日本のダムの歴史
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昭和中期(1955年-1964年)
経済成長に伴い道路・鉄道・港湾を始めさまざまなインフラストラクチャー整備が大規模に計画、着手されていった。ダム事業においても、この時期は日本のダム事業史に残る大規模プロジェクトが多く手掛けられた時期でもあった。
大ダム時代
日本のダム技術は戦後に入り欧米の最新技術が導入されることでさらに発展した。ダムの型式にも新たな型式が登場した。
岩石や土を積み上げて建設されるロックフィルダムは設計理論の未確立、洪水処理への不安、土木機械の未成熟による岩石盛り立ての困難さなどにより戦前は建設されなかった。特に粘土など透水性の低い土質をダム本体中心部に据えて水を遮る土質遮水壁型ロックフィルダムは温暖湿潤気候の日本において、最適含水比による土質配合が不可能とされていたが最新土木技術導入により、ロックフィルダムが日本でも建設され始めた[176]。1947年(昭和22年)日本初のロックフィルダム施工例として北上川五大ダムの一つである石淵ダム(胆沢川。53.0メートル)の建設が岩手県で開始され、1951年(昭和26年)には完成例として日本初となる小渕防災溜池(久々利川。20.5メートル)が岐阜県で完成した[176][177]。石淵・小渕両ダムはダム上流部にコンクリートを舗装して水を遮るコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダムだったが、土質遮水壁型についても1960年(昭和35年)に完成した岩手県の岩洞ダム(丹藤川。42.0メートル)が第一号として建設され、以後日本におけるロックフィルダムの主流となる[176]。
アーチ式コンクリートダムはダム本体のコンクリート量を節減できる点で経済的な型式だが、莫大な水圧を支えるための強固なダム両岸岩盤の存在が建設の絶対条件であり[注 17]、洪水処理の不安に加え世界有数の地震大国である日本において建設への技術的不安があり躊躇されていた。アーチ式堰堤としては1909年(明治42年)に完成した大湊第一水源地堰堤(宇田川)が日本初であるが高さ7.0メートルのごく小規模なもので、高さ15メートルを超えるアーチダムとしては島根県に建設された三成ダム(斐伊川。35.0メートル)が初である[176]。しかし高さが100メートルを超えるアーチダムの建設は不安を払拭できなかった。九州電力が宮崎県の耳川最上流部に建設した上椎葉ダムは、当初重力式コンクリートダムとして建設される予定であったが、総司令部の下部機関であるアメリカ合衆国海外技術顧問団 (OCI) が両側基礎岩盤の堅固さを理由にアーチダムの建設を提言。以後 OCI の助言の下に建設を進め高さ110.0メートルのアーチダムとして1955年(昭和30年)に完成した[178]。続いて宮城県に建設された鳴子ダム(江合川。94.0メートル)は日本人だけで手掛けられ[179]、電子計算機の導入による迅速な設計や岩盤力学の発展もあってアーチダムの知見が日本でも深まり100メートル級の大規模アーチダムが盛んに建設された[176]。さらにアーチダムの応用形として重力式コンクリートダムの特徴も兼備した重力式アーチダムも埼玉県に1961年(昭和36年)建設された二瀬ダム(荒川。95.0メートル)以降大規模なダムが建設された[180][注 18]。
中空重力式コンクリートダムはコンクリート量を節減しつつダム本体の安定性を確保できる経済的な型式としてイタリアより導入され、中部電力が1957年(昭和32年)に井川ダム(大井川。103.6メートル)を完成させたのが日本初である[176]。中部電力は大井川において井川ダム以後も1962年(昭和37年)に同型式として当時世界最大の高さを有した畑薙第一ダム(125.0メートル)と畑薙第二ダム(69.0メートル)を建設しており、大井川は日本で13か所しかない中空重力ダムが3か所、しかも三連続で建設されている日本唯一の例である[181][182]。このほか複数のダム型式の特徴を複合させたコンバインダムは、1953年(昭和28年)岩手県の石羽根ダム(和賀川)が第一号として完成している[183]。
