閨
★1.閨の怪。
『江談抄』第3-32 寛平法皇(=宇多院)が京極御息所を河原院へともない、房事を行なう。すると、河原院の主であった左大臣源融の霊が、殿中の塗籠(ぬりごめ)の戸を開いて現れた。霊は「御息所をいただきたい」と言って、法皇の腰に抱きつく。御息所は失神状態になり、法皇は御息所を車に乗せ、御所に帰った。
『古今著聞集』巻20「魚虫禽獣」第30・通巻720話 僧が白拍子と共寝するが、不思議なことに、妻と寝ているような気がしてならない。恐ろしく思っていると、5~6尺ほどの蛇が現れて、僧の男根に食いつく。なかなか離れないので、僧は刀で蛇の口を裂いて殺し、堀川に流し棄てた。その夜から僧の妻は病気になり、やがて死んだ。僧は男根が腫れ、半死半生になった。
『今昔物語集』巻29-16 正親大夫が愛人と無人の古堂に泊る。夜中に怪しい女が現れて「我はこの堂の主」と言う。大夫は恐れて愛人とともに堂を出るが、大夫は床につき愛人は死ぬ。
『今昔物語集』巻31-9 常澄安永は、妻と見知らぬ童が同衾する現場を見、怒ってそこへ躍りこむ、という夢を見る。妻も同様に、童と寝ていた所に夫が現れる、との夢を見ていた。
『今昔物語集』巻31-10 勾経方は愛人と共寝した夜の夢に、本妻が走り入り、2人臥している間に割りこんでののしり騒ぎ立てる、と見る。本妻も同様の夢を見る。
『日本霊異記』上-1 雄略天皇が后と房事を行なっていた所へ、小子部栖軽がそれと知らずに参入する。天皇は恥じて后から離れた。
★4a.閨の隔て。剣。
『ヴォルスンガ・サガ』29 シグルズは、グンナルの身代わりとなってブリュンヒルドと結婚する。彼は3夜、ブリュンヒルドと一つ床に上がるが、抜き身の名剣グラムを、彼女との間に置いて寝る。
『千一夜物語』「アラジンと魔法のランプの物語」マルドリュス版第751夜 アラジンは、魔神の力を借りてブドゥール姫を寝床ごと自分の部屋へ連れてくるが、父王の許しの出るまでは御身に触れぬといい、間に抜き身の剣を置いて眠る。
『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第28章 騎士トリスタンとマルケ王の妃イゾルデとは、愛し合う関係であった。2人は国を追放されて、山中の洞窟で暮らす。マルケ王が乗り込んで来るかもしれないので、2人は抜き身の剣を間に置き、離れて寝る。猟に出たマルケ王が洞窟まで来るが、眠るトリスタンとイゾルデを剣が隔てているのを見て、2人の潔白を信じる。
『二人兄弟』(グリム)KHM60 双子の弟(魔女によって石にされた)の安否を気づかう兄が、弟の治めていた国へ行く。兄は弟とまちがえられて、弟の妃とベッドをともにすることとなったので、両刃の剣を妃との間に置く。
『或る夜の出来事』(キャプラ) 富豪の娘エレンが家出し、婚約者の住む街に向かって、長旅をする。新聞記者ピーターがそのことを記事にしようと、エレンに同行する。豪雨の夜、2人はモーテルの一室に泊まらねばならなくなる。ピーターは2人のベッドの間にロープを張り、毛布をかけて仕切りとする〔*エレンはしだいにピーターに心ひかれ、婚約を解消してピーターと結婚する〕。
『宮戸川』(落語) 夜遊びをして家を閉め出された半七と、同様に夜遅くなって家に入れてもらえぬ隣家のお花とが、やむなく半七の伯父の家に宿を請う。伯父は2人を恋人どうしと早合点して、一つ蒲団に寝かせる。半七は蒲団の真中に帯を長くして仕切りを作るが、結局、その夜若い2人は結ばれる〔*『ヰタ・セクスアリス』(森鴎外)に、哲学者・金井湛が寄席でこの話を聞いたことが記され、「樺太を両分したようにして2人は寝る」との形容がある〕。
*敷布で女との間を隔てる→〔蚊帳〕1の『三四郎』(夏目漱石)。
『襖』(志賀直哉) 友が「私」に語った話。「僕が19歳の夏、温泉宿でのことだ。僕たち一家の隣室に滞在する弁護士一家の、子守の16歳くらいの娘が、僕に好意を持った。ある夜、皆が就寝してから、隣室との隔ての襖がすーっと開いて、またすーっと閉まったので、僕は驚いた。娘が、みだらな思いからではなく、ただ僕の顔を見ることで、愛情を表そうとしたらしかった」。
『ある崖上の感情』(梶井基次郎) 夏の夜。青年が崖の上に立って町を見下ろす。ある家の窓の中に、男女の性交が見える。それは、青年がひそかに期待していた情景だった。彼はじっと見ていられず、目をそらす。産婦人科の病院の窓が見え、今まさに誰かが死んだところらしい。先ほどの窓へ目を戻すと、性交が続いている。青年は、人間の喜びや悲しみを絶した厳粛な感情、意力のある無常感を感じた。
閨
名字 | 読み方 |
閨 | ねや |
閨
姓 | 読み方 |
---|---|
閨 | けいざき |
閨 | ねや |
閨
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