SNA
SNAとは、1974年にIBM社によって開発されたコンピューター機器を接続するためのネットワーク体系のことである。SNAは、コンピュータとそのリソースを相互に接続する上での完全なプロトコルスタックとなっているが、ただしそれ自身がプログラムである訳ではない。SNAの中では、ネットワークを運用するためのプロトコルやハードウェアの仕様などが規定されており、その中ではメインフレームを中心としてその周辺に、各種制御プロセッサや端末などが階層的に接続されるという仕組みになっている。SNAの実装は様々な通信パッケージの形態をとるが、その中でも最も有名なのはVTAMで、これはSNAを使ったメインフレーム向けのパッケージにあたる。なお、現在でも、一部の銀行や政府機関などではSNAを利用したコンピュータネットワークが利用されている。
参照リンク
IBM Systems Network Architecture Protocols - Cisco Systems
Systems Network Architecture
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/20 16:06 UTC 版)
Systems Network Architecture ( SNA ) は、IBM が1974年に発表したコンピュータネットワーク・アーキテクチャであり、またそれに基づいたプロトコルスタックである。同社のメインフレームコンピューターやミドルクラスコンピューターのAS/400のネットワークで使われた。
概要
SNAはコンピュータと端末等の資源を結ぶ完全なプロトコルスタックとPU/LUのノードの役割まで含めた通信機能の体系的な構造を定めたものである。SNAは通信プロトコルとアーキテクチャに関する規格仕様であり、それ自体はハードウェア・ソフトウェアの製品ではない。
SNAが画期的とされるのは、従来のコンピューターにおいてネットワーク仕様と機能がアプリケーション中に直接実装されていたところを、分離して通信ネットワークの仕様・アーキテクチャの構造を定め、またハードウェア・ソフトウェア製品として実装した点である。ソフトウェアでのSNA対応製品は様々な形のコミュニケーションパッケージが出ており、最も有名なものはメインフレーム環境で3745通信制御装置においてSNA通信を実現するVTAMである。
またSNAは通信機能を物理層からアプリケーション層まで階層(レイヤー)で分けたアーキテクチャを提示し、これは後のOSI参照モデルの基となった。
SNA はIBM製メインフレームコンピューターと共に政府の機関、金融機関、各種受発注システム等で広く使われ、その時代の事実上の標準となった。最新のz/OS、z/VSE、z/VMにもVTAMは含まれているが、近年ではネットワーク環境はTCP/IPに移行してきている。
SNAの構造
SNAには次の要素が含まれる。
ネットワーク階層構造
通信機能を7階層のアーキテクチャで体系化している。
このアーキテクチャは1983年にISOによりOSI参照モデルが制定される際にも参照された。SNAとOSI参照モデルは構成が似ているが、細部は異なる。
| SNA | OSI参照モデル | |
|---|---|---|
| 第7層 | トランザクションサービス層 | アプリケーション層 |
| 第6層 | プレゼンテーションサービス層 | プレゼンテーション層 |
| 第5層 | データフローコントロール層 | セッション層 |
| 第4層 | トランスミッションコントロール層 | トランスポート層 |
| 第3層 | 経路制御層 | ネットワーク層 |
| 第2層 | データリンクコントロール層 | データリンク層 |
| 第1層 | 物理制御層 | 物理層 |
データリンク制御
IBMはSNAでデータリンク制御の仕組みとしてSDLCを開発した。最初のフレーム構造でバイナリデータ列を送るプロトコルで、後のIEEE802.2等にも影響を与えた。
物理ユニット(PU)
PUとは通信機能を持つ物理的主体を指す。PUには次のタイプが存在する。
- PU5:VTAMが動作するIBMメインフレームプロセッサー
- PU4:ACF/NCPなどのサーバー間のデータフローを制御する通信コントローラー
- PU2:3174端末制御装置等の端末側の通信機能を持つ物理主体
- PU2.1:ホストセンター型ではないAS/400の相互接続ネットワークにおける通信機能を持つ物理主体
論理ユニット(LU)
LUとはネットワークからアクセス可能なホストのサービスの論理的な主体を指す。
SNA は、様々な種類のデバイスを、各々 a Logical Unit grouping として同定する。LU0 は定義されていないデバイスまたはユーザーが自身で定義したプロトコルを意味する。LU1 はプリンターを意味する。LU2 はダム端末を意味する。LU3 は3270プロトコルを用いるプリンターを意味する。LU4 はバッチ端末を意味する。LU5 は定義されたことがない。LU6 は2つのアプリケーション間のプロトコルを意味する。LU7 は 5250 端末を用いたセッションのために用意されている。使われる最初の LU は、LU1 と LU2、そして w:LU6.2 である( LU6.2 は、アプリケーションとアプリケーションの会話のための進歩したプロトコルである)。
SNAのネットワーク
データリンク層による接続
SNAのネットワークは当初はシリアル回線接続が主なネットワーク構成方法であった。遠隔地ではデジタル専用線を介して接続された。後に同一事業所内ではIBMが開発したトークンリングによるLANも用いられるようになった。データリンク制御でシリアル回線接続ではSDLC、トークンリングにおいてはIEEE802.2 LLCが対向装置とのデータ交換の制御に用いられており、データリンク層によるネットワーク構成が主な手法であった。
