アラジンと魔法のランプの物語(第731夜 - 第774夜)
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「アラジンと魔法のランプの物語(第731夜 - 第774夜)」の解説
詳細は「アラジンと魔法のランプ」を参照 シナの若者アラジンは悪たれ小僧で、父親が死んでも十五歳になっても正業につかず、遊びほうけていた。家計は母親が細々と稼ぐ金で支えられ、生活は貧しかった。あるとき、マグリブ人の魔法使いが町にやってきて、父の弟であると偽ってアラジンに近づく。母親はそんな兄弟などいないと言うが、アラジンの仕事についてなにくれと相談にのってくれるため、徐々に信用するようになった。 そのうちマグリブ人はアラジンをある場所へ連れ出し、呪文を唱えると大地が裂け、大理石でふたをされた穴があらわれた。マグリブ人によると、中に入ってつきあたりの露台に莫大な価値をもつランプがある。アラジンのみが大理石をよけて中に入り、それを手に入れることができる。それを入手し、利益をやまわけしようというのだ。 指示どおりの手順でランプを手に入れたアラジンは、帰り道、木になっている果物に目をとられる。それはきらきらとしたガラス玉でできているのだ。あまりに美しかったため、アラジンはそれをもいで服のなかに隠す。実のところ、それは種々の宝石でできていたのだが、ものを知らぬアラジンはガラス玉だと思いこんだのだ。そうして入り口へ戻ってみると、たくさんのガラス玉のため外へ出ることができない。手を貸してくれと言うとマグリブ人は怒り出し、大地の裂け目を閉じてアラジンを生き埋めにして立ち去ってしまった。 マグリブ人はアフリカの妖術使いであり、この地に貴重なランプがあることをつきとめていた。しかしそのありかには厳重な結界が張られており、入ることができない。アラジンという若者だけが入ることができることを知り、利用してランプだけを手に入れ、生き埋めにしてやろうと考えていたのだ。アラジンが出てこなかったため、怒ってランプごと生き埋めにしたのである。 困ったアラジンは、中に入る前にマグリブ人からお守りとしてもらった指輪を無意識のうちにこする。すると鬼神があらわれ、なんでも願いをかなえるという。ここから出してくれるよう頼むと、無事に脱出することができ、母の待つ家へ帰った。 次の日、母親は食物を買うため件のランプを市場で売ろうと考えた。汚れている部分をきれいにしようとランプをこすると、指輪のものよりもっと巨大な鬼神があらわれ、願いを聞くと言う。気を失った母にかわってアラジンが食物を所望すると、鬼神は大量のごちそうを運んできた。その日は気がついた母親とふたりでそれを食べ、次の日以降は食物がのっていた金の皿を売って生活費とした。ものを知らぬアラジンは、はじめ強欲なユダヤ人に皿を買いたたかれたが、親切な飾り職人の忠告で高価なものであることを知る。そうして売り食いをしているうち徐々に財産が築かれ、心を入れ替えて悪友とのつきあいを断ち賢老のはなしを聞くようになったアラジンは知識を得ていった。 そんなある日、アラジンは沐浴に来た帝王の娘バドルール・ブドゥール姫をひとめ見て恋し、恋わずらいになる。元気のない理由を聞く母にわけをはなし、最近その価値を知った宝石の果物を帝王に献上し、結婚を申し込むよう頼みこんだ。高望みであると反対する母だが、アラジンの情熱的な説得によって、法廷で奏上することを承知する。とはいえ法廷には行くものの、なかなか前に進み出る勇気が出ない。何日か通い詰めるうち、帝王の方で毎日通っている老女に興味を持ち、話を聞かれる。 案に相違して帝王は怒るようなことはなく、献上品の宝石を見てアラジンとは立派な若者にちがいないと考え、結婚を承諾する気になった。焦ったのは大臣である。姫はゆくゆくは、大臣の息子と結婚することになっていたのだ。帝王に言上して三か月の猶予を求め、そのあいだにアラジン以上の献上品を用意できたならば息子と結婚させるように働きかけた。帝王は承諾し、アラジンの母に、準備のため結婚は三か月後になると返事する。 三か月のあいだおとなしく待つことにしたアラジンだが、二か月たったころ、姫と大臣の息子が結婚するという話が流れた。