特殊な製法のワイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 01:55 UTC 版)
発泡ワイン 発泡ワインないしはスパークリングワインは、瓶内二次発酵などの製法により製造される発泡性のワインである。フランスのシャンパン、スペインのカバ、ドイツのゼクト、イタリアのランブルスコやスプマンテなどがある。 酒精強化ワイン 酒精強化ワインは、発酵の途中ないしは発酵が完了してからブランデーなどブドウを原料としたアルコールを添加したものであり、通常アルコール度数は15%以上になる。発酵の途中に酒精強化を行った場合はその時点で発酵が止まるため糖分の多く残った甘口のワインができあがる。発酵が完了してから酒精強化を行った場合は辛口となる。スペインのシェリー、ポルトガルのポートワインやマデイラなどが代表的。日本の酒税法では甘味果実酒にあたる。 貴腐ワイン 貴腐ワインは、ボトリティス・シネレアというカビの一種(貴腐菌と呼ばれることもある)がついたブドウから作ったワインのことを指す。貴腐菌により果皮に無数の穴が開き、そこから余分な水分が蒸発して糖度が上がり、非常に甘いワインとなる。また菌による代謝を受けるため組成成分が変化し、貴腐香と呼ばれる独特の香りを持つ。食後酒やデザートワインとして珍重される。フランスのソーテルヌやハンガリーのトカイが特に有名である。オーストリアの「ノイジードラーゼー」や、ドイツの「ベーレンアウスレーゼ」「トロッケンベーレンアウスレーゼ」も貴腐ワインとなる。 アイスワイン アイスワインは、樹上で凍ったブドウから生産されるワインである。水分は凍るが糖やその他の固体成分は凍らないため果汁が濃縮され、非常に甘いワインとなる。自然に濃縮された果汁を発酵させる点は貴腐ワインと同じだが、アイスワインはボトリティス・シネレアの影響は受けていないため貴腐香は持たない。 アイスワインの誕生はドイツのフランケン地方であった。ブドウ畑が予想していない寒波に襲われ、ブドウが凍ってしまった。諦めきれなかった農民たちは、凍ってしまったブドウでワインを造ったところ、とても糖度が高く美味しいワインとなっていた。この偶然からアイスワインが作られるようになった。当時は非常に貴重で高価だったため貴族の飲み物であった。 アイスワインとして最も有名なものはドイツのアイスヴァイン(Eiswein)である。カナダやオーストリアでも造られている。世界最大のアイスワイン生産国は安定した寒さが得られるカナダであり、本家ドイツを上回る高い評価を受けている。また、ナイアガラ地方にはアイスワインの生産で世界最大のワイナリーが存在する。日本ではアイスワインを定義する法律がないためにフルーツワインをアイスワインと称して販売しても違法ではないが、カナダ、ドイツ、オーストリアにおいてはアイスワインと名乗るためには、原料、収穫方法、温度などの厳格な基準を満たす必要がある。ドイツでは、アイスヴァイン用ブドウでとれる果汁は一房からティースプーン1杯である。地球温暖化に伴いブドウが凍結しにくくなり、2019年ヴィンテージでは史上初めて収穫できなかった。 氷結ワイン 氷結ワインは、冷蔵庫を用いて人工的にブドウを凍らせ、アイスワインと同様に水分を除いて濃縮された果汁を醸造するワインである。非常に甘い濃厚なワインとなる。 麦わらワイン(干しぶどうワイン) 麦わらワインまたは干しぶどうワインとは、収穫後に麦の藁やそれで編んだ筵の上で乾燥させて糖度を高めた葡萄から作られるワインのことを指す。貴腐ワインやアイスワインと同様に濃厚な甘口ワインとなるが、特徴的な干しぶどうあるいはアンズ、紅茶と思わせる風味を持つ。麦わらワインは、フランスでは「ヴァン・ド・パイユ」、イタリアでは「パシート」、オーストリアでは「シュトローヴァイン」などと呼ばれている。ドイツでは法改正の影響で現在では[いつ?]製造されていない。 にごりワイン にごりワインとは、発酵途中の、甘さが残ったもろみを濾過をしない状態で瓶詰めしたもの。瓶中に残る果実繊維や酵母、酒石酸などによりアルコール感を低減させ、ワインが苦手でも美味しく楽しめる味わいが特徴である。特に秋の新酒の時期に楽しまれている。最近では[いつ?]ブドウに限らず梅やブルーベリーなどブドウ以外のフルーツ原料を使うものも増えている。 シュール・リー 白ワインで澱引きをせずに熟成させたもの。フランスのロワール川河口地域に古くから伝わる方法。日本では、5か月以上の接触を必要とし、かつ6月30日までに瓶詰めされたものと規定している。6月30日という期日は夏期の高温による品質劣化を防ぐために定められている。 フレーバードワイン フレーバードワインは、普通のワインにブドウ以外の果実、果汁、香草、薬草などを加え、香りをつけたものである。カクテルのマティーニの材料としても使用されるベルモットや、サングリアなどが知られる。 ビオ・ワイン ビオ・ワインという場合、有機農法で育てられたブドウを原料とし、酸化防止剤を無添加、もしくは最小限の使用に抑えたビオロジック・ワインをさす。またその一部のバイオダイナミック農法で育てられたブドウを原料としたビオディナミ・ワインを指す場合もある。さらに野生酵母を用い、補糖や補酸を行わない、無濾過、無清澄、無着色などの様々な条件を満たして少量生産される。
※この「特殊な製法のワイン」の解説は、「ワイン」の解説の一部です。
「特殊な製法のワイン」を含む「ワイン」の記事については、「ワイン」の概要を参照ください。
- 特殊な製法のワインのページへのリンク