一般用医薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/02 07:35 UTC 版)
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概要
一般用医薬品承認審査合理化等検討会の中間報告書[1]によると、一般用医薬品とは、「一般の人が、薬剤師等から提供された適切な情報に基づき、自らの判断で購入し、自らの責任で使用する医薬品であって、軽度な疾病に伴う症状の改善、生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上、健康状態の自己検査、健康の維持・増進、その他保健衛生を目的とするもの」と定義されている。充分な説明や情報を示した上で、消費者が自ら簡単な治療を行うというセルフメディケーションの方向性が提唱されている。
法律上は、長らく医療用医薬品以外の医薬品として扱われていたが、2006年の薬事法改正(2009年6月1日施行)により、「医薬品のうち、その効能および効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの」と定義された。よって購入に際しては薬剤師や登録販売者の助言と指導を受けることが望ましい。詳細は店舗販売業。
価格競争などにより、業界の流れとして、大衆薬事業の縮小・撤退の動きや、逆に撤退する他社事業の受け入れによる事業強化を目指す方向に二分化している。
- ファイザーの一般用医薬品事業部門 → ジョンソン・エンド・ジョンソン → 販売のみ武田薬品工業(現:アリナミン製薬)へ
- ゼファーマ(山之内製薬・藤沢薬品工業) → 吸収合併により第一三共ヘルスケアへ
- 中外製薬の一般用医薬品部門 → ライオン(なお、外用鎮痛消炎薬の「ゼノール」は大鵬薬品工業、解熱鎮痛薬「サリドン」の製造は販売元だったゼファーマ(現:第一三共ヘルスケア)へ)
- 大日本製薬(現:大日本住友製薬) → 興和
- 三菱ウェルファーマ(旧:三菱東京製薬・ウェルファイド、現:田辺三菱製薬) → 佐藤製薬
- 住友製薬ヘルスケア(元:住友製薬子会社、現:大日本住友製薬) → ダンヘルスケア(大日本除虫菊(金鳥)グループ)
- ノバルティスファーマの一般用医薬品部門 → グラクソ・スミスクラインのコンシューマーヘルスケア部門と統合し、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパンへ
また、OTC製造販売に一本化した企業や、シオノギヘルスケア(塩野義製薬から分社化)・アリナミン製薬(武田薬品工業から分離・独立)の様に、OTC事業を子会社として分社化した企業も見られる。
分類
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規制緩和による2009年施行の改正薬事法[2]で、一般用医薬品は主に消費者に対する情報提供の必要性の程度によって第1類、第2類、第3類の3種に分けられることになった。なお、一部の医薬品は医療用医薬品の認可のまま流通していたが、薬事法改正により医療用医薬品は店舗販売業の店舗では販売できなくなるため、一般用医薬品としてリニューアルしたものもある(ベトネベート・フルコートなど)。
なお、商品外箱などに医薬品の分類を記載する場合は、「第1類医薬品」というように算用数字を用いることが医薬品医療機器等法施行規則[3]第209条の3第1項に規定されている。
薬局と医薬品販売業(平成21年施行後)
業態 | 調剤の可否 | 販売する医薬品の品目 | 販売方法 | 分割販売の可否 | 許可権者 |
---|---|---|---|---|---|
薬局※ | 可 | すべての医薬品 | 店舗販売 | 可 | 所在地の都道府県知事 |
店舗販売業※ | 否 | 要指導医薬品(薬剤師)、一般用医薬品(薬剤師:第一・二・三類) (登録販売者:第二・三類) | 店舗販売 | 可 | 店舗ごとに、その店舗の所在地の都道府県知事(所在地が保健所を設置する市または特別区の区域にある場合においては、市長または区長) |
配置販売業 | 否 | 一般用医薬品(薬剤師:第一・二・三類) (登録販売者:第二・三類) | 配置販売 | 否 | 配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事 |
卸売販売業※ | 否 | すべての医薬品 | 規定なし | 可 | 営業所ごとに、その営業所の所在地の都道府県知事 |
※卸売販売業は、医薬品を薬局や他の医薬品の販売業、製薬企業または医療機関等に対して販売する業態であり、業として一般の生活者に対して直接医薬品の販売等を行うことは認められない。
※店舗による販売(薬局開設者または店舗販売業者)とは、必ずしも店頭における販売に限られるものではなく、医薬品医療機器等法に基づく許可を受けている薬局または店舗販売業において、予めその所在地や許可番号を明示する等の一定の条件の下で、購入者の求めに応じて医薬品を配送する等、店舗を拠点とした販売を行うことは可能となっている[4]。
リスク区分に応じた情報提供
リスク区分 | 対応する専門家 | 購入者側から質問等がなくても行う積極的な情報提供 | 購入者側から相談があった場合の応答 |
---|---|---|---|
要指導医薬品 | 薬剤師 | 対面による書面を用いた情報提供を義務付け | 義務 |
第一類医薬品 | 薬剤師 | 書面を用いた情報提供を義務付け※ | 義務 |
第二類医薬品 | 薬剤師または登録販売者 | 努力義務 | 義務 |
第三類医薬品 | 薬剤師または登録販売者 | 不要(法文上の規定は特になし) | 義務 |
※ただし、購入者側から説明を要しない旨の意思表明があった場合はこの限りではない(医薬品医療機器等法第36条の10第6項)。
店舗管理者
リスク区分 | 店舗管理者 |
---|---|
第一類医薬品 | 薬剤師・業務三年以上の登録販売者※ |
第二類医薬品 | 薬剤師または登録販売者 |
第三類医薬品 | 薬剤師または登録販売者 |
管理
店舗管理者による管理が主だが、店舗管理者が直接管理しない場合(退店時など)は、店舗管理者以外の薬剤師または登録販売者が管理代行できる(記録・報告が必要)
注釈
- ^ ただし、雑貨などを販売するドラッグストアなどはスーパーなどと同じように混む時間帯があるため、そのような場合は実質的に詳しく説明をしている余裕がないという実情がある。そのため、ほとんどの場合はただ販売するだけという形になりがちである。
出典
- ^ a b セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について(平成14年11月8日) 一般用医薬品承認審査合理化等検討会 中間報告書(厚生労働省)
- ^ 厚生労働省. “薬事法の一部を改正する法律の概要 (PDF)”. 2010年7月18日閲覧。
- ^ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 - e-Gov法令検索
- ^ 試験問題の作成に関する手引き第4章薬事関係法規・制度p203下段(v) (PDF)
- ^ a b c 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ 薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)159条14項関係 (PDF) 。
- ^ “特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)セルフメディケーション税制”. 国税庁 2020年1月17日閲覧。
- ^ セルフメディケーションを視野に入れた 新一般用医薬品の開発と評価 http://homepage3.nifty.com/cont/27sup/OTC.html
- ^ 一般用医薬品のインターネット販売について 平成26年5月厚生労働省 医薬食品局 総務課 (PDF) 2020年1月17日閲覧
- ^ 要指導医薬品(厚生労働省)平成26年10月25日更新
- ^ 新一般用医薬品(厚生労働省告示第69号(平成19年3月30日)の別表第一に掲げる医薬品以外の第一類医薬品)一覧(平成26年10月25日現在)
- ^ 第一類医薬品 (PDF)
- ^ 「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)159条14項関係 (PDF)
- ^ 乱用等のおそれがある医薬品 (PDF)
- ^ 「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正) (PDF)
- ^ 厚生労働省 医薬品等安全対策部会 (PDF) 平成21年5月8日発表
一般用医薬品と同じ種類の言葉
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