鉱業権とは? わかりやすく解説

こうぎょう‐けん〔クワウゲフ‐〕【鉱業権】

読み方:こうぎょうけん

一定の地域鉱区)で、鉱物採掘取得する権利土地所有権とは別個の権利で、経済産業局長の許可を受け、登録して成立する試掘権採掘権とがある。


鉱業権

読み方こうぎょうけん
【英】: mining right

(1) 鉱業権の意味態様石油天然ガス石炭金属鉱物などの地下存在する鉱物探鉱開発・生産し、生産物取得処分する権利
いずれの国においてもこの権利排他的なものとして法的に明確化され、特定地点特定鉱物探鉱採掘する権利を持つ者はだれであるかは一定の法的手続により明示されており、その特定者すなわち鉱業権者以外が当該鉱物採掘取得することはできない。この権利の源は、そもそも地下天然存在する鉱物はだれのものであるかについての法理由来するが、これには二通りあり、英米法では土地所有権はその地下にまでおよび、地下鉱物はその直上土地所有者所有物であるとしたのに対して欧州大陸国々では地下鉱物土地所有権とは別で、国またはその主権者である国王のものであるとの法理展開され確立されてきた。これら後者大陸法系)の国では国がその鉱物の鉱業権を特定の者に免許するという手段をとり、その手続と付与される権利およびそれに伴う鉱業権者義務定め鉱業法制定している。明治初期ドイツ法の体系導入したわが国鉱業法は「無主鉱物は国に属する」と規定して大陸法系法体制をとっている。
一方英米法国々では鉱物採掘権原私権であるので、鉱物採掘意図する者と土地所有者とが契約して後者がその土地所有権一部をなす地下鉱物採掘権一定の条件の下で前者賦与することになる。このような契約リース契約というが、その権利義務関係の内容幾多判例積み重ねによって慣習法common law)として確立されている。米国カナダには連邦所有地や州有地広くあり、連邦政府州政府がこれらの土地での鉱物採掘権リースするにあたっての手並びにロイヤルティの率、リースの期間などを定めた公法例え米国連邦法では Mineral Leasing Act 1920 など)があるが、権利義務詳細について慣習法任せており、国の領土全体カバーして鉱業権の権原政府与えている鉱業法存在しないこのため米国では 1920 年代後半から 30 年代前半にかけて石油乱掘弊害広がり、これを防止するため 1930 年代連邦指導の下で各州コンサーベーション法が制定され、これに基づく生産規制その他の措置実質的に同国石油鉱業操業規制している。英国およびオーストラリア第一次大戦後に「地下鉱物資源は国または連邦・州政府帰属する」として鉱業法制定した20 世紀初以来英・米などの先進国石油会社中東その他の開発途上国石油採掘得ようとしたとき、これらの国々専制君主国で鉱業関係の法体系は何もなかったし、またこれらの国々では土地所有権国王属していた。このためこれらの国々では外国石油会社国王との簡単な契約によって広範な鉱業権を得た。この種の契約による鉱業権は石油利権といい、その後契約内容の改訂重ねられ、特に 1970 年代になってからは OPEC の共通政策として「事業参加」の名の下にホスト国の国営石油会社利権一部持分譲り受けるという変化があり、なかには実質的に持分100 %ホスト国の国営会社移っている例もあるが、これらの国では今でも利権という形は変わらず鉱業法はない。一方開発途上産油国中には 1938 年メキシコ1951 年イラン1960 年インドネシア1974 年イラクなどの例のように、石油産業国有化法的に明確化した国々多くあり、これらの国々では法によって「石油の鉱業権は国営石油会社のみに与えられる」とされている。これらの国々なかには外国石油会社資金力技術力活用するために、国営石油会社外国石油会社生産分与契約サービス契約を結び、実質的にそれらの外国石油会社探鉱開発・生産操業行っている例が多いが、鉱業権、したがって生産原油取得飽くまでも国営会社みのものであり、外国石油会社は「コントラクター」と呼ばれ契約基づいて操業計画予算会計については年度ごとあるいは重大な意思決定ごとに国営会社承認受けて、その監督下に操業し生産原油一部分与され、あるいは特定の価格買い取る権利与えられているにすぎない。したがってこれらの契約下で操業する外国石油会社権利は鉱業権と区別して契約に基づく石油開発操業というほかない。
(2) 鉱業権の一般的内容: 米国・カナダを除く多く先進国などで広く行われている「鉱業法に基づく鉱業権の付与においては探鉱する権利採掘する権利とを別建てとしている例が多い。探鉱exploration permit)の下に探鉱行って稼行に足る鉱床発見した場合申請基づいて採掘権production licence)に切り換えられるのが通例である。ここでいう探鉱一般に試掘する権利含み排他的であるが、国によってはそれ以前段階として地質調査物理探査を行う権利別途探査としているところもあるが、一般にこれは非排他的である。また英国ノルウェー沖合石油鉱業法のように、探鉱物理探査層序試錐そうじょしすい}までで試掘を行うには採掘権取得しなければならない例もある。わが国場合探鉱する権利は「試掘権」、採掘する権利は「採掘権」と定めている。一般に試掘権の期間は 2 ~ 5 年短く採掘権の期間は 1530 年長くそれぞれ実情に応じて延長認められる規定がある。またいずれの国でも鉱区税鉱産税規定があり、採掘鉱区鉱区税探鉱鉱区それよりも高い。鉱業権の付与には国により先着順競争入札政府裁量の 3 方法があり、同一国でも場合により、地区により、そのいずれをとるか選べるようになっている国もある。わが国では先願主義とっている。また探鉱最低探鉱義務および/あるいは一定期間後の一部鉱区返還義務課している国とそうでない国とがある。米国とカナダにおけるリースには探鉱採掘権区別はないが、契約中には、x 年以内石油・ガス発見されなかった場合には契約終結させるという条項がある一方石油・ガス開発・生産始まればリース期間生産が終わるまでは続くとされている。石油利権並びに PS 契約サービス契約に基づく操業権利義務内容については、それぞれ各項を参照されたい。
(3) わが国の鉱業権:鉱業法上、登録を受けた一定の土地区域鉱区という)において、登録を受けた鉱物およびこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物採掘し取得する独占的排他的権利である。鉱業権は、通商産業局長に設定出願をして許可を受け、鉱業原簿登録されることによって発生する鉱物土地構成しているが、鉱業権は土地所有権とは別個の独立した権利であり、金属鉱物非金属鉱物石炭石油可燃性天然ガスなど 41 種の法定鉱物採掘し取得するためには、鉱業権によらなければならない。 
たがってたとえ土地所有者であっても鉱業権によらず法的鉱物採掘し取得すれば盗掘になり、罰則を受ける。土地所有権その他正当な権限行使により、鉱業権によらず土地から分離され鉱物鉱業権者所有帰す。(法第 8 条)鉱業権には、試掘権採掘権2 種類があるが、一般的に試掘権は、将来採掘を行うための準備として鉱物探査する権利であり、採掘権は、本格的な採掘事業を行うための権利であると解されている。なお、両者別個の権利であり、権利継続性認められていない。鉱業権は物権みなされ不動産に関する規定準用される。また、相続その他一般承継譲渡滞納処分強制執行仮差押えおよび仮処分目的となり、採掘権抵当権目的となるが、一方、鉱業権は国の特許行為によって創設されるもので、いろいろな監督規定公法上の義務課せられており、公権性質持った権利で、純然たる私権ではない。

