複動式内燃機関とは? わかりやすく解説

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複動式内燃機関

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/11 11:40 UTC 版)

複動式機関」の記事における「複動式内燃機関」の解説

1860年頃にジャン=ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアール発明したルノアール・ガスエンジンのようないくつかの初期ガス機関英語版)では定置式蒸気機関設計である複動式が取り入れられた。 しかし、内燃機関間もなく単動式に切り替えられた。これは2つ理由からである。 高速蒸気機関では両側大きな力がかかり、連接棒大きくなるのでクランク軸受大きくなるが、単動式ピストンでは力の方向一方向の為、軸受けの幅を狭める事が出来た良い混合気流れを得るために大きな面積が必要である一方で圧縮比高めるためにはシリンダーヘッド燃焼室容積小さくする必要がある。ルノワール・ガスエンジンのように蒸気機関から派生したシリンダーガソリンエンジンには不適当だったので、ポペットバルブ装備を基にした単動式のトランクピストン新たに設計しなおす必要があった。 高炉のための送風エンジン英語版)として製造され超大型ガスエンジンは1本か2本の大型シリンダー備え高炉ガス燃焼する。これらの一部は複動式のケルティング兄弟社英語版)製である。ケルティングのガスエンジンガソリンエンジンのような火花点火内燃機関ディーゼルエンジンのような圧縮点火内燃機関比較してピストン圧縮力は僅か、あるいは圧縮自体を必要としないので、狭く複雑な排気経路を持つシリンダー構造にもかかわらず、複動式の設計採用適切だった。 複動式シリンダー内燃機関では廃れたものの、バーマイスター&ウェイン英語版)は1930年以前2ストローク複動式(2-SCDA)ディーゼルエンジン船舶用生産した最初1929年イギリス自動車運搬船MV アメリカに7,000 hp機関備えられた。1937年には24,000 hpの2基のB&W SCDAエンジンMV スターリング・キャッスル(英語版)に備えられた。また、同社の複動式ディーゼル機関日本氷川丸でも使用された。 日本では他に、大日本帝國海軍において戦前型潜水艦多く艦政本部設計2ストローク複動型ディーゼルエンジン(艦本1号内火機械)を搭載していた。水上速力重視した為に高出力ではあるものの、騒音大きく排気圧力が低い為シュノーケル用いた主機関での水中連続航行不向きだった欠点があった事から、第二次世界大戦が始まると低出力であるが騒音低め燃費良く排気圧力が高いので主機での水中連続航行適した4ストローク単動式へと移行していった。 対向ピストン機関を複動式とする事は、潜水艦内の限られた空間を有効利用することにも繋がるために日本のみならずアメリカ海軍で導入模索された。1935年ポーパス級潜水艦USS ポンパーノ (SS-181)にてホーヴェン=オーエンス=レントシュラー(H.O.R.)製の直列8気筒複動型ディーゼルエンジン試験採用され、後にサーモン級潜水艦サーゴ級潜水艦にてH.O.R.製直列9気筒複動型ディーゼルエンジン全面採用された。H.O.R.エンジンドイツ海軍ライプツィヒ級軽巡洋艦採用されMAN製W7Z30/44型直列7気筒英語版)複動型ディーゼルエンジン製造取得し潜水艦向けに独自改良したものであったが、これら一連のH.O.R.製複動型ディーゼルエンジン高出力反面信頼性低くUSSポンパーノにおいてはメア・アイランド海軍造船所での試験航海中にも何度も故障起こし乗組員からは「売女ども」と渾名され、1942年トーチ作戦参加したUSS ガーナード (SS-254)のチャールズ・ハーバート・アンドリュース艦長は「私は4機のH.O.R.エンジンのうち、常に3機までしか使わず、1機は予備として残していた。それでもビスケー湾内で2機が故障してしまい、哨戒中断して帰投した。」と記しUSS ジャック(SS-259)のトーマス・M・ダイカーズ(英語版艦長至っては「H.O.R.エンジンお陰で30から40隻の日本商船救われたことだろう。」とまで酷評した結局結局、ポンパーノのH.O.R.製8気筒エンジン1942年フェアバンクス・モースエンジンに、後継艦の9気筒エンジン1943年ゼネラルモーターズのクリーブランド・ディーゼルエンジン(英語版部門製造したV型16気筒の16-248型2ストロークディーゼルに置き換えられた。日本海軍伊号第八潜水艦にて遣独潜水艦作戦成功させるなど複動式ディーゼルそれなりの成果残したに対してアメリカ海軍一連の複動式ディーゼル導入試み今日では完全な失敗評価されている。 これらの船舶用複動式機関最大出力重視したものが多かったが、イギリスでは燃費最大化目的複動式機関採用した例があった。1953年イギリス空軍採用されMark 3 空中投下式救命艇は、第二次世界大戦中太平洋戦線における日本陸海軍航空隊との戦闘得られ戦訓踏まえ搭載エンジンには「50英ガロン(約230リットル)の燃料1000マイル(約1600km)を航走できる事」という極めて厳し性能要件課された。ヴィンセント・モーターサイクル(英語版)社はこの要求を満たすため、「対向ピストンかつクロスヘッド方式2ストローク・ガソリン複動式機関」という類例見ない特異な設計を持つヴィンセント・ライフボート・エンジン(英語版)を完成させた。このエンジンヴィンセントエンジン技師、フィル・アーヴィング(英語版)と、同社社長のフィル・ヴィンセント(英語版)によって大戦中の1942年救命艇向けの省燃費エンジンとして既に特許取得されていたものであったが、当時英国航空省(英語版)が海上救難に対して無理解であった事や、太平洋戦線日本の敗戦により早期終結してしまった事もあり、戦後になるまで日の目を見なかったものであったHRD T5と名づけられたこのエンジン直列3気筒レイアウト中央シリンダー左右シリンダー掃気専用用いる事で燃費効率高めており、出力は僅か15馬力で、製造数生産配備された約50隻分に留まったが、今日ではその独創性からフィル・ヴィンセントとアーヴィングエンジン技師としてキャリアにおける傑作一つとして認識されている。 イギリスでは他に1946年にロイド・カーズ(英語版)が654ccの2ストローク複動式エンジン採用したロイド650発売したが、出力25馬力車体大きさに対して非力であったため最高速度55マイル毎時(85km/h)程度がやっとで、会社消滅する1950年までに600台ほどを製造したのみに終わっている。

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