租税法 法解釈

租税法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/11 12:46 UTC 版)

法解釈

租税法は、国民(納税義務者)の財産権の侵害規範であり、租税法律主義の原則が働くため、その法解釈は原則として、法文に基づく文理解釈とすべきで、類推解釈拡張解釈を行うことは許されないとされる[31][32]。ただし、文理解釈により規定内容を明らかにすることが困難な場合において、その趣旨・目的に照らした目的論的解釈を行うこととなる[31][33][34]

租税法の解釈原理として、“in dubio pro fisco”(疑わしきは国庫の利益に/納税者の不利益に)と、“in dubio contra fiscum”(疑わしきは国庫の不利益に/納税者の利益に)という2つの見解がある[34][35]。前者を主張する者はおらず、その解釈原理も成り立たない[35][36]。後者については、法文の意義について疑わしい場合にその解釈することを放棄することは、その法を適用する者の義務を放棄することであり、租税法の解釈原理としては成り立たないとされるが[37]、租税法の解釈に関して1つの法令に対し複数の解釈が成り立ちどちらかを選択する必要が出た場合には、租税法律主義(課税要件明確主義)に反していることになりその規定が無効となるため、結果的に後者の解釈原理が成り立つこととなる[38][39]

1976年末に廃止された西ドイツの「旧租税調整法(ドイツ語: Steueranpassungsgesetz[40]」の第1条第2項では、「租税法律の解釈に当たっては、国民思想、租税法律の目的及び経済的意義、並びに諸関係の発展を考慮しなければならない」と規定されていた[34][41][注釈 4]。この租税法の解釈にあたって経済的意義を考慮しなければならないという考え方は、「経済的観察法ドイツ語版」と呼ばれる[34]

概念

租税は市民生活秩序を前提とする私的経済取引を対象とするものであるため、租税法ではそうしたものを対象とする他の法律の用語や概念を用いて規定することも多く、租税法で用いる概念には借用概念(他の法分野の概念)と固有概念(租税法独自の概念)の2種類がある[42][43][44]

借用概念

借用概念とは、他の法分野(特に民法商法等の私法)で用いられる概念をいう[43]。借用概念については、それを他の法分野と同じ意義で用いるか、租税法の立場から異なる意義で用いるかが問題となる[45]。ドイツでは、第二次世界大戦後、原則として同じ意義として解釈するべきであるという見解が支配的である[45]。日本では、統一説・独立説・目的適合説の3つの見解が対立しているが、租税法が他の(本来の)法分野の概念を取り込んで用いている以上は、本来の法分野の意義を知っていることが前提となり、法的安定性の見地からは、異なる意義を用いる旨の特別の規定がある場合を除き、原則として本来の法分野と同じ意義に解釈することが好ましいとされる[45][46]

固有概念

固有概念とは、借用概念に対する租税法独自の概念をいう[43]。固有概念は、他の法分野とは無関係に租税法独自の見地からその意義を決められる[47]。ただし、固有概念の意義は客観的に捉えられるものでなければならず、課税上の合理性が存在しない固有概念は、日本国憲法第14条等に違反するため無効とされる[44]




注釈

  1. ^ 個別の租税法の内容は他の独立した記事で説明することになるので、当記事で取り扱う内容は主にこの部分に関するものが中心となる。
  2. ^ 一般に政令は「施行令」、省令は「施行規則」と呼ばれる。ただし、1964年(昭和39年)以前は政令を「施行規則」、省令を「施行細則」と呼んでいた[22]
  3. ^ ただし、通達に基づいて課税処分が行われた場合であっても、その通達の内容が法律の正しい解釈と合致している場合には、法律に基づいて行われた課税処分とされる[25]
  4. ^ 旧ドイツ租税調整法は、1977年の「租税基本法(Abgabenordnung)」の改正に際して吸収統一され、この規定は承継されなかった[41]