これらダム技術の急速な発展は、日本に大ダム建設時代を到来させた。1955年に完成した丸山ダム(木曽川。98.2メートル)は日本における100メートル級大ダムの嚆矢となった[184]。1956年(昭和31年)完成した佐久間ダム(天竜川。155.5メートル)はドリルジャンボなど大型土木機械による本格的機械化工法の導入・工事現場における安全管理・国際競争入札の導入など日本における大型土木事業の基礎を築き、日本の重電・建機メーカーに技術的な自信を与えて国外へ雄飛する契機を作るなど日本土木史に残る「金字塔」となった[185]。東京都水道局が1957年に完成させた多摩川の小河内ダム(149.0メートル)は世界最大級の水道用ダムとして、首都・東京の重要な水源となった[186]。北陸電力が常願寺川有峰発電計画の中心事業として1959年(昭和34年)に完成させた有峰ダム(和田川。140.0メートル)は国際復興開発銀行の支援により建設され[187]、1960年には日本最大の重力式コンクリートダムとして完成以来記録が破られていない奥只見ダム(只見川。157.0メートル)[188]、1961年には日本初の100メートル級大規模ロックフィルダムであり「20世紀のピラミッド」と形容された御母衣ダム(庄川。131.0メートル)が完成した[189]。
そして日本最大の高さ・186.0メートルを有するのが黒部川の黒部ダムである。人跡未踏の黒部峡谷に大正時代から計画された黒部ダムは当時の関西電力社長・太田垣士郎の決断で1956年より建設が開始された。しかし物資を運搬するために建設された長野県大町市からダムサイトを結ぶ関電トンネルの掘削に始まる工事は難工事の連続であり、険阻な黒部峡谷は度重なる労働災害を招いた。さらに1959年12月フランスでマルパッセダム決壊事故が発生し事業に融資する国際復興開発銀行が高さの変更を勧告するなど困難が連続した。関西電力の年間電力収入の半分に当たる約513億円[注 19] の事業費、延べ約1000万人におよぶ従事者を動員した黒部ダムは1963年(昭和38年)に完成した。立山黒部アルペンルートの中心的な観光地として年間百万人の観光客を集める黒部ダムは、石原裕次郎・三船敏郎主演の『黒部の太陽』[注 20] や織田裕二主演の『ホワイトアウト』において映画の舞台となっている[190]。
水資源の開発
河水統制事業に始まる一連の河川総合開発事業は、一部の例外を除き当初の主要な目的は治水(洪水調節)と農地への灌漑、水力発電が主体であったが、1950年(昭和25年)の国土総合開発法に基づく特定地域総合開発計画や各河川の河川総合開発事業において、治水と灌漑、水力発電開発に加えて上水道や工業用水道の供給を目的とした事業が盛り込まれている。水道専用ダムについては、日米和親条約以降の開港に伴う港湾都市の人口増加やコレラなど水系感染症の蔓延予防などで上水道の整備が不可欠になったことで明治時代に建設されたが、水道関連法規として1890年(明治23年)に成立した水道条例は水道敷設に重点を置いたもので、法整備は遅れていた。戦後の特需景気以降日本の重工業は急成長を遂げ、四大工業地帯を中心とする工業地帯が発展。工場の増加と生産性向上に伴い工業用水需要が次第にひっ迫していった。当時工業用水は地下水に依存していたことで日本各地で地盤沈下が社会問題化、また地下水だけでは最早工業用水需要を賄うことが出来ず、京浜工業地帯・阪神工業地帯・北九州工業地帯を中心に深刻な用水不足が生じた。また経済発展や食糧供給の好転により人口も急増、特に大都市圏の人口増加が顕著となり上水道需要もひっ迫。1964年(昭和39年)の通称「東京沙漠」と呼ばれる東京都大渇水など各地で水不足が深刻となった[191][192]。
