี้เมา) | タイNavi”. thailand-navi.com (2019年3月20日). 2021年1月11日閲覧。
  8. ^ DECRETO DEL PRESIDENTE DELLA REPUBBLICA 9 febbraio 2001, n. 187
  9. ^ 「パスタは食べても太らない」──カナダ研究”. ニューズウィーク日本版 (2018年4月4日). 2018年4月8日閲覧。
  10. ^ Schwartz, Arthur. Naples at Table. Harper Collins, New York, 1996. p.134
  11. ^ a b c 大阪あべの辻調理師専門学校著『パスタプロの隠し技』光文社、2000年、20-23頁。ISBN 4-334-97285-3 
  12. ^ a b イタリアでパスタを食べる時にスプーンを使うのは子供だけ マネーポストWEB、2018年8月9日
  13. ^ a b 意外と知らない!?パスタの食べ方のマナーを解説! DELISH KITCHEN、2020年8月14日
  14. ^ 「リングイネ」を知る!おすすめのパスタ3選”. ニューオークボ. 2021年11月15日閲覧。
  15. ^ Schwartz, Arthur. Naples at Table. Harper Collins, New York, 1996. p.93-95
  16. ^ Anne Bianchi. From the Tables of Tuscan Women. Ecco, Hopewell, New Jersey, 1995
  17. ^ Pasta”. www.selva.com.tr. 2021年10月19日閲覧。
  18. ^ Pasta – Dobeles Dzirnavnieks” (英語). 2021年10月19日閲覧。
  19. ^ Eurimac” (英語). www.eurimac.gr. 2021年11月5日閲覧。
  20. ^ 美しい国から、美しい味のパスタ|ラティーノ パスタ|富永貿易株式会社”. 富永貿易株式会社 | 富永貿易株式会社. 2021年11月5日閲覧。





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