結婚の当夜アラジンは、ランプの魔神を呼び出して、初夜のベッドにいる新郎新婦をベッドごと拉致させる。そして新郎をトイレに閉じこめ、自分は姫に手も触れずに夜をあかした。次の朝になるとふたたび魔神を呼び出して、ふたりをベッドごと返させる。それが二夜におよび、姫の様子がおかしいことを案じた帝王は、すべてを姫から聞くと大いに怒り、大臣に息子から事情を聴取するよう言いつける。大臣の息子は毎夜の異変にすっかりぶるっており、離婚を申し出た。帝王はふたりを離婚させた。 三か月たち、アラジンの母は再度帝王に拝謁する。約束を思い出した帝王は婚資をふっかけるが、アラジンは魔法のランプを使ってすべてをそろえ、美々しい行列をつくって登城する。さらに鬼神の力によって一夜にして豪奢な宮殿を建て、そこを居館として姫を妻に迎えた。王族のひとりとなったアラジンは、気前がよく物腰も柔和なことから人民に好かれ、アラジン公と呼ばれて敬愛された。 そのころ、ランプの入手に失敗したことをいまだに悔いているマグリブ人は、アラジンの末路を確認して心を落ち着けようと水晶玉をのぞき込んでいた。すると、なんとアラジンはのたれ死ぬどころか、ランプの魔力を使って栄耀栄華を得ているではないか。マグリブ人は大いに怒り、ランプの奪回とアラジンへの報復を期してシナの町に再潜入する。アラジンが狩りのため館を留守にしていることを知ると、新しいランプを数個手に入れ、古いランプがあれば新しいものと交換すると声をあげながら町をめぐり始めた。留守を守っていた姫は、おかしなことを言っている男に興味をひかれ、侍女に言って本当に交換させてみる。侍女が持ち出したのは、アラジンがうっかり出しっぱなしにしていった魔法のランプだった。首尾よくランプを手に入れたマグリブ人は、鬼神を呼び出して、宮殿ごとマグリブの自分の家へ移動させた。 帝王は、宮殿がまるごと消え、姫が行方不明になったことに驚いた。大臣の入れ知恵で、アラジンが妖術を使ってこの事件を起こしたのだと思い込み、捕縛して処刑しようとする。しかしアラジンを慕っている人民たちが暴動を起こしそうになったのでとりやめ、願いにしたがって四十日の猶予を与え、アラジン単身で姫を捜索することになった。 あてもなく捜索を行うアラジンだが、魔法の指輪の存在を思い出した。鬼神を呼び出して館をもとに戻すよう要求するが、それはランプの鬼神の管轄になることで、手出しできないという。そこで、現在館がある場所へ連れていくように頼んだ。館につくと、ちょうどマグリブ人は外出している。姫は故郷から連れ去られたことを悲しみ、また毎夜マグリブ人の求愛をはねつけるのがわずらわしかったため、ハンスト中だったが、アラジンの姿を見ると生気をとりもどした。姫によると、マグリブ人はランプを肌身はなさず持ち歩いているという。アラジンは、指輪の鬼神によって猛毒の麻酔薬を入手し、姫にわたして策をさずける。マグリブ人が戻ってくると、姫はその求愛を受け入れるふりをして麻酔薬を飲ませる。すると猛毒がまわり、マグリブ人は死んでしまった。 アラジンはランプの鬼神を呼び出し、館をもとの場所へ戻させた。姫が無事にもどり、帝王はアラジンに謝罪した。そして憎きマグリブ人の死体を焼却させ、灰を捨てた。 それから数か月たち、姫は子宝をさずからないことを思い悩んでいた。そこで、石女を治療すると評判の聖女を呼び、診てもらった。聖女は、巨鳥ロクの卵を広間につるし、毎日眺めていれば治癒するだろうという。アラジンはそれを聞くと、ランプの鬼神を呼び出してロクの卵を入手するよう命じる。すると鬼神は烈火のごとく怒りだす。巨鳥ロクは、ランプの鬼神をはじめすべての鬼神たちの奉ずる存在、大ボスなのである。その願いが聖女の助言によるものであることを明かすと、鬼神はようやく怒りをおさめ、この顛末の筋書きをあかした。その聖女というのは、マグリブ人の弟の変装である。兄が死んだことを恨み、ロクの卵を持ち出して鬼神を怒らせるように仕向けたのだ。アラジンは聖女を呼び出すと、おもむろに首をはねた。 その後姫はぶじ子宝にめぐまれ、帝王の一族は幸せのうちに過ごした。帝王が亡くなると、アラジンはその後を継ぎ、善政を布いて人民に慕われた。
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