treeとは?

読み方:き
【英】:tree

概要

閉路含まない連結グラフを木という. 連結グラフ G=(V,A) \,に対して, G \,部分グラフであって集合 V \,をもつ木を, グラフ G \,張る木(spanning tree)といったり, グラフ G \,全域木, 極大木, 全張木あるいは, 単にグラフ G \,の木などという. 根と呼ばれる1点が指定された木を根付き木(rooted tree)という. さらに, 根付き木は, (有向グラフとして)向き沿って根からすべての点に行くことができるとき, 有向木(directed tree)と呼ばれる.

詳説

 平面上 (空間内) の幾何的問題を解く際に対象領域分割しながら部分領域に対応する木のノード考え分割階層構造を木 (構造データ構造) を用いて表現する. 分割のしかたにより様々な木が得られそれぞれ特別な名前がつけられている. 計算幾何代表的問題である点位置決定 (point location) 問題(与えられた平面上のn点からなる直線分の平面グラフS\, に対して, 質問Q\, 与えられたとき, Q\, を含む面 (領域) を求め問題) および領域探索 (range search) 問題(与えられた平面上のn\, 点の集合S\, に対して, 質問多角形Q\, 与えられたとき, Q\, 含まれるS\, の点を列挙する問題)を例にとり説明する.

 これらの問題は, いずれも, 与えられた対象物集合S\, (以下台集合と呼ぶ)に対して, 質問Q\, 与えられたとき, Q\, ある種条件をみたすS\, 要素列挙する問題であり, その意味で探索問題呼ばれている. 同一台集合S\, に対して, 質問(問い合わせ)が繰り返し行われることも多いので, 台集合に前処理を施し質問高速応答できるように工夫する. すなわち, 質問高速応答できるようにS\, 計算機内で違った形(データ構造)で表現する. 実際データベースでもこのような工夫がなされている.

 このような状況下では, S\, 表現するデータ構造D(S)\, のための記憶領域, D(S)\, 構成するための手間(および作業領域), および質問応答している時間 (探索時間) の3\, つの基準基づいて性能総合的評価なければならない.

 点位置決定問題に対応する1次元問題は, 一直線上に与えられたn\, 個の点の集合P\, 分割された区間集合S\, に対して質問Q\, 与えられたときQ\, を含むS\, 区間求め問題となる. これは, P\, およびS\, 平衡探索木D(S)\, 表現しておけば, \mbox{O}(\log n)\, の手間で応答できる. D(S)\, 構成するための手間および記憶領域いずれも\mbox{O}(n)\, である. さらに点集合新しい点が付加されたり古い点が除去されたりして台集合P\, S\, 変化するのが普通である. このときにはそれに応じてD(S)\, 更新なければならないが, この更新操作ダイナマイゼーション (dynamization) という. 1回の更新要する手間\mbox{O}(\log n)\, ダイナマイゼーション技術多数知られている.

 領域探索問題に対応する1次元問題は, 一直線上に与えられたn\, 個の点の集合S\, に対して質問区間Q\, 与えられたときQ\, 含まれるS\, の点をすべて列挙する問題となる. これもS\, 平衡探索木D(S)\, 表現しておけば, \mbox{O}(k+\log n)\, の手間で応答できる. ここでk\, 列挙される点の個数である. 更新の手間も\mbox{O}(\log n)\, である.

 2\, 次元点位置決定問題領域探索問題は1次元このような探索問題(の系列)に帰着して解かれている. たとえば, 点位置決定問題に対して有名な手法であるスラブ法 (slab method) では, グラフ頂点を通る (x\, 軸に) 垂直な直線を引いて平面を垂直な帯に分割する. この垂直な帯がスラブ (slab) と呼ばれる. 一つスラブ内では, 横切るグラフ線分上下関係一列に並べることができるのでそれを平衡探索木表現しておく. すると, 点位置決定問題は, 質問Q\, に対して, Q\, を含むスラブ二分探索で見つける. 次にそのスラブ内で平衡探索木利用してQ\, のすぐ上にある線分求め, その線分境界にもつ下の面をQ\, を含む領域として求めればよい. これは2次元問題n+1\, 個のスラブでの問題(1次元問題)に帰着していると見なせる. 応答の手間は\mbox{O}(\log n)\, となるが, 必要とするデータ構造構築するための手間と記憶領域\mbox{O}(n^2)\, となる. これに対して, サーナクとタージャン (Sarnak-Tarjan) の残存スラブ法 [2] では, x\, 座標の値を時刻考えて, 連続する2つのスラブ構造変化定数であることに注目して, 過去に遡っても探索が可能になるようにデータ構造工夫をしている. これは点位置決定問題に対して, 理論的最適アルゴリズム (前処理時間\mbox{O}(n\log n)\, , 記憶領域\mbox{O}(n)\, , 応答時間\mbox{O}(\log n)\, ) の一つである.

 領域探索に対して多角形は軸に平行な辺からなる長方形場合多く, そのときにはk-d木 (k\, -d\, tree), 四分木 (quadtree), 領域木 (range tree) などのデータ構造が有効である.

 領域木平面上の集合領域x\, 座標中央値基づいて二分割を繰り返してできる分割に対応する二分木で, 各ノードには対応する対象領域内にある点をすべて記憶しておく. すなわち区間木 (interval tree) の各ノードに対応するx\, 区間に入る点を平衡探索木などで記憶しているものである. するとx,y\, 軸に平行な質問長方形Q\, 与えられたとき, Q\, x\, 区間区間木分割に対応して互いに共通部分をもたない区間和集合として表現されるが, そのような区間に対応するノード一次元領域探索をすることでQ\, 含まれるSの点を効率的列挙できる.

 k\, -d\, 木はk\, 次元空間領域分割表現するデータ構造一つであり, 2次元場合では, 根に全体領域が対応し, その左右の子にはx\, 座標注目して左右二等分された点集合領域が対応する. 次に分割された左(右)点集合領域y\, 座標基づいて上下二等分それぞれ左(右)の子左右の子に対応させる. 以下交互繰り返して対応する領域に点が1個になったら分割終了する. この分割法を表現したものが2-d\, 木である. k\, 次元のときは, x_1\, 座標, x_2\, 座標, \cdots\, , x_k\, 座標といってまた, x_1\, 座標戻り循環しながら分割ていったものを表現する. これに対して, 四分木2\, 次元平面領域分割表現するデータ構造で, 根に全体領域が対応し, 根の4\, の子にはx\, 座標中央値およびy\, 座標中央値を通る水平線および垂直線をひいて四分割された部分領域が対応する. さらにそれぞれのv\, に対応する部分領域同様に水平線および垂直線四等分してv\, の4つの子に対応させる. このようにして得られる分割表現するデータ構造四分木である. 分割された領域対象物がなくなると分割停止する.

 k\, -d\, 木も四分木探索は同様で, x,y\, 軸に平行な質問長方形Q\, 与えられたとき, Q\, 共通部分をもつ領域に対応するノード1次元領域探索をすることでQ\, 含まれるS\, の点を効率的列挙できる.

 八分木 (octree)は3次元空間の点の集合の分割表現するデータ構造で, 3次元領域探索などに用いら, 2次元平面における四分木に対応する. 計算幾何様々な探索問題対すアルゴリズムとその詳細については文献 [1] を参照のこと.



参考文献

[1] 伊理正夫監修, 腰塚武志編集, 『計算幾何学地理情報処理(第2版)』, 共立出版, 1993.

[2] N. Sarnak and R.E. Tarjan, "Planar Point Location Using Persistent-Search Trees," Communications of the ACM, 29 (1986), 669-679.


Tree


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/16 00:12 UTC 版)

(tree から転送)

(き、: tree, woody plant, arbor)とは、

  • 植物の一種を指すための用語。樹木(じゅもく)とも言う[1]木本(もくほん、植物学用語)とも。
  • 用材や材木のこと[2]

概説

「き」「木」や「tree」というのは古代から用いられてきた呼称・概念である。

現代では、「木」は高木低木の総称である[2]とも、木は大きさによって高木(喬木 きょうぼく)と低木(灌木 かんぼく)に区別する[1]、とも。 「木・樹」と言って、たちき(立木)を指していることもある[2]。また「木・樹」と言って、特に高木を指す場合もある。

現代の植物学では(素朴な言葉として用いられている「木」という語を避け、学術的な用語を用いる場合)「木本植物」という用語で呼んでおり[1]、これは「草本植物)」と対比する語である[1]

硬いをもち、幾本ものがあり、地面を張り、生長する。幹は木質化し、次第に太く成長する。枝の先にはを付け、を咲かせ、主に種子をもって繁殖する。

高さは、高いものではたとえばオーストラリアのユーカリの一種や北米のセコイアオスギのように130mほどに達するものがあり、小さいものではフッキソウヤブコウジのような例がある[1]

高木が集まり森林をつくる

高木が集まってできた植物社会が森林であり、地球の陸地のほぼ半分は森林で占められているものの、近年は伐採(森林破壊)が進行中である[1]。樹木が高い密度で集まっているものを密林、まばらに生育しているものを疎林と呼ぶが、基本的に樹木の生育できる気候において自然状態でまったく樹木が生育しないということは珍しく、何らかの形で樹木は生育している。ただし気候が限界を超えて寒冷であったり乾燥している場合、樹木は生育しない。ケッペンの気候区分においては乾燥しすぎて樹木が生育しない地帯を乾燥帯、寒冷すぎて樹木が生育しない地帯を寒帯と呼び、樹木の生育する3気候(熱帯温帯冷帯)と区別する。ただし、これはあくまでも降雨量と気温による区分であり、乾燥帯においては外来河川やオアシスなど、降雨によらず水分を得ることのできる地点においては樹木は生育している。また、まれに樹木が発芽し十分に発育して地下の水脈に根を到達させたのちに周囲の気候が乾燥した場合、本来全く樹木が生育できる条件がないのもかかわらず樹木が存在することとなる。こうした例で最も著名なものの一つに、アフリカテネレ砂漠に存在したテネレの木がある。この木は地球上でもっとも孤立したところに立っていた木として知られ、もっとも近い別の木から少なくとも200㎞は離れたところに立っていた。

木は古来、人間の生活・文化と密接な関係があり、洋の東西を問わず祭祀に何らかのかかわりを持っている[1]

学術的な定義を巡って

大多数の専門家が同意するような明瞭な植物学的な定義は提唱されていない。

たとえば岩波生物学事典の【木本】の項では「茎および根において肥大成長により多量の木部を形成し、その細胞壁の多くが木化して強固になっている植物。草本と対する」としている[3]。ただし、この定義に厳密に従えば木かどうか迷うパパイヤなどはもちろん、ナスキクなど一般には「」として扱われる多くの植物が木になってしまう。しかも、これらもに固有の性質ではない。ナス科キク科マメ科アブラナ科などには、通常は草として生育しているが、条件がそろえば枯れることなく連続的に生長し、軸を肥大・木化させる種もたくさんある。例えば、ナストウガラシは温帯では草であるが、熱帯亜熱帯では明瞭に灌木に分類される性質を示す。

一般的には顕花植物の双子葉植物で木本化するものは樹皮の裏側だけが生きており、それの成長に基づき二次成長し肥大するのが木本とされるが、単子葉植物の場合は、成長組織が幹内に拡散しているので、二次成長があっても、樹皮の裏側だけが成長している訳ではない。例えば、ドラセナの一種のリュウケツジュなどは推定3000年の古木があるが、単子葉植物なので、四季の有る場所で育てても年輪は出来ない。また、双子葉植物のバオバブは気温が常に暖かい場所に自生するが、雨季と乾季の成長差で年輪が出来る報告がある。

一方で明瞭な茎の肥大が認められないモウソウチクココヤシなどは、その地上部は強固かつ10mを超える「高木」になるが、木には分類されない。葉が合わさってできた偽茎が幹の代りになり、丈が高くなるバナナや、根が茎を補強することにより高くなるヘゴなども10メートル近くの「大木」になり、成長に従って「幹」が太くなるが、これらは木には分類されない。造園界樹木学上では「特種樹」として扱われている。

他によくされる議論としては以下のようなものがある。年輪ができる植物を木本類)、できない植物を草本(そうほん)類)と定義する。ところが、「パパイアの木」には年輪ができないので、「草」に分類される。ただし、年輪は、季節による寒暖の変化や、乾燥・湿潤の変化により組織の生長スピードが変化した結果生じるから、明らかに木であっても、連続的に生長する条件(熱帯雨林のように、1年を通じて寒暖等が変化しない環境で生長した場合など)では、年輪はできない。

さらに別の見解として、とは非常に厚くなった細胞質を持つ死んだ細胞により生体が支持されている植物である、とするものがある。細胞が非常に厚い細胞壁を発達させ、死んで生体の支持に使われるようになることを木化、あるいは木質化という。具体的にいうと、いわゆる木材は、主として道管から成り立っているが、この道管は細胞壁が厚くなって、最後には細胞そのものは死んで、残った細胞壁がパイプの形で水をくみ上げる仕事を続けるものである。そのような部分をもつ植物が樹木だ、という判断である。上述の竹やココヤシなどは、これによれば木と見なされる。

しかし、現実にはほとんどの維管束植物で道管や仮導管の細胞壁は二次壁により肥大するため(つまり程度もの)、なにをもって「非常に厚い細胞壁」とするかは完全に恣意となり、厳密に適用すればほぼ全てが木に分類されてしまう。

上田弘一郎京大名誉教授(世界の竹博士)は『は木のようで木でなく、草のようで草でなく、竹は竹だ!』と力説していた[4]。 つまり、この発言も示すように専門家でも維管束植物を木か草に2分類するような定義は策定・同意しかねるものである。

進化的意味

木は陸上植物のみに見られる植物の形である。水中の植物にもコンブのように大きくなるものはあるが、それらは柔軟で細長い構造をしており、幹のような構造を持たない。これは、水中では体を支える必要がないこと、逆に陸上ではそれを支える仕組みなしには生存できないことによる。陸上生活を行うために、植物は空気中で広げられる葉や、それを支える茎、それに体を固定し保持し、水を吸い上げる根を発達させた。そのことで体を空中に突き出すことができるようになったことが、今度は他者より高い位置に出てその上に葉を広げる競争を生み出したのであろう。そしてこれを大規模に行うための適応が、木質化や肥大成長であり、それを支える根もさらに発達し、そのような構造を獲得することで植物は地上でもっとも背の高い生物となり得た。また、胞子による繁殖から種子の形成に至る生殖方法の進化は、自由な水に依存しない生殖を確保する方向の進化といわれるが、同時にそのような構造が地表をはるかに離れた枝先に形成されるようになったことの影響も考えられる。

生態学的意味

樹木は、それが可能な条件下では、ほとんどの陸上環境において、その地で最も大きくなる植物である。樹木が生育すれば、それによって地面は覆われ、その下はそれがない場合とははるかに異なった環境となる。これによって形成される相観、あるいはそこに見られる生物群集森林という。したがって、樹木の生育は、ある面でその地域の生物環境の重要な特徴を形成する。気候生態系をそこに成立する森林の型で分けるのはそのためである。

また、樹木は、その体を支持するために太くて固い幹を持つ。この部分はその群集、あるいは生態系における生物量の大きな部分を占める。つまり、木は生産物を多量に蓄え、保持するという点で、極めて特異な生産者である。その資源の大部分はセルロースリグニンという、いずれも分解の困難な物質であり、しかも頑丈で緻密な構造を作るため、これをこなせる生物は少ない。菌糸をのばし、その表面で消化吸収を行なうという生活の型をもつ菌類は、この資源を利用して進化してきたという面がある。それを含めて、この資源を巡っては、分解者と呼ばれるような、独特の生物の関わりが見られる。そこに生息する動物にも、シロアリキクイムシなど、菌類や原生生物との共生関係を持つものがある。

樹木を下から見た様子

他方、太くて高く伸びる茎や、細かく分かれた枝葉は、他の生物にとっては複雑で多様な構造を提供するものであり、生物多様性の維持に大きな意味をもつ。また、森林において、生産層は樹木の上部に集中する。しかし、それら地上に離れ離れに存在する幹から伸びたものである。したがって、ここを生息の場とする場合、場所を変えようとすれば、飛ばない限りは、一旦地上におりなければならない。これは大変なエネルギーロスである。動物の飛行滑空の能力の発達は、ここにかかわる場合も多いと考えられる。

分類学的意味

樹木になる植物は、シダ植物種子植物のみである。コケ植物には樹木はない。

シダ植物には、古生代にはリンボクなど多数の樹木が存在したが、それらの子孫はごく小型の草本として生活している。現在のシダ類で大型になるのは、ヘゴなど、いわゆる木生シダである。ただし、その茎は肥大成長を行うことがなく[5]、下部は表面を覆う根に支えられている。

裸子植物の祖先とされるシダ種子植物も大型で、裸子植物のほとんどが木本である。中生代の地上を覆ったのは、裸子植物の森林であった。それ以降は、その後に出現した被子植物に、多くの場所で取って代わられ、裸子植物は、寒冷地などにその勢力の多くを保持している。

被子植物は木本のものも草本のものもあるが、どうやら草本の性質は木本から二次的に出現したと考えられている。特に双子葉植物に木本のものが多い。非常に多くの群があるが、森林の形成から見ると、ブナ科植物が重要である。

単子葉植物は大部分が草本である。樹木的外見を持つものはあるが、多くは普通の意味での木本はなく、いずれも特殊な構造をしている。バナナは茎ではなく偽茎で、葉鞘が重なり合ったものである。イネ科タケは草本のままであるが、木質化が強く、木本・草どちらとも取れる。ヤシ科タコノキ科などはより木本であるが、二次成長のための構造がないため、茎は太っていかない。センネンボクなどは特殊な維管束形成層を発達させ、肥大成長をするため、木本といっていい。

木と文化

木は古代から豊穣なイメージを提供している主題であり、現代でもそうありつづけている。

木は、自然の事物のうちでもっとも豊富でもっとも広範囲にわたる象徴をもつ主題のひとつだ、と飯島・濱谷らは指摘している[6]。人類のあらゆる時代、あらゆる地方の文化で木は主題として現れるが、それを大まかに要約すると、中心軸、生命豊穣、元祖のイメージ、に大別することも可能であると飯島らは指摘した[6]。分類のしかたは他にもいくつもあろうが、ここでは便宜的にそれを採用して説明を進めてみる。

中心軸

樹木は、多くの民族の文化において、地と天空をつなぐ axis mundi(宇宙軸、世界軸)と考えられた[6]ミルチア・エリアーデはこれを《中心のシンボリズム》と定義した[6]。こうした宇宙軸の観念は、紀元前4000-3000年ころにはすでにあり、樹木にかぎらずなどは、みな同様のシンボリズムを共有していたのである[6]。樹木というのも根が地下に張り枝は天空に伸びるためにそのシンボリズムを共有していたのである[6]

代表的なものとして扱われているものに、スカンジナビアに伝わる《エッダ》でうたわれたイグドラシルがある[6]

ガリアケルト人(フランス語ではゴール人)はオークゲルマン人菩提樹イスラム教徒オリーブインド人は「バニヤン」と呼ばれるイチジク、シベリアの原住民族はカラマツを、それぞれ聖なる木として崇拝していた[6]。これらの木は、世界の軸、つまり天と地が結ばれる場で神性の通り道としてされたのである[6]


生命力と豊穣のシンボル
カバラに記されている生命の樹

木は豊穣な生命力、生産力の象徴となってきた[6]。これは上述の中心のシンボリズムと一体化し分かち難いこともある(《セフィロトの木》、エデンの中心に立つ《生命の樹》など)[6]

インドでは、樹液地母神とされ、すべての木を流れ果実をみのらせるソーマあるいはアムリタである[6]。古代西アジアでは大地の女神イシュタルの恋人は植物神の木であり、イシュタルと木がヒエロス・ガモス(聖婚)を行うことによって大地は春の再生と冬の種子ごもりを繰り返す[6]

聖書キリスト教)では、エデンの中心に生命の樹知恵の樹が並んでいたが、これらはしばしば一本の木や並び立つ木として表現され、人間の生と象徴する[6]。またキリスト教では、十字架はしばしば永遠の生命を表す一本の木として表現されている[6]

元祖のイメージ

イザヤ書』の11章に描かれる《エッサイの木》はユダヤ人の歴史を象徴している[6]。そしてこのエッサイの木は中世のキリスト教で数多く表現されたイメージであり、エッサイの腰から生えた木には、マリアキリストが実っている[6]。ここから、ひとりの男の体から育つ木のイメージによって元祖や祖型およびそこから分岐・発展してゆくさまを図示する伝統が生じた[6]

現代の想像力への寄与
2000年の博覧会での建築物

木は近・現代でも人間の想像力をつねにかきたててきた[6]

シュルレアリストエルンストは森の連作を描いたが、これはロマン派中世神秘主義を継承したもので、文明に侵されない人間精神の根源を象徴するという[6]モンドリアンも、木の連作により宇宙的シンボリズムを抽象化した[6]クレーカンディンスキーは木を芸術的創造のプロセスにたとえた[6]

大江健三郎は木を主題とする一連の作品の中で宇宙樹のシンボリズムにふたたび力を与えた[6]

(上記にも関連する面もあるが)特に大きな樹木を神聖視して、これを祭り崇めることを巨木信仰という。天に届く木や、世界を支える木に関する神話伝説があちこちに見られる。単独の樹木ではなく、森林、あるいはそれを置く山を信仰の対象とする場合もある。

日本

日本では神社には鎮守の森があり、さらに神木がまつられることもある。

日本語の植物名は、サカキエノキヒノキケヤキツバキイブキミズキサツキアオキエゴノキマサキカキウツギヤナギヤドリギスギクヌギなど、「キ」または「ギ」で終わるものが少なくない。

関連

木の利用

素材

再び木材の良さが見直され始めた

人類にとって木は最も身近にある存在のひとつであり、木をそのまま、あるいは素材として、有史以前からさまざまな用途に使用してきた。

木の利用として最も一般的なものは、木を切り倒して木材とすることである。木材は建築材や家具、さまざまな道具の材料として利用される。材木の供給を求めての人工林も作られる。内装に無垢材を使用した家はシックハウス症候群対策に再び見直されはじめた。また、木の香りにはリラックス効果が認められている。

また、人類の歴史のはじめから、燃料としても利用されてきた。木をそのまま切ったのち乾燥させたものはと呼ばれ、人類のもっとも基本的な燃料の一つとなった。さらにこの木を蒸し焼きにして炭化することで、燃料としての有用性を高めたのが(木炭)である。木炭は石炭が燃料の主役となるまで世界で広く使用され、現代においても一部で使用されることがある。

現代社会では、の原料としての用途も重要である。木を基盤とした製材業・木材工業・製紙業はいずれも現代工業の中である程度の割合を占めている。また、木を焼くと初期の化学工業に重要であったを生産することができ、これが近代化以前のヨーロッパにおいてガラス工業が森林に立地する理由となった。木はこのほかにも、加熱処理を行うことで様々な化学物質を生産することができる。この処理は木炭生産に付随して行うことができ、19世紀にいたるまでは、木炭生産の副産物として酢酸メタノールアセトンテレピン油クレオソートピッチなどが生産されていた。こうして木材の利用から初期の化学工業が成立したが、やがてコークス生産時に出るコールタール石油に原料の座をとってかわられることとなった[7]

このほか、木を傷つけてそこから流れだす樹脂を使用することも広く行われている。こうした利用のうち最も重要なものはゴムの採取であり、電気機械や輸送機械の発展に非常に重要な役割を果たした。合成ゴムが開発されると天然ゴムの重要性は低下したが、現代においても採取は行われている。樹液の利用としては、ウルシの木から採取される塗料として漆器などに使用される。コルクガシは樹皮をコルクとして使用する。

食用

上記のような素材としての利用のほか、木をそのまま食料源とすることも広く行われる。木質化している部分は人間の食糧として使用することはできないが、若葉や果実、塊茎などさまざまな部分が人類の食糧として使用されてきた。なかでも木の食糧利用として最も重要なものは、果実を果物として使用することである。果物が収穫できる木(果樹)はしばしばのように一定の区画にひとつの種を集めて栽培され、その区画は果樹園と呼ばれる。果物を収穫するためにブドウリンゴ柑橘類などさまざまな果実が栽培されている。このほか、アーモンドピスタチオなどのように種子をナッツとして食用とすることも行われる。

直接食用のほか、アカシアなどの木はミツバチが集める蜂蜜の蜜源としても使用される。サトウカエデやサトウヤシのように、樹液から砂糖メープルシロップといった甘味料を採取できる木もある。シナモンの樹皮やコショウの種子のように、香辛料として使用される木もある。アブラヤシの木からパーム油ココヤシからココナッツオイルといった油脂を採取できる木もあれば、カカオコーヒーノキといった嗜好品生産になくてはならない木もある。

生きた木は木陰を作り、日除け、風除けとして利用できる他、果実や葉、樹液や幹が食糧となる種もあり、人家周辺に木を植える事は世界に広くおこなわれている。地域によってその有り様は様々である。