このため上水道や工業用水道を安定的に確保するための水資源整備が強く求められた。特に首都圏における水資源整備については政府や関係する省庁以外でも具体的なプランの発表があった。戦後日本共産党書記長となった徳田球一は1949年(昭和24年)、『利根川水系の綜合改革 社会主義建設の礎石』という論文をパンフレットで発表。徳田はこの中で利根川と荒川、多摩川を大運河で連結して利根川上流部に建設する多数のダムから用水を多摩川まで導水し、東京の水需要を好転させるべきであると主張した[193]。また電気事業再編成を主導した松永安左エ門は1956年に政財界・学界の有力者を集めて産業計画会議を発足させたが、主要な提言の一つである沼田ダム計画(利根川。後述)において利根川の水行政を一元化させるため「利根川開発庁」を設置すべきであると主張している[194]。こうして水資源の開発は河川事業において治水や電気事業に並ぶ重要な関心事になりつつあった。
水道行政は内務省・建設省が河川・建設行政の一元化を狙い、水質保全を重視する所管官庁の厚生省との間で激しく対立したが、最終的に1957年1月石橋内閣において厚生省が水道行政を所管することで決着し水道法が成立した[195]。しかし水資源開発に関連する新法案の制定を巡り再び各省庁間における対立が激しくなる。1959年厚生省は「水道用水公団案」を発表し京阪神・北九州において広域水資源開発を構想した[196]。すると1960年には建設省が「水資源開発公団案」、農林省が「水利開発管理公団案」、通商産業省が「工業用水公団案」を発表してそれぞれの省庁が所管する事業中心の特殊法人設立を主張した。一時は暗礁に乗り上げるかと思われたが自由民主党水資源特別委員会の委員長だった田中角栄が池田勇人内閣総理大臣や大平正芳内閣官房長官を説得し、自由民主党は建設省案を支持したが残る三省は伊東正義農林省農地局長らを中心に「用水事業公団案」を提出し再度対立する。このため福田赳夫自由民主党政務調査会長が2公団並立を政府に提案し、調整されたが財政面で大蔵省が2本立てに反対し一本化を要求[197]。最終的に総理大臣裁定により1961年「水資源開発公団案」が政府案としてまとめられ、第38回通常国会で審議されたが審議未了となった。続く第39回臨時国会の衆議院建設委員会で再び上程されたが、この時日本社会党が1955年に設立された愛知用水公団の統合を主張。最終的に自由民主党と民社党による原案に日本社会党の主張する「愛知用水公団の可及的速やかな統合」が附帯決議として加わり、衆議院・参議院両院で三党の賛成により10月に可決成立。水資源開発促進法が11月に、水資源開発公団法が翌1962年2月に公布されて5月に特殊法人である水資源開発公団が発足した[196]。独立行政法人水資源機構の前身である。
公団は建設・農林・厚生・通商産業四省を主務官庁とし、内閣総理大臣が水資源開発において緊急に実施する必要がある河川を関係各所と協議の上で「水資源開発水系」に指定。水資源開発基本計画(フルプラン)を作成して河川広域総合開発を実施することを目的にしている[198]。発足と同時に利根川水系と淀川水系が水資源開発水系に指定され、建設省が施工していた矢木沢ダム(利根川)・下久保ダム(神流川)・高山ダム(名張川)が公団に事業移管された。公団は矢木沢ダムを水源として武蔵水路・朝霞水路を通じて利根川から荒川へ導水して東京都に水道用水を供給する利根導水路事業を実施、1964年の東京オリンピック直前に完成させた。同年には筑後川水系が水資源開発水系に指定され、江川ダム(小石原川)が計画された。1965年(昭和40年)には木曽川水系が開発水系に指定され、日本社会党による附帯決議に示された愛知用水公団の統合が1968年(昭和43年)に実現し愛知用水と豊川用水が公団の管理下に入ると共に、総合開発を巡って各省庁で対立していた岩屋ダム(馬瀬川)が公団事業として計画された。1966年(昭和41年)には四国地方最大の河川・吉野川水系が開発水系に指定され、吉野川総合開発計画の中心である早明浦ダム(吉野川)が建設省より事業移管され、池田ダム(吉野川)と香川用水が計画された。1974年(昭和49年)には荒川水系が開発水系に指定され、利根川と一体化した水資源開発が計画され後に滝沢ダム(中津川)と浦山ダム(浦山川)が建設省より事業移管された[199]。最後に豊川水系が1990年(平成2年)に開発水系に指定され、豊川用水の管理と改築が開始されている[200]。