鉱業権 Mining Right


鉱業権

登録を受けた一定の土地区域鉱区)で登録を受けた鉱物採掘する権利

土地所有権または採掘権により、砕石を行う権利より優先する

鉱業権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/03 03:58 UTC 版)

鉱業権(こうぎょうけん、英語: mining right)とは、鉱物を探鉱・開発・生産し、生産物を取得・処分する権利[1]


注釈

  1. ^ 鉱区において登録を受けた鉱物の賦存状況等を調査するためのもので、日本の法律上は採掘事業は行えない[2]
  2. ^ 特定鉱物の開発をするには、経済産業大臣から特定開発者として選定されなけれればならない(鉱業法第38条)。
  3. ^ 行政行為としては「特許」に分類される[1]

出典

  1. ^ a b c d 鉱業権”. 石油天然ガス・金属鉱物資源機構. 2022年4月17日閲覧。
  2. ^ 試掘権Q&A”. www.kyushu.meti.go.jp. 九州経済産業局. 2022年4月17日閲覧。
  3. ^ a b c d "鉱業権". 日本大百科全書. コトバンクより2022年4月17日閲覧
  4. ^ a b c "鉱業権". ブリタニカ国際大百科事典. コトバンクより2022年4月17日閲覧
  5. ^ "鉱業権". 世界大百科事典. コトバンクより2022年4月17日閲覧
  6. ^ "採掘権". 日本大百科全書. コトバンクより2022年4月17日閲覧


「鉱業権」の続きの解説一覧

「鉱業権」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



鉱業権と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「鉱業権」の関連用語




4
採掘権 デジタル大辞泉
96% |||||

5
鉱区税 デジタル大辞泉
96% |||||

6
試掘権 デジタル大辞泉
78% |||||

7
鉱区 デジタル大辞泉
78% |||||


9
74% |||||

10
鉱業法 デジタル大辞泉
70% |||||

鉱業権のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



鉱業権のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
JOGMECJOGMEC
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、 機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。 また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。 したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。 なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
※Copyright (c) 2024 Japan Oil, Gas and Metals National Corporation. All Rights Reserved.
このホームページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。
石油技術協会石油技術協会
Copyright © 2024, 石油技術協会 作井技術委員会 作井マニュアル分科会
建機プロ建機プロ
Copyright (c) 2024 SHIN CATERPILLAR MITSUBISHI LTD.All rights reserved.
キャタピラージャパン建機プロ -次世代の砕石業研究会-
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの鉱業権 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS