資本 資本の概要

資本

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 08:21 UTC 版)

原義

一般的な用法、基本的な用法としては、事業活動を行うための元手となる金のことである[1]

また派生用法として、比喩的に仕事や生活を維持していくための収入、あるいはその元となるもののこと[1]

使用例としては「商売をはじめるため、商売の資本を集める」「サラリーマンは体が資本だ」など[1]

主流派経済学における資本

主流派経済学における資本は、土地労働と並ぶ生産要素のひとつである[1]

過去の生産活動が生み出した生産手段のストックであり、工場や機械などの固定資本、および原材料・仕掛品・出荷前製品などの流動資本からなる[1]

資本の蓄積によって、生産活動の拡大を図ることができる。

資本は多くの場合、以下の3つに分けられる。

金融資本
株式債券など
物的資本
建物や設備など
人的資本(ヒューマン・キャピタル
労働者の教育程度や健康状態など

マルクス経済学における資本

マルクス経済学では、資本を剰余価値を生むことにより自己増殖する価値の運動体と定義している[1]資本主義において資本が主体として再生産を繰り返すことで社会を維持、成長させる。

マルクス経済学において資本は大きく分けて、産業資本と商業資本などの現実資本(機能資本)、利子生み資本と分類される。

現実資本(機能資本)

産業資本

産業資本は以下のような資本に姿態変換(変態)し、生産過程で剰余価値を生み出し、増殖をしていく資本である。製造業などがこれに当たる。

貨幣資本
貨幣の形態を持った資本である。
生産資本
生産手段(工場施設など)かもしくは労働力などの形態を持った資本である。この資本において生産手段と労働力の結合によって生産過程が生み出され、剰余価値が発生する。
商品資本
生産過程を経て生み出された商品の形態を持った資本である。

この3種の資本は、まず貨幣資本にて工場や労働力といった生産資本を購入し、その手に入れた生産資本で商品を生産し、その商品を売却して貨幣を得るというように、貨幣資本から生産資本、生産資本から商品資本、そして商品資本から貨幣資本といった形で循環していく。このことを指して資本の循環と呼び、元の資本から循環が終わり再び元の資本形態に戻るまでのサイクルを資本の回転と呼ぶ。この循環は継続するプロセスであり、この過程で初期の投資が回収され、資本は増殖していく。

また生産過程において、価値が変わるか、変らないかによって二種類に規定される。

可変資本
労働力を購入するための資本である。
労働力は生産過程において、剰余価値を生み出すために、価値は可変であるとする。
不変資本
工場、原材料費、機械などの生産手段を購入するための資本である。
これらのものの生産に投じられた労働は、生産過程に入るその時点ではすでに、終了しておりしたがって、「死んだ労働」であるので、新たな価値を生み出さない。したがって価値は不変とされる。

商業資本

商業資本とは商品を生産過程で生み出すのではなく、産業資本が生産した商品資本の流通を媒介すること自体を商品とすることにより、利潤を得る資本である。小売などがこれに当たる。

商人資本

貿易商人が空間的な価値体系差異から剰余価値を生む資本形態(マルクス、宇野弘蔵柄谷行人は産業資本の前駆体として、これに注目した[2])。たとえば、温暖地域ではバナナは取れやすくありふれているので安価だが寒冷地域では貴重である。温暖地で安く買い寒冷地で高く売れば、不等価交換によらず商人は儲けられる。

利子生み資本

利子生み資本とは、資金そのものを資本家に貸し付けることにより、利子を介して利潤を得る形態の資本である。利子生み資本の例としては金融機関投資ファンドなどが挙げられる。

利子生み資本は何ら商品(物財・サービス)を生産しない形態の資本であり、その存在は産業資本に依存したものである。

会計学における資本

会計学上の資本は、以下のいくつか意味、もしくは略称があり、それぞれ全く違う意味となる。


  1. ^ a b c d e f g 松村明編『大辞林』三省堂
  2. ^ 『「世界史の構造」を読む』 (インスクリプト刊) 「協同組合と宇野経済学」


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