2001年 渡米・石彫刻
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「吉野美奈子」の記事における「2001年 渡米・石彫刻」の解説
卒業後、東京で子ども達に絵を教えた後、2001年単身渡米。ニューヨークの美術大学スクール・オブ・ビジュアル・アーツでアート概念を学びながら、美術解剖学を学ぶ目的で通い始めたアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークで、イサム・ノグチの助手を勤めた彫刻家・斎藤誠治と出逢う。吉野は建設現場に捨てられていた大理石をみつけて、「もったいない」と胸を痛め、懸命に受け入れ先を探したがうまくゆかず、斎藤の勧めにより、その石を彫ることになってしまった。苦闘の末、 初めて彫った大理石作品のトルソー『Life - 生命』が2003年の学生展で彫刻科優秀賞を受賞、美術コレクターに買い上げられた。また、このトルソーを含む処女作三点シリーズでメリット奨学金を受賞。以降12年間、斎藤に師事し、石彫刻の具象では困難とされている直彫りを習得した。 アメリカ同時多発テロ、『平和のためのシリーズ』 2001年渡米直後に9.11アメリカ同時多発テロを間近で体験した吉野は、その追悼碑『Tears - 涙』『Pain - 痛み』とイラク戦争に反対した『Pray - 祈り』を含む『平和のためのシリーズ』を制作し、2004年米国最古の彫刻協会 ナショナル・スカルプチャー・ソサエティー より新人賞受賞。その後、2005年3月、国連アースソサエティ表彰式にて、詩と絵画 『Earth & Humanity - 地球と人類』を発表する。高さ2メートル以上のキャンバスに、男女が浮遊し抱擁し合う姿が描かれたこの作品は、テロや戦争で命を落としてゆく「人々」と、人類の戦争行為によって破壊されてゆく「地球」の、双方への慈悲が表現されている。それは、かつてローマでミケランジェロのピエタに感銘を受けた「吉野的ピエタ」とも呼べる作品であり、後に誕生するモニュメント『Lovers - 恋人たち』の前進とも考えられている。国連ホテルの会場では、吉野の詩の朗読にあわせて、舞踊家・佐藤道代(イザドラ・ダンカン国際学校日本大使)が踊った。 21世紀初ニューヨーク市認定ランドマーク『ハースト・タワー』 2005年6月、アメリカ同時多発テロ以降、初めてマンハッタンに建築された超高層ビル、ハースト・タワーの保全修復・新築プロジェクトに修復チーム芸術監督として参加。特に、3階バルコニー柱に設置されていた12体の彫刻修復プロジェクトは、アシスタントを使わず一人で完成させ、ニューヨーク・タイムズで報じられる。これらは悲劇、喜劇、音楽、美術、科学、印刷など、初回建設当時(1928年ごろ)を文化的に象徴する各3メートル高の彫像群であり、歴史的重要文化財となっている。吉野はファサードの全面再生塗装においても総合監督を務め、ハースト・タワーはニューヨーク市における「21世紀最初のランドマークビル」として認定された。また、このビルは環境持続性におけるパイオニア的建築物でもあり、「ニューヨーク市初のグリーンオフィスビル」にも認定されている。 『地球のためのシリーズ』受賞、ヨーロッパ留学 2006年、ベルギー産黒大理石の代表作『Awaken (目覚め)』で人類の覚醒の瞬間を表現し、NPOPen&Brush国際女性作家協会(1894年ニューヨーク設立)より、日本人初の彫刻名誉賞を受賞する。2008年、世界の環境破壊に警告を鳴らす『Missing - 失くしたもの』『Earth is in your hands - 地球はあなたの手の中に』を含む大理石彫刻群「地球のためのシリーズ」により、エドワード・マクドーウェル欧州留学賞を受賞。翌年ミケランジェロ彫刻を学ぶためイタリア・フィレンツェへ留学し、帰路のパリでロダン塑像を学んだ。 東日本大震災『祈りのシリーズ』 2011年、東日本大震災直後、ニューヨークのSOHOでマリンバ奏者のSINSKE、作曲家の 松村牧亜 と共に募金個展&コンサート『夢幻』を開催し、売り上げの全額を寄付した。鎮魂と復興を願い大理石彫刻三部作『祈りのシリーズ』を制作中、石から浮かび上がるような女性の肖像作品『Emerge - 光へ』が、深夜のうちに何者かによって壊される事件が起こった。現場の彫刻スタジオには日夜人が出入りしており、犯人は特定できなかった。吉野はインタビューで「現実を受け入れ難く、ただ泣いていた。でも、これは私が彼女(作品)と共有しなければならない運命だったのだと思う」と応えた。また「世界は完璧ではなくアクシデントは起こる。その時、問われてるのは、”自分はどうするのか?”ということ。」「壊れた彫刻はどんなに修復しても決して元には戻らないけれど、再び命が吹き込まれれば別の芸術作品として生きてゆく」とも語っている。吉野は厳しい精神状態で修復作業を続け、「Rebirth - 再生」の願いとともに、東日本復興に捧げる『祈りのシリーズ』は完成した。大震災より2周年めの2013年3月11日、在ニューヨーク日本国総領事館 で追悼個展『祈り』を開催し、国籍・人種・宗教を超えて、世界の人々と共に祈りを捧げた。
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