タックス・ヘイヴン 判定と対策

タックス・ヘイヴン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 01:12 UTC 版)

判定と対策

主要各国は、タックス・ヘイヴンを利用した租税回避に対してタックスヘイヴン対策税制を整備して対抗しようとしている。しかし、税の抜け穴の根絶にはほど遠い状況である。それというのも、国際決済機関クリアストリームの2000年度口座リストによれば、タックス・ヘイヴンにある欧州・米国の大銀行を中心とする口座の大半が、機関内の匿名口座になっていたのである。

タックス・ヘイヴンはいくつかの方法で認定されている。以下では例として経済協力開発機構(OECD)や日本のタックス・ヘイヴンの基準を示す。

OECDによる判定とリスト掲載

経済協力開発機構(OECD)では、下記(イ)に当てはまり、かつ下記(ロ)の(a)-(c)のいずれか一つでも該当する非加盟国・地域を「タックス・ヘイヴン」と認定し、有害税制リストに載せている。

  • (イ) 金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税としている又は名目的にしか課税していないこと。
  • (ロ)
    • (a) 他国と実効的な情報交換を行っていないこと。
    • (b) 税制や税務執行につき透明性が欠如していること。
    • (c) 誘致される金融・サービス等の活動について、自国・地域において実質的な活動がなされることを要求していないこと。

OECDによる対策

OECDはG20加盟国とともに、国際的な取り組みとしてこうした政策をさらに広げようとする方針にある[17]

  • 導入済み:日本、イギリス、アメリカ合衆国、ドイツ、中華人民共和国、韓国

2013年、15のアクションプランを特定した2013年の「BEPS行動計画」を発表(BEPS=税源の侵食と利益移転、Base Erosion and Profit Shifting)。これは、越境活動に影響を及ぼす国内ルールへの整合性導入、課税と経済活動及び価値創出との一致を確保するための既存の国際基準における実体要件の強化、企業・政府の透明性及び確実性の改善という3つの指針をもつ。OECD租税委員会が立ち上げたプロジェクトで、外国子会社に対する合算税制の強化、租税条約濫用の防止などの行動計画を持つ。

2015年8月13日、OECDG20加盟国40カ国余りが、タックス・ヘイヴンを利用した企業の過度な節税策を防ぐ税制を全面的に導入していく見通しとなった。既に日英米が採用している課税の仕組みをインド、オランダ、スイスなど10カ国以上が導入する方針。また、加盟国以外の国にも導入を促していく方針だが、シンガポールマレーシアなどは税制優遇策を企業誘致戦略の重要な柱と位置づけているため、今後応じるかどうかは不明であり、今回の税制導入後の抜け道となる可能性がある[18]

2015年10月、上記方針にのっとり、OECDは国際租税ルール改革に関する措置の最終パッケージを提示した。BEPSによる税収の損失を、「控えめに見積もっても年間1,000〜2,400億米ドル、世界全体の法人税収の4〜10%に達する」と推計。また「開発途上国では税収の多くの部分を法人税収により依存している現状に鑑みると、BEPSが開発途上国に与える影響は特に大きい」とあらためて問題提起した。そのうえで、1世紀間中に、最も抜本的な措置として、二重非課税に終止符を打ち、課税と経済活動及び価値創出との一致を促すことで、BEPSを引き起こしているタックスプランニングの仕組みを無効化することを目指すと発表した[19]。なおBEPSは各国への勧告という形式であり、法的拘束力はない。

各国政府による対策

タックスヘイヴンを用いた租税回避について、多くの国家や地域では、対抗策を講じようとしている。

例えば、日本の場合、租税特別措置法40条の4および66条の6において「タックス・ヘイヴン対策税制」が規定されており、居住者または内国法人が外国に有する関係法人のうち、所得課税の実効税率が20%未満であるものについて、その所得を当該居住者、または内国法人の収益とみなすこととしている。1978年(昭和53年)度に導入した。

アメリカ合衆国オバマ政権は、2008年の世界金融危機後、国外のスイスの銀行に秘密口座の情報開示を迫るなど強硬姿勢を取ってきたが、国内の会社法など、関係法制は国家ではなく州の権限であり、デラウェア州に制度改正を強いることはできず、オバマ大統領は2016年5月6日の記者会見で、銀行など金融機関に実質的所有者の情報把握を求める法案について、アメリカ合衆国議会の協力を呼びかけた[8]

対策の進捗状況

OECD国際フォーラム調査による国際的に認められている税基準の実施状況に関する進捗レポートより[20]

以下はOECDの発表による。

国際的に認められている税基準を約束したが、実施が十分でない国・地域

タックスヘイヴン
その他の金融センター
(参考)当初、国際的に認められている税基準を約束しなかった国・地域(現在は約束)
  • コスタリカ/Costa Rica
  • マレーシア(ラブアン)/Malaysia(Labuan)
  • フィリピン/Philippines
  • ウルグアイ/Uruguay

タックス・ヘイヴン・リスト(2000年6月付)

  • カリブ

非協力的タックス・ヘイヴン・リスト

2002年4月18日付

  • アンドラ
  • リベリア
  • リヒテンシュタイン
  • マーシャル諸島
  • モナコ
  • ナウル
  • バヌアツ

2009年4月2日付

2000年6月以前に2005年までの有害税制除去を約束した国・地域

香港

香港は、まず法人税が17.5%と安い。また、銀行預金については利子に課税されない[注釈 2]。有価証券等の含み益、つまりキャピタルゲインも非課税である[注釈 3]


注釈

  1. ^ 日本経済新聞ブルームバーグを始め、多くの日本語メディアでは「タックスヘイヴン(租税回避地)」との記載が一般的である。
  2. ^ 日本は20%
  3. ^ 日本は10%。ワールド・リサーチ・ネット 『意外なツボがひと目でわかる世界地図』 青春出版社 2007年 p.52.

出典

  1. ^ デジタル大辞泉
  2. ^ a b ズックマン 2015, pp. 10-11, 53-54.
  3. ^ a b [1]
  4. ^ ズックマン 2015, pp. 10-11.
  5. ^ [2]
  6. ^ “租税回避マネー”を追え 〜国家vs.グローバル企業〜 | NHK クローズアップ現代
  7. ^ ルーシー・クラーク・ビリングズ (2016年4月12日). “世界最悪のタックス・ヘイヴンはアメリカにある” (日本語). ニューズウィーク日本語版. http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4888_2.php 2016年6月29日閲覧。 
  8. ^ a b c 清水憲司 (2016年6月7日). “トランプ氏、クリントン氏も活用 米国の「租税回避地」”. 毎日新聞. http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160602/biz/00m/010/012000c 2016年9月13日閲覧。 
  9. ^ 清水憲司 (2016年6月4日). “米デラウェア州2階建てビルで31万社租税回避の怪”. 毎日新聞. http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160602/biz/00m/010/011000c 2016年9月13日閲覧。 
  10. ^ ズックマン 2015, pp. 111-112.
  11. ^ Shafik Hebous(2011) "Money at the Docks of Tax Havens: A Guide", CESifo Working Paper Series No. 3587, p. 9
  12. ^ ズックマン 2015, pp. 127-128.
  13. ^ ズックマン 2015, pp. 109-110.
  14. ^ ズックマン 2015, pp. 74-77.
  15. ^ ズックマン 2015, pp. 122-125.
  16. ^ ズックマン, サエズ 2020, pp. 1661/3959.
  17. ^ EU 租税回避1兆ユーロとの闘い | BS世界のドキュメンタリー | NHK BS1
  18. ^ [3]
  19. ^ [4]
  20. ^ いわゆるタックスヘイヴン・ブラックリスト。2009年5月19日付
  21. ^ EU、タックス・ヘイヴンのブラックリストを承認-韓国など17地域指定 Bloomberg 2017年12月5日 23:04 JST
  22. ^ [5]
  23. ^ [6]
  24. ^ 日・バミューダ租税協定の署名
  25. ^ 日・バミューダ租税協定の発効
  26. ^ 日・香港租税協定の発効
  27. ^ a b 脱税の防止のための情報の交換 及び個人の所得についての課税権の配分に関する 日本国政府とケイマン諸島政府との間の協定(略称:日・ケイマン租税協定)
  28. ^ 日・英領バージン諸島租税情報交換協定の発効
  29. ^ 日・サモア租税交換協定の発効
  30. ^ 日・マン島租税情報交換協定の発効
  31. ^ ジャージーとの租税協定の発効
  32. ^ ガーンジーとの租税協定の発効
  33. ^ 日・マカオ租税情報交換協定の発効
  34. ^ 日・リヒテンシュタイン租税情報交換協定の発効
  35. ^ 日・パナマ租税情報交換協定の発効
  36. ^ [7]
  37. ^ a b [8]





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