出典

  1. ^ 国税庁、「興銀訴訟最高裁判決を真摯に受け止めたい」(2005.4.6)”. 株式会社ロータス21. 2020年6月10日閲覧。
  2. ^ 金子 2019, pp. 30-31.
  3. ^ a b 清永 2013, pp. 11-13.
  4. ^ 北野 2020, p. 50.
  5. ^ a b c d 金子 2019, p. 27.
  6. ^ a b c 清永 2013, p. 58.
  7. ^ a b 金子 2019, p. 28.
  8. ^ 清永 2013, p. 59.
  9. ^ 金子 2019, p. 29.
  10. ^ 金子 2019, p. 31.
  11. ^ a b c 金子 2019, p. 32.
  12. ^ 金子 2019, p. 80.
  13. ^ a b c 清永 2013, p. 28.
  14. ^ 金子 2019, p. 89.
  15. ^ 金子 2019, p. 78.
  16. ^ 水野 2011, p. 33.
  17. ^ 金子 2019, p. 98.
  18. ^ 清永 2013, p. 29.
  19. ^ 金子 2019, pp. 107-119.
  20. ^ 清永 2013, pp. 17-22.
  21. ^ 清永 2013, p. 17.
  22. ^ 清永 2013, p. 19.
  23. ^ 清永 2013, pp. 21-22.
  24. ^ 金子 2019, pp. 115-119.
  25. ^ a b 中里ほか 2020, p. 3.
  26. ^ 須田 1998, p. 423.
  27. ^ 須田 1998, pp. 5-6.
  28. ^ U.S. Code: Title 26. INTERNAL REVENUE CODE” (英語). Legal Information Institute. 2020年6月10日閲覧。
  29. ^ 金子 2019, pp. 119-122.
  30. ^ 清永 2013, pp. 23-24.
  31. ^ a b 清永 2013, p. 35.
  32. ^ 金子 2019, p. 123.
  33. ^ 金子ほか 2016, p. 52.
  34. ^ a b c d 金子 2019, p. 124.
  35. ^ a b 清永 2013, p. 36.
  36. ^ 金子 2019, pp. 124-125.
  37. ^ 金子 2019, p. 125.
  38. ^ 清永 2013, p. 37.
  39. ^ 北野 2020, p. 81.
  40. ^ Vollständiger Gesetzestext 1934 S. 925 - 941” (ドイツ語). ALEX – Historische Rechts- und Gesetzestexte Online. 2020年12月10日閲覧。
  41. ^ a b 金子ほか 2016, p. 54.
  42. ^ 清永 2013, p. 39.
  43. ^ a b c 金子 2019, p. 126.
  44. ^ a b 北野 2020, p. 176.
  45. ^ a b c 金子 2019, p. 127.
  46. ^ 清永 2013, p. 40.
  47. ^ 金子 2019, p. 129.
  48. ^ 清永 2013, pp. 24-25.
  49. ^ a b 北野 2020, p. 8.
  50. ^ a b 金子 2019, p. 26.
  51. ^ ラムザイヤー & 中里 2010, p. 56.
  52. ^ ラムザイヤー & 中里 2010, p. 56-57.
  53. ^ 清永 2013, p. 25.
  54. ^ 北野 2020, p. 1.
  55. ^ a b 清永 2013, p. 26.
  56. ^ 金子 2019, p. 38.
  57. ^ a b 金子 2019, p. 39.
  58. ^ a b c 清永 2013, p. 27.
  59. ^ 金子 2019, p. 36.
  60. ^ 金子 2019, p. 35.
  61. ^ 北野 2020, p. 2.
  62. ^ 金子 2019, p. 37.
  63. ^ 北野 2020, p. 5.
  64. ^ 金子 2019, pp. 549-550.
  65. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 1-2.
  66. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 3-4.
  67. ^ 藤本 2005, pp. 4.
  68. ^ a b 藤本 2005, pp. 5.
  69. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 9-11.
  70. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, p. 8.
  71. ^ 金子 2019, p. 552.
  72. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, p. 19.
  73. ^ 本庄, 田井 & 関口 2018, pp. 11-18.
  74. ^ 租税条約に関する資料”. 財務省. 2020年11月26日閲覧。
  75. ^ 新司法試験の仕組み”. 法務省. 2020年9月5日閲覧。
  76. ^ 公認会計士試験に関するQ&A”. 公認会計士・監査審査会. 2020年9月5日閲覧。
  77. ^ 税理士試験の概要”. 国税庁. 2020年9月5日閲覧。
  78. ^ 8003 通関士試験の試験科目(カスタムスアンサー)”. 税関. 2020年9月5日閲覧。






租税法と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「租税法」の関連用語

租税法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



租税法のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの租税法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS