旅行ガイドブック 戦争と旅行ガイドブック

旅行ガイドブック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/09 13:29 UTC 版)

戦争と旅行ガイドブック

旅行ガイドブックは、観光という平和な時間の中で成り立つ出版ビジネスである。しかし、ガイドブックはその地域情報や詳細な地図を有するため、戦争にも翻弄された。

『日本案内記』のシリーズ最後に刊行した「北海道編」は、戦時体制による情報統制の影響を受けた。検閲により削除を命じられた部分が空欄のまま印刷されて、1936年(昭和11年)に出版された。

第二次世界大戦中の1940年(昭和15年)4月にドイツ軍がノルウェー侵攻を実施する際、最高司令官に任命されたニコラウス・フォン・ファルケンホルストがその最初の仕事として行ったことは、対象地域について基礎的な知識を得る目的で『ベデカー』を購入したことであった[8]

1944年(昭和19年)、ノルマンディー上陸作戦を準備している際、アメリカ軍は前線に対して1939年(昭和14年)版『ギド・ミシュラン』を極秘扱いで写真電送した。

ベデカー爆撃

第二次世界大戦中の1942年4月から5月にかけ、ドイツ軍はイギリスのカンタベリーヨークバースエクセターへの爆撃を行った(連合国軍によるリューベック爆撃への報復とされた)。この時の爆撃標的は(軍事施設ではなく)『ベデカー』の「イギリス案内」にあった名所旧跡地を示す星印から選ばれた[注 10]。イギリスは、ベデカー爆撃(Baedeker-Raid)という言葉でこの行為を非難した。

脚注

参考文献

関連項目


注釈

  1. ^ ベデカーの『ライン川案内』は何回か改訂版がでており、どれを最初にするかでマレーとベデカーどちらが最初だったか判断が分かれている。マレー側はベデカーのライン川案内はマレーのガイドブック形式の盗用と批判しているが、マレーとベデカー両方を近代旅行ガイドブックの始祖とすることがほとんどである。
  2. ^ 江戸時代末期に日本を訪れたアーネスト・サトウは道中記のことを日本の『マレー』と表している。『一外交官の見た明治維新』(上・下)岩波文庫
  3. ^ 後に博文館に編集が変わる
  4. ^ 公式の邦語名称は無い。他に『鉄道院版英文東亜交通案内』、『公認東亜案内』などの表記例がある。
  5. ^ 第一次世界大戦後に改訂されたドイツ語版「スイス案内」には、広告が20ページ掲載された。しかし、後に再び広告非掲載の方針に戻った。
  6. ^ 有料となった1920年以降、広告非掲載化
  7. ^ 1966年パリで人気のあったルレー・デ・ポルクロールのシェフだったアラン・ジックが自殺。ミシュランの評価を気にしたのが原因と噂された。
  8. ^ 天才フランス料理人ともてはやされたベルナール・ロワゾーは、2003年自殺。自殺時期がガイドブックの改訂時期と重なったため、ミシュランなどのガイドブックの評価を気にしたのではないかと噂された。しかし真相は不明。
  9. ^ ミシュランの評価を下げられたことで、ミシュランへの掲載がなくなってしまった例もある。ミシュランから三ツ星を与えられていたマキシム(Maxim's)は1978年版から6つの店について評価の掲載がなくなった。これに対してマキシム側は「当方はレストランではなく劇場。従ってミシュランは正しい」とコメントした。ミシュランが三ツ星から二ツ星への降格を打診したところ、マキシムがレストランとしての掲載を拒否したためと言われる。
  10. ^ ニュルンベルク裁判の証言で明らかになった。

出典

  1. ^ 阿部猛『起源の日本史 近現代篇』同成社
  2. ^ 赤井 2016, pp. 117–126.
  3. ^ [1]
  4. ^ a b c d 長坂契那「明治初期における日本初の外国人向け旅行ガイドブック」『慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要』第69号、慶應義塾大学大学院社会学研究科、2010年、101-115頁、ISSN 0912456XNAID 120002791529 
  5. ^ 住谷裕文「「知」の収奪 : 世界初の英文日本ガイドブック(1)」『大阪教育大学紀要 1 人文科学』第57巻第2号、大阪教育大学、2009年2月、17-38頁、ISSN 03893448NAID 120002108992 
  6. ^ a b c 赤井 2016, pp. 126–132.
  7. ^ 日刊ゲンダイ 2008年(平成20年)11月23日付記事「ミシュラン格付けに大波紋」による。
  8. ^ レイモン・カルチェ『全史第二次世界大戦実録1』小学館





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