水ワサビの栽培法・特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 14:02 UTC 版)
「匹見ワサビ」の記事における「水ワサビの栽培法・特徴」の解説
渓流式わさび田。島根、山口、兵庫、岡山、広島県など、中国山地を中心に広く採用されている方式。中国山系ともいわれる。渓流に沿って、自然の地形を活かして築田される。 冬の降雪時、水の流れにより通常雪は溶かされるが、溶かしきれずに全てが雪に覆われることがある。 渓流式わさび田を修復する工事風景。重機の入れない場所に立地することが多く、全て手作業である。 収穫にむけ、農家がわさび田に移動する光景。勾配が急で足場が悪い谷沿いを1時間以上かけて移動することがある。収穫物は背負い籠一杯で運ぶのが精一杯だ。 匹見ワサビの収穫を手伝う農家の妻。夫がワサビを掘り起こし、妻がそれを調整するところ。 収穫直後の匹見ワサビ。この後下山し、自宅作業場でヒゲ根の部分を除去するなど、出荷準備に追われる。 すりおろした匹見ワサビの色と味について評価を開始するところ。左から匹見ワサビ(大神種)、匹見ワサビ(在来種)、静岡産ワサビ(真妻種)。全て、およそ3年かけて栽培されたものである。色については関東は緑が濃いものが好まれるのに対して、関西では緑が薄い、あるいは黄色が好まれる。 加工ワサビ最大手の金印社は、業務用粉ワサビについて発色の異なる2種類を製造販売している。左側:関西風 / 型番 V-118 右側:関東風 / 型番 V-18 ワサビの醤油漬。原材料として、ワサビの新芽だけを厳選して使用する。島根、広島、山口県などの中国地方では、この新芽のことを特に「ガニ芽」と呼び、希少部位である故に高級食材として重宝する。揮発性であるワサビの風味を持続させる、各家庭ごとに秘伝のレシピがある。 ワサビ神社に奉納される、神事の神楽。演目は「山葵天狗(やまあおいてんぐ)」、通称「ワサビ神楽」。病虫害を象徴した鬼がワサビ農家に襲いかかる光景。現在はスモークによる演出がなされている。この後、天狗が鬼を退治して、ハッピーエンドの結末を迎える。 明林寺文書・伝毛利輝元書状の複製。山口県の明林寺に保管されている同古文書には、中世末期の益田(匹見も含まれる)の領主であった益田元祥(益玄=益田玄蕃頭元祥)が、毛利輝元(1553 - 1625年)に対して「わさひの料理」でもてなし、感激させたとの記述がある。 文政3年(1820年)、浜田藩儒の中川顕允が編纂した「石見外記」の複製。原本は大田市の物部神社(513年創建)に保管されている。「蔊菜(ワサビ)、一名を山葵(やまあおい)ともいう。美濃郡疋(匹)見の山中に多く生産されている」と記載され、ワサビの薬理作用にも言及している。 匹見町の伝統料理を守る「萩の会」による「うずめ飯」のレシピは以下の通りである。具として、ゴボウ、サトイモ、ニンジン、厚揚げ、ナメコ、鶏肉を小さな角切りにする。 カツオ節と昆布のダシ、醤油、味醂で具を煮て、水溶き片栗粉でとろみをつける。 椀に具と少しの煮汁を入れ、下ろしたワサビをのせる。 その上にご飯を盛って、セリの葉を飾り、出来上がり。 匹見の水ワサビは、水質日本一の清流高津川水系の澄んだ水と、渓流式と呼ばれるワサビ田で栽培される。静岡では畳石式、長野では平地式というワサビ田が大部分であり、これらは湧き水を水源とし、重機を使用し大規模な築田を行うことが多い。また、比較的アクセスが容易な場所に位置している。一方、渓流式は、主に渓流を水源とし、山奥の渓流沿いに自然の地形を最大限に活かし、専ら人力で小規模に築田される。また、アクセスが容易な場所になく、一般に登山上級レベルの健脚が求められることが少なくない。 匹見の水ワサビ栽培における特徴は、ゆっくりと成長することである。これは、限りなく自然に近い環境である「渓流式」と呼ばれる栽培方法による。湧き水(地下水)の水温は年間を通してほぼ一定なのに対して、渓流の水は常に外気に晒されており、その水温は外気に影響されやすい。そのために、渓流式は四季の移り変わりごとに、水温も著しく変化する。一方でワサビの生育水温は8 - 18.6℃(適温12 - 13℃)と狭く、それよりも高くても低くても成長が止まる。したがって、渓流式による水ワサビは、常に成長を続けることはなく、年輪の様にはっきりと成長と休息を繰り返す。 水ワサビ根茎の食味・外観に関する特徴として、以下3点がある。 清冽な辛みの後、穏やかな甘みが広がる 香りと粘りがある おろし色は緑色が薄い(在来種は黄色や白が多い) この甘みについて、元・ホテルオークラ和食総料理長の星則光は、次の様な分析をしている。「匹見のワサビは、ただツンと辛いだけでなく、辛みの中に甘みがある。それは多分、雪の中にあるからだと思う。ほら近年は、雪の中に保存しておいた大根がおいしいといわれるようになってきたでしょう。あれですよ。」。 粘りは、すりおろし後の辛味・香味成分の発散を防ぎ、品質を長く持続させる効果があるとされる。同時に、ネタとシャリを馴染ませる役割も強くなる。例えば、数の子やアワビなど水っ気が強く硬いネタでは、容易にシャリから滑ってしまうが、ワサビを使えば、滑り落ちにくくなる。粘りがあればなおさらだ。 おろし色について、東京では緑の濃い静岡産ワサビが好まれるのに対して、京阪神地方では緑の薄い島根産が好まれる。加工ワサビ最大手の金印社は、業務用粉ワサビについて発色の異なる2種類を製造販売、関西風と関東風があり関西風は発色を抑えているとされる。
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