潤いと木陰を求めて樹木を栽培することもよく行なわれる。市街地の道路に沿って植栽されたものを街路樹、道路の他、河川や単に並んで生えているものは並木、庭の仕切りとするものを生垣、家を覆うように作られるのが屋敷林といったふうに、様々な呼び名がある。また、屋敷林とは別に、住居に付属する庭園庭木を植栽し、美観を整えることは広く行われている。こうした用途に使用するための樹木の栽培は、園芸農業の重要な一部分を占めている。世界の各地には開発や災害などから逃れ長い時間生き延びた巨木や老木が多く存在しており、一部は保護対象や観光名所となっている。

種類

樹木はその性質によって様々に分類される。落葉の有無については、一年中をつけている常緑樹と、季節により葉をすべて落とす落葉樹とに大別される。落葉樹は一年ごとにすべて葉を落とすが、常緑樹の葉も生えかわらないわけではなく、1年から5年で古い葉を落とす。常緑樹はさらに、広い葉をもつ常緑広葉樹(ツバキタブノキクスノキなど。常緑広葉樹林を造る)と、細い葉を持つ常緑針葉樹(耐寒性があり温帯北部から冷帯に分布する。モミトウヒなど)に分かれる。落葉樹も同様に、温帯に分布する落葉広葉樹(ブナミズナラなど)と冷帯北部に分布する落葉針葉樹(カラマツメタセコイアなど)に大別される。 また、葉の形状によっても葉の細い針葉樹と葉の広い大きく広葉樹とに大きく二分される。広葉樹は温暖な熱帯から温帯にかけて広がり、夏緑樹林、硬葉樹林照葉樹林などの樹林を形成する。針葉樹は寒冷な地域に適応した樹種であり、温帯北部から冷帯にかけて広大な針葉樹林を形成する。

脚注

  1. ^ a b c d e f g 平凡社『世界大百科事典』vol.6, p.528【き 木】岩槻邦男 執筆箇所。
  2. ^ a b c 『広辞苑』 第五版 p.620, 「き 【木・樹】」
  3. ^ 『岩波 生物学事典』第四版、p.1403【木本】
  4. ^ 尾池和夫 (2007年4月6日). “京都大学-大学の紹介/総長室 2007年4月6日 大学院入学式 式辞”. 2008年4月9日閲覧。
  5. ^ 「樹木学」p38 ピーター・トーマス 築地書館 2001年7月30日初版発行
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 平凡社『世界大百科事典』vol.6, p.528-529 【き 木】 飯島吉晴および濱谷稔夫 執筆箇所
  7. ^ 「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」p128-131 ルイス・ダートネル著 東郷えりか訳 河出書房新社 2015年6月30日初版発行

関連項目


ツリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/04/20 17:11 UTC 版)

(tree から転送)

ツリー (tree)

一般概念
  • 木、立ち木、樹木。→を参照。
※ 因みに、あくまで材料として着目する場合は別概念の「wood ウッド」や「材木」の記事を参照。
  • (家系)家族のメンバーの関係を樹木状に表現したもの →系図
科学
  • (数学)数学的概念を樹木になぞらえて表現したもの。根から枝、節、葉と分岐していく。樹形図。→木 (数学)
  • IT、情報工学
    • データの構造を樹木になぞらえて表現したもの。(数学の樹形図の応用)。→木構造 (データ構造)
    • 枝分かれを表現するためのGUIパーツ → ツリービュー。
  • (生物学)生物の進化の枝分かれを樹木になぞらえて表現したもの →系統樹


楽曲名、アルバム名 等





固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「tree」の関連用語

treeのお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング

画像から探す

戸邉直人

文散図小柄

ホペイ

ジェラールカマンベール・クラシック

アレスティングフック

球根水洗機

清水市代

スミ





treeのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
三省堂三省堂
Copyright (C) 2001-2017 Sanseido Co.,Ltd. All rights reserved.
株式会社 三省堂三省堂 Web Dictionary
日本オペレーションズ・リサーチ学会日本オペレーションズ・リサーチ学会
Copyright (C) 2017 (社)日本オペレーションズ・リサーチ学会 All rights reserved.
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの木 (改訂履歴)、ツリー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2017 Weblio RSS