IBM System/360
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 06:59 UTC 版)
「IBMメインフレーム」の記事における「IBM System/360」の解説
1964年4月にSystem/360 (S/360)が発表されて世界が変わった。System/360は事務計算と科学技術計算の両方に対応可能な共通モデルだった。「360」という数字は、「360度」で「オールラウンド」なコンピュータシステムであるということを意味していた。System/360には、事務計算用機にしかなかった10進算術演算やバイトアドレッシングなどの機能と、科学技術計算用機にしかなかった浮動小数点演算などの機能が両方とも備わっていた。System/360の一部のモデルでは算術演算機能やバイトアドレッシングなどの機能はオプションだった。ただし上位モデルには上位互換性があり、ほとんどの下位モデルにも下位互換性があった。またSystem/360はOSのために初めてハードの仕様を統一したコンピュータでもあった。これらのマシンでは、プログラムや命令にはスーパーバイザーモードとアプリケーションモードがあり、メモリ保護機能が備わっていた。ハードウェアによるメモリ保護機能はOSをユーザプログラム(タスク)から保護し、タスクが他のタスクに影響を与えることがないようにした。また新機種は旧機種よりも広いアドレス空間を持っており、当時は36ビットのワードに18ビットのアドレス(約1MB)が普通であったのに対し、8ビットのワードに24ビットのアドレス(16MB)が利用できた。 System/360シリーズの小型モデル(360/30など)は1400シリーズからのアップグレードを想定したもので、さらに360の大型モデルへのアップグレードが簡単にできた。第2世代機から新世代機への移行をスムーズに進めるため、IBMは360のマイクロプログラミング機能を使って人気の旧機種をエミュレートした。これにより360/30シリーズは追加費用を払うことで1401用のプログラムを実行でき、さらに大型の360/65シリーズは7094用のプログラムを実行できた。旧機種用のプログラムを実行するには360を一度停止してエミュレーションモードで再起動する必要があった。多くのユーザは古いプログラムを使い続けており、後に販売されたSystem/370ではOS上からエミュレーションモードの切り替えが可能になった。 System/360ファミリーのOSにはOS/360 (PCP、MFT、MVTを含む)、BOS/360、TOS/360、DOS/360などがあった。 その後System/360はSystem/370、System/390、64ビット機のzSeries、System z、zEnterpriseなどのマシンに進化した。System/370は、最初に販売されたSystem/370のモデルを除き、全モデルに仮想メモリ機能が搭載されていた。OS/360 MFTの派生版であるOS/VS1、OS/360 MVTの派生版であるOS/VS2 (SVS)、DOS/360の派生版であるDOS/VSに仮想メモリ機能が搭載された。それまでのOSに搭載された初期の仮想メモリ機能は、全てのプログラムが1つの仮想メモリ空間を共有するもので、その後に開発されたMVSでは各プログラムが別々のアドレス空間を持つようになった。仮想メモリ機能が搭載されたことにより、OSは仮想マシンをサポートすることもできるようになった。VM/370ハイパーバイザーは標準版のSystem/360やSystem/370、シングルーユーザの対話型モニターシステム (CMS)などの複数のOSを実行できた。タイムシェアリングVMシステムではユーザごとに別の仮想マシンを実行でき、各仮想マシンはCMSのインスタンスを実行した。
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