紙面・論調・歴史
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現在の論調は、概ね中道右派・親米保守である。大衆主義とも評される。 2009年(平成21年)の新聞通信調査会の調査では、「最も保守的=10点、最も革新的=0点」という分布の中で、読売新聞は5.6点となって産経新聞の5.3点を上回り、全国紙の中で最も保守的であるとされた。日本経済新聞は5.2点、毎日新聞は5.0点、最も革新的な朝日新聞は4.4点である。 大垣藩士・子安峻、佐賀藩士・本野盛亨、柴田昌吉らの創業した読売新聞は、「文学新聞」として知られた。分かりやすい新聞、だれでも読める新聞を目指しただけでなく、西郷隆盛戦死の号外を自決した当日に出すなど早くから電信の導入をおこない、1877年 (明治10)、発行部数は2万5千部を突破して、早くも日本最大の発行部数を誇った。1887年 (明治20)には、立憲改進党や早稲田大学創設に携わった高田早苗が初代主筆となり、国会や憲法についての解説を記事にしたが、明治中期以降、部数が衰えた読売新聞は、1919年 (大正8)、白虹事件によって東京朝日を退社した松山忠二郎たちをむかえ、「大正デモクラシーの梁山泊」として、プロレタリア文学などの発表の場となるとともに、政治・経済の硬派記事を加え、部数も3万部から13万部に急伸させた。1923年 (大正12)、関東大震災の襲来にともない経営不振に陥った読売新聞は、1924年 (大正13)2月26日、警視庁刑事課長・警務部長を歴任し、虎の門事件で退官していた、まだ38歳の正力松太郎の手に委ねられる。 正力は、品川主計、小林吉政などの警察官僚を積極的に経営・販売に迎え入れ、「警察新聞」化をすすめる一方、アメリカのハースト系新聞社のイエロージャーナリズムにならい、警察ネタとセンセーショナルな記事を結合させる独自の紙面作りを推し進めた。とくに、暗黒街の取材に関しては他紙の追随を許さず、戦後は、原四郎社会部長の下、読売「社会部王国」を築き、「読売の在野精神」とよばれ、「庶民感覚」に根ざしたリベラルな論調を展開した。これは、絶対的な権力をもつ社長・社主の正力松太郎自身、自民党の政治家でありながら、社論に容喙することが少なく、また「販売の鬼」「販売の神様」と呼ばれた後任社長務臺光雄も、新聞の心臓部である編集に口を差し挟まなかったことが大きい。 1979年、渡邉恒雄の論説委員長就任以降、紙面の編集方針や論調は右派・保守主義となった。現在は基本的に自民党支持、改憲支持、日本経団連支持、新自由主義経済改革支持である。その一方、「大連立構想」以降の社説等で見られるように民主党やその支持母体である労働組合への論調は厳しいものが多いが、民主党「も」政権に参加する「大連立」には積極的であるという側面もある。そのためか、民主党については、方向が違うために批判する場合だけでなく、税制改革のように基本的な方向は現在の民主党主流派と一緒だが程度の違いがあるための批判という場合もある。その他に、主筆・渡邉恒雄が戦争経験者であるため、特に靖国神社(特に遊就館)における歴史認識には批判的で、小泉純一郎の靖国参拝には反対した[要出典]。 政府の政策に関し、政策分野によっては(憲法改正問題、防衛政策など)、社の見解(社論)を明確に打ち出すのが特徴である(「本社、憲法改正試案を発表」、1994年11月3日)。他方、不得意な政策分野については、基本的に官庁発表をベースに報道を行い、官庁発表に顕れていない問題意識を独自に掘り起こすような記事に紙面を割かないのも特徴である。また、個々の記者の見解が前面に出るような記事が少なく、社論に沿った記事がほとんどであることも特徴である。 原子力発電については正力松太郎が原子力委員会の初代委員長に就任した経緯から一貫して推進を主張しており、社説でエネルギー問題(例:石油価格高騰や再生可能エネルギー等)を論じた後の結びには、必ずと言っていいほど原子力発電推進の主張で締めくくっているほど原発には固執している。 また、新聞業界の権益を確保するために、民主主義の維持を大義名分として社説で新聞特殊維持を主張したり(2006年2月20日付社説)、新聞への軽減税率導入をたびたび主張したり(2015年12月20日・2016年2月20日付社説)するなどして、結局それが実施されるなど紙面の政治への影響も大である。その一方で先の軽減税率や2015年安保法案の報道に関しては、賛否両論があったにも関わらず、読売はそれに賛成する記事や意見だけを取り上げ、反対する意見は取り上げることはなかった。 5大全国紙中で唯一の人生相談コーナー「人生案内」を紙面に持っている。また教育面は早稲田大学と提携。また2008年に読売ウイークリーを販売不振で休刊させて以降、週刊誌を発行していない唯一の全国紙となった。 読売新聞の読者層について、木村雅文は大阪商業大学JGSS(Japanese General Social Surveys、日本版総合的社会調査)研究センターの調査をもとに、「日経や朝日と比べて高卒(新制)の割合、ブルーカラーの割合、非正社員の割合が多い」としている。これら学歴、職業を反映して読者世帯の平均年収は、毎日と並んで、日経、朝日、産経に次ぐとしている(いずれも木村、2004 )。
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