租税条約の法的効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 19:21 UTC 版)
日本においては締結された租税条約は国内法に優先して効力を有する。この優先の意味は、国内法の効力の一部を減殺するということである。租税条約が国内法よりも優先的な効力を有するからといって、そのような条約が国内において直接適用されるとは限らず(いわゆる、自力執行条約の問題)、租税条約の規定の中には直接適用が可能な規定と、直接適用ができず条約の国内的執行のための国内法が必要であると考えられる規定とが混在している。たとえば、租税特別措置法66条の4(移転価格税制)は、OECDモデル条約でいえば9条にあたる特殊関連企業条項の国内的執行のための規定であると解される(すなわち、9条は自力執行できない規定であると解される)。 また、租税条約は、当事国間の二重課税の防止、租税回避脱税の予防のための条約であるから、租税条約だけを根拠として課税することはできない。租税条約は、国内法上課税しうることを前提に、二重課税排除を目的に当事国間で課税権を譲歩し、二重課税を排除することを目的とする。これは、上述の租税条約と国内租税立法の効力関係とは無関係である。 アメリカ合衆国連邦憲法の下では、合衆国連邦憲法が最高法規であって、連邦議会制定法も対外条約も連邦憲法に劣位し、制定法と条約は対等の関係にある。従って、仮に租税条約を締結した後にその租税条約の恩典効果を減殺させるような国内立法がなされた場合には、後法優先の原則によりその国内法がそのまま適用されてしまういわゆる条約のオーバーライドの問題がある。これは、コモンロー諸国に見られる現象ではなく、アメリカ合衆国連邦憲法に固有の現象であって、英国では国会主権原理の下、内閣が締結した条約を国内で執行するためには国内立法が必要であるとの、国内法と条約の二元論に基づく個別的受容方式がとられている。コモンロー諸国だからといって条約の国内法上の位置づけは同じではない。
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