公団が手掛けた最初のダム事業は1970年(昭和45年)に完成した青蓮寺ダム(青蓮寺川)である[201] が、矢木沢ダムなど建設省から事業が移管されて建設されたダムも多い。公団による水資源開発により、四国四県の水瓶として「四国のいのち」と称される早明浦ダムや[202]、首都・東京の重要な水源となった矢木沢ダム、東海三県の水瓶である牧尾ダム(王滝川)や岩屋ダム[203]、1978年(昭和53年)の福岡市大渇水で緊急的に給水を実施した寺内ダム(佐田川)[204] など、地域の重要な水源として機能しているダムが多い。しかし、特に2000年代以降これらの水資源整備を実施しても解消できない水不足が発生している(後述)。
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公団が手掛けた最初のダム、青蓮寺ダム(青蓮寺川)。1970年完成。
ダム関連法規の整備
河川総合開発事業や各事業者によるダム開発が進むに連れ、1896年(明治29年)に成立した旧河川法ではいよいよ対応が難しくなった。そもそも旧河川法は堤防による治水に重点を置いた法律であり、河川管理も区間毎に管理者が異なる区間主義を採用していた。このため物部論文に基づく河川一貫開発・管理の概念で実施されている河川総合開発事業との間に根本的な食い違いが生じていた。またダム建設に伴う費用配分や管理形態も、大正時代の単一事業者によるダム事業と異なり、複数の事業者が関わる多目的ダムの建設が多くなることで所有権の問題が新たに発生した。加えて日本国憲法が施行されたことにより国の行政や制度が大変革し、それに合致した新制度を河川行政に導入しなければならないという現実も生じていた[205]。
まず変更が行われたのは多目的ダムに関する法整備である。旧河川法ではダムなどの河川管理施設[注 21] は「河川の付属物」と認定されるが、認定されると管理は原則河川管理者である建設大臣(国土交通大臣。以下同じ)または都道府県知事が行い、私権は排除される。しかし複数の管理者による事業である多目的ダムでは私権の排除ができないため、民法第244条-262条に定められた共有物持分規定に則った管理が定められた。この方法では負担額に応じてダム所有権が割り振られ管理は共同管理となるが、河川管理者の専管事項である治水目的の責任所在が不明確になる欠点があった。河川法では河川管理者以外に洪水調節を委ねることはできないため、対策として旧河川法に付属する省令として1954年に昭和29年建設省令第11号、(旧)河川法第4条第2項の規定に基づく共同施設に関する省令が発令された。この省令では「河川の付属物」における私権の排除という規定を除外することで民法の共有物規定に基づき管理される多目的ダムも「河川の付属物」に含め、管理を原則河川管理者に一元化することで治水事業を容易にさせるという目的があった。しかし付属物と認定する際には費用を負担した共同事業者の同意が必要で、同意が得られないとこの省令は無効になるという欠点が新たに生じた[205]。こうした共同施設としてのダム管理における欠点は主に以下の四点に集約される[206]。
- 建設工事の受託・委託契約を事業者毎に取る必要が生じる。このため会計が複数立てとなって工事の能率が阻害される。
- 労働災害など万が一における責任の所在が不明確になる。
- 治水目的が重要な位置を占める多目的ダムでは治水事業の一元的な管理を河川管理者が行使できず、災害の際に重大な結果をもたらす危険性がある。
- 巨額な資産を投資する重要な財産でありながら、共有持分についての登記や担保を行う方法がない。
殊に建設省直轄ダム事業の場合は、こうした弊害が強く現れるために法整備が必要となった。上記の諸問題を解決するため1957年に施行されたのが特定多目的ダム法である。同法は建設大臣が事業者である直轄ダム事業において、計画・建設・管理を一貫して建設大臣が行い、直轄ダムの所有権は建設大臣に帰属することが明記された。これにより従来の民法における共有物持分規定は適用されず、複数の利水事業者が事業に参加しても所有権は認められない。その代わりとして事業に参加する利水事業者には「多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利」すなわちダム使用権が設定された。この権利は不動産の権利規定を準用しており、抵当権の設定については登記簿の代わりにダム使用登録簿を作成して登録する。これにより権利の移動を明確にして担保価値を把握し易くした。ただし権利の移動に関しては建設大臣の許可が必要である[205]。また経理的な問題に関しては特定多目的ダム建設工事特別会計が設置され、財源に関する制度的保障が確立されただけでなく道路や港湾などの特別会計の先駆となった。特定多目的ダム法が適用された第一号のダムは、天竜東三河特定地域総合開発計画で建設され1959年に完成した長野県の美和ダム(三峰川)である[207]。特定多目的ダム法成立以後、建設省(国土交通省)によって建設されるほとんどの多目的ダムは同法に基づき建設され、これらのダムは特定多目的ダムと呼ばれる。ただし同法成立以前に完成した直轄ダムについては遡及して適用されず、直轄ダムの内の幾つかは、同法の適用を受けていないダムもある(後述)。
そして河川総合開発の発展により時代に合わなくなった旧河川法自体の改正が1964年に成立、翌1965年に施行された。旧河川法と対比して新河川法と呼ぶ。最大の特徴は物部論文が主張していた河川一貫開発・管理を法制化したことである。まず河川管理について、旧河川法で規定されていた河川法適用河川・河川法準用河川の区分を廃止、原則国が管理する一級河川(水系)と都道府県が管理する二級河川(水系)に区分した。ただし一級河川については、一定の区間について都道府県に管理を委任できる(指定区間)と定めたため、特定多目的ダム法の適用範囲は、一級河川で国が管理する区間(指定外区間)に建設される直轄ダムに適用される。またダムの基準についても、従来の河川堰堤規則や発電用高堰堤規則といった戦前に発令された省令を廃止し、第3款第44条で「基礎岩盤からの高さが15メートル以上」と法律上で明確に規定した[208][209]。ただし河川法におけるダムの基準は利水目的のダムに対しての基準であり、多目的ダムを含む治水目的のダムは適用外だった。治水目的のダムに河川法第44条で定められたダムの基準が援用されたのは、1976年(昭和51年)に政令第199号として制定された河川管理施設等構造令である。この二つの法令によりダムの基準が確立し、高さ15メートル以下の河川管理施設はたとえ外観がダムであっても堰の扱いとなり、砂防堰堤はたとえ15メートル以上の高さで砂防以外の目的を持っていたとしても河川法や河川管理施設等構造令におけるダムとしては認められなくなった[210]。