IPネットワークとの融合
1990年代半ばから企業・団体内のネットワーキングでTCP/IPによるイントラネットが台頭すると、IPネットワークとSNAネットワークの回線統合が課題となった。これに対する解決法としてDLSw(Data-Link Swtching)(RFC 1434、RFC 1795)が提案された。これはデータリンク層で接続するSNAをイントラネットのIPネットワークでトンネリングさせるものである。Ciscoシステムズは自社のルーター製品でIBM SNA対応機能を有するIOS製品をIBM featureとして展開した。またCiscoシステムズはIBM 3745通信制御装置を置き換えるものとしてメインフレームコンピューターと光ファイバーのESCONモジュールで直結できるCisco 7500シリーズ用のCIPモジュールやCisco 7200シリーズのCPAをリリースした。この他にもWAN回線のフレームリレーで遠隔地と接続するFRAD製品がモトローラから販売された。SNAをトンネリングさせる以外の方法としては、データリンク層によるデータ伝送をIPに置き換えるゲートウェイ方式のTN3270も存在し、OpenConnect社のOpenConnect Network等の製品が存在した。
ネットワークとしてのSNAの特徴
SNAの特徴として次のような点がある。
- VTAMを中心とした中央集権型・集中管理型である。Peer to Peerを謳ったLU6.2は存在したが普及しなかった。
- コマンドで特定の接続先(PU、LU)を通信開始や通信切断できる。
- 接続先(PU、LU)とのセッションを常時監視している(ポーリング)。
- 同一回線内の複数セッション間で優先順位がつけられる。
- 標準で暗号化できる。
- LUとして画面表示端末、印刷端末を前提としており、入力・出力とも文字ベースであるため必要な回線速度が高い精度で見積もりできる。
- 機器がIBMのメインフレームコンピューターの製品体系の専用である。
- TCP/IPのようなオープン規格ではないIBM製品独自のスキルが必要である。
利点と不利点
SNA はアプリケーションプログラムからリンクコントロールを除去した。その機能を、ネットワークコントロール専用のプログラムへ移した。このことは、以下に記す利点と不利点を生んだ。
利点
- テレコミュニケーションネットワークにおける問題の局地化が容易になった。これは、コミュニケーションリンクに関わるソフトウェアの量が、相対的に少なくなったからである。
- アプリケーションプログラムにコミュニケーションに関する機能を付け加えることが容易になった。ソフトウェアタイマーやプロセッサーへの割込みを要求する手に負えないリンクコントロールの部分をシステムソフトウェアや NCP へ移したからである。
不利点
- SNA ではないネットワークへの接続が困難なこと。SNA の「現在のバージョン」でサポートされないコミュニケーションの仕組みを持つアプリケーションは、困難に直面した。IBM が X.25 を SNA のサポートに含める前は、X.25 ネットワークへの接続は困難であった。X.25 と SNA プロトコルのコンバージョンは、NCP ソフトウェアの修正または外部にプロトコルコンバーターを設置することによって可能となった。
- 一見して、SNA ネットワークは、TCP/IP ネットワークと比較して非常に高価なものとして登場した。小さなネットワークにとっては、それは本当に高価なものだった。しかし成長していく大きなネットワークの複合体にとっては、SNA ストラクチャーは安価なネットワークパスを提供するものだった。
実装と発表
SNAは1974年9月に「通信の高度化機能」(Advanced Function for Communications)の発表の一部として全世界で発表され、そのSNAのSynchronous Data Link Control(SDLC)プロトコルの実装が次の新製品に行なわれた:
- IBM 3767 コミュニケーション端末機(プリンター)
- IBM 3770 データ・コミュニケーション・システム
これらはIBM/3704/3705通信制御装置のネットワーク・コントロール・プログラム(NCP)やシステム/360とシステム/370のVTAMやその他CICS、IMSなどのソフトウェアでサポートされている。このあと、1974年7月にIBM 3760データ・エントリー・ステーション、IBM 3790コミュニケーション・システム。IBM 3270の新しいモデルとSNAの実装は続いている。
SNAはおもに米国IBMのシステムズ開発部門(Systems Development Division)のノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク(R.T.P.)製品開発研究所のデザイン部署で行なわれ、それを実装した他の製品開発研究所(IBM 3767は藤沢研究所、のちの大和研究所;IBM 3770はR.T.P.研究所)も援助して行なわれたので、日本人も数人がSNAのデザインに参加している。詳細はのちにIBMのシステム・リファレンス・ライブラリー(SRL)マニュアル、IBM Systems Journalなどで主要部分が公開された。
関連項目
外部リンク
- Cisco IBM ネットワーキング
- Cisco IBM インターネットワーキング
- 日経クロステック IBMのプロトコル体系「SNA」の中核としてデータ通信を担った「SDLC」
- APPN Implementers Workshop Architecture Document repository
- Systems_Network_Architectureのページへのリンク