また特定多目的ダム法・水資源開発公団法(水資源機構法)に基づくダム以外の多目的ダムについては第3条の河川管理施設と、第1款第26条に規定された河川工作物[注 22] が相互に効用を兼ねる兼用工作物と解釈され、第17条において管理者同士の協議で工事、維持管理、操作ができると規定されている[209]。この兼用工作物に当たるダムとしては地方自治体が国庫の補助を受けて建設する補助多目的ダム、特定多目的ダムが施行される前に完成した直轄ダムのほか、利水事業者のダム事業に建設省が後乗りで事業に参加した多目的ダムが該当する。例えば九頭竜ダム(九頭竜川)、手取川ダム(手取川)、新豊根ダム(大入川)は元々電源開発が発電用として計画していたものに、治水上の重要性から建設省が追加で事業に参加したため建設大臣が施工主体であっても兼用工作物となる。また地方自治体から直轄管理に移管された長安口ダム(那賀川)・品木ダム(湯川)なども同じである。兼用工作物や治水目的に限定されている立野ダム(白川)などの直轄ダム事業は「直轄河川総合開発事業」として扱われる[211][212][213]。
注釈
- ^ 長崎大水害を契機に本河内高部・低部ダム、西山ダムはダム再開発事業を行い洪水調節目的を加えた多目的ダムとなったが、旧堤体は保存されている。
- ^ 長崎水害緊急ダム事業に伴う本河内高部ダム再開発(治水目的追加)により直上流部に重力式コンクリートダムを建設し機能を移行した。画面手前は新ダムの余水吐。
- ^ 長崎水害緊急ダム事業に伴う西山ダム再開発(治水目的追加)により貯水池内に水没したが、堤体は保存されている。
- ^ 志津川ダムとも呼ばれた。1964年に天ヶ瀬ダムが直下流に完成したことで水没し、非現存。
- ^ 長崎県には同名の小ヶ倉ダムが別な場所にある。もう一つの小ヶ倉ダムは諫早市に1975年完成したアースダムである。
- ^ 調整池自体は近くの場所にアースダムとして再建。通称杉の木貯水池として供用され、旧調整池跡は公園になっている。
- ^ 事業が難航して思案に暮れている八田をモチーフとする。
- ^ 1965年に韓国政府がダム再開発事業を行い、旧ダムは水没している。
- ^ 気象庁はこの災害について正式な災害名を付けていない。災害名は土木学会の調査報告書の基づき便宜的に記載する。
- ^ 1960年に重力式コンクリートダムとして再建されている。
- ^ 北上川、江合川・鳴瀬川、最上川、利根川、信濃川、常願寺川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川の10河川。江合川は北上川水系であるが、江合川放水路で鳴瀬川と連結しているため一括りになっている。
- ^ 当時の赤川は最上川の支流であり、赤川放水路完成により最上川水系と分離して独立する。
- ^ 1956年の完成後、管理を高知県に移管させ、現在に至る。
- ^ 1973年、需要の低下と発電所の故障を契機にダムは廃止され、以降砂防ダムとして機能している。
- ^ 北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力。沖縄電力は1972年(昭和47年)の沖縄返還以後に誕生した。
- ^ 胆沢ダム完成に伴い旧発電所は廃止され、新しい胆沢第一発電所に機能が移管されている。
- ^ これが欠如したことでフランスのマルパッセダムは決壊している。
- ^ 完成例としては1930年宮崎県に建設された芋洗谷ダム(芋洗谷川)が最初である。
- ^ 現在の貨幣価値に直すと1兆円以上の額となる。
- ^ 1968年公開。公開終了後石原の意向で封印されていたが、ダム完成50周年を機に封印が解かれDVDが発売された。
- ^ 現行の河川法ではダムをはじめ堰、水門、堤防、護岸、床止め、樹林帯など河川の流水によって生ずる公利の増進、水害の除却または軽減する効用を有する施設を指す。
- ^ ダムであれば、発電専用・灌漑専用・水道専用ダムがこれに当たる。
- ^ 1977年にダム再開発事業が実施され、貯水を行う多目的ダムとなる。
- ^ 1981年に第二沼沢発電所の運転開始に伴い廃止。
- ^ 1967年に管理は群馬県から建設省関東地方建設局(国土交通省関東地方整備局)に移管された。
- ^ 当時は財団法人ダム水源地環境整備センター。
出典
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- 日本のダムの歴史のページへのリンク