日本の鉋(和鉋)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 02:42 UTC 版)
平鉋(ひらがんな) 分類上の名称は平鉋であるが、実際はそのように呼ばれる事はほとんど無く、単に鉋と呼ばれる。 鉋には二枚刃と一枚刃の鉋があり、二枚刃の鉋は逆目を止める為に明治時代に西洋鉋から移入され、関東大震災後の急激な材木需要により粗悪な木材を加工する必要性から普及した技術である。一枚刃で逆目を止める為に刃口を調整するのは極めて高度な技術が要求されるが、二枚刃では簡単に逆目を止める事が可能である。 1寸4分〜2寸までの幅の鉋が主で、寸八(1寸8分)の鉋が最も汎用性があるとされている。また仕上げの段階に応じて、荒仕子鉋(あらしこ、寸4〜寸6まで)、中仕子鉋(ちゅうしこ、寸8が多い)、上仕子鉋(じょうしこ)の三種類がある。 長台鉋(ながだいかんな) 通常より台が長く、より真っ直ぐに削れるように作られている。少し短めの中台鉋もある。長台鉋は板の側面などを直角に削る際、摺り台という治具とあわせて使われる事も多い。その場合、鉋台の側面を常に修正する必要があるので、スリ台鉋といって側面を厚く作ることがある。 また木口台・留台といった治具で材料を特定の角度に削る際にも、定規面が広くなるため用いられることがある。 反り台鉋(そりだいかんな) 丸太や反った凹面や凸面を削るのに用いられる鉋。工作物それぞれの曲線に対応する為に、作業者自ら古い鉋台を利用して自作する事が多い。鉋台に対して、縦と横方向いずれかの二次曲面が削れる外丸、内丸と、三次曲面用の四方反、があり、内丸四方反は存在しない。この鉋は材料と鉋台の接地面積が少なく、台の減りが極めて早いため、刃口に真鍮等の金属を用いる事も多い。 更に、そり台と際鉋の機能を併せ持ったかんなも存在する。 際鉋(きわかんな) L面の内側を削ったりするための鉋。刃が左側面、右側面どちらか一方に付いており、際側の仕上げを重視するため、際部分の刃を尖らせて加工材に先に切れ込む様になっている。それぞれに大小がある。定規付のものもある。 火布倉鉋/比不倉鉋/樋布倉鉋(ひふくらかんな) L面の内側を削るかんなで、主に蟻溝、蟻桟の側面を調整するためのに用いられる。刃が左側面、右側面どちらか一方に付いている。鋭角の溝の側面を仕上げるために、小刀のような先が尖った鉋身が用いられる。 導突鉋/木口鉋(どうつきかんな/こぐちかんな) L面の内側を削ったり、小口台と併用、又は単体で小口を削るための鉋。刃が左側面、右側面どちらか一方に付いている。際鉋と似ているが普通の台鉋と似た刃を斜に仕込んでいる所に違いがあり、刃の傾斜が逆に成っていて、際が最後に切れるようになっている。 五徳鉋(ごとくかんな) この鉋1丁で平鉋、際鉋右・左、脇取右・左の5つの鉋の機能を持つ。ただし実際は平鉋として用いられる事はほとんどない。 立鉋(たちがんな)/台直し鉋(だいなおしかんな) 主に鉋台を調整(台を直す)する小鉋。刃は台に対してほぼ直角に仕込んである。その他竹や黒檀といった普通の鉋では加工しにくい素材の鉋がけにも用いられる。 底取り鉋(そことりかんな)/作理鉋(しゃくりかんな) 敷居や鴨居の類の凹の底面を仕上げる鉋で、L面の内側などの仕上げ削り作業にも使いる。一般には刃巾、7分を多く使うが、5分〜1寸2分位の巾ものもある。 一般的な底取り鉋は鉋屑が鉋台側面から排出される様に作られているが、大阪作理鉋は鉋屑が、普通の鉋同様上面から排出される。 際の仕上げを重視する場合は、鉋身の前方に櫛刃と言われる罫引き刃を追加し、際に罫引きを行いながら切削する場合もある。 脇取り鉋(わきとりかんな) 溝の側面を仕上げる鉋で、底取り鉋とあわせてつかわれる。刃が左側面、右側面どちらか一方に付いており、それぞれに大小がある。 小穴突き鉋(こあなつきかんな) 細い溝を作るための鉋で側面定規を使う。溝の幅に応じて1分〜3分位までが良く用いられる。 面取り鉋(めんとりかんな) 糸面から大きな面までガイドによって正確に取れる鉋で、45°の角度で面取りする自由角面取り鉋が一般的である。 外丸面、内丸面、几帳面、平几帳面、坊主面、銀杏面、自由猿面、剣先面、胡麻柄面、入子面、片紐面など、面の種類に応じた鉋を揃えなければならない鉋で、使用者自ら刃を面の形に加工したり、複数の刃を用いて複雑な面を取る鉋を自作する事もある。 飛行機鉋(ひこうきかんな) 組子や障子の桟等を数本まとめて同じ厚みに削る為の鉋。平鉋の下端の両側に取りはずし可能な定規を付ける事と、材料の浮き上がり防止の為に刃口前方にバネで加工材を押さえつける機構が付く。 印籠鉋(いんろうかんな) 建具類の隣合う枠にそれぞれ凹凸を付け、隙間なく閉じた時に風雨を防ぐ機能を建具に持たせるための鉋である。凹面を削る鉋(雌木用)と、凸面を削る鉋(雄木用)と、二つが一組になっている鉋で、定規が付属する。雄木用の刃には、二枚の刃を並べて仕込んだものもあり、また凹凸の形には台形や半丸など幾つかの形がある。 名栗鉋(なぐりかんな) 際鉋の刃先と刃先部の台を丸くした形の鉋で、木材表面に古民家等に見られる釿のはつり跡を模作するための鉋である。名称は釿で「打つ(殴る)」から転じたもの。 南京鉋(なんきんかんな) 主に椅子等の製品の曲線を仕上げるための小鉋で、鉋左右に突き出た棒を持って操作する。また必要に応じて使用者が自作するところが多い鉋でもある。この鉋も台の減りが極めて早いため、刃口に真鍮等の金属を用いる事も多い。 隅突鉋(すみつきかんな)/押し鉋(おしかんな) 西洋鉋と同じく押して用いる鉋。鉋身が台頭ぎりぎり若しくは台頭前端部に付いている事が特徴であり、普通の鉋では加工不可能な引き出しの内側隅の加工等に用いられる。洗い屋が多用する事で知られる。 底取り隅突鉋なども存在する。 逆刃鉋/返し刃鉋(さかばかんな/かえしばかんな) 堅木や唐木を加工するために用いられる鉋。刃の鎬面が上面を向く様に台に仕込まれており、切削角が60°以上ある。立鉋より大胆に堅木を削る事が可能である。 また立ち鉋の刃を逆に入れた返し刃立鉋も存在する。この形式の鉋は刃裏の先端まで台の背中馴染が接触しているため、切削時の刃先の振動が抑えられ刃先に負担がかかる堅木や唐木を通常の仕込みの鉋に比べて綺麗に削る事が出来る。三味線職人が多用することで知られている。 大鉋(おおかんな) 平鉋と同じ構造で、刃幅3寸から5寸程度のものが多い。中には1尺ほどのものもある。刃の幅が広いため鉋枕や、削りムラの無い仕上げが可能な鉋である。ただしこの鉋は調整や研ぎに普通の鉋以上の技術が要求される。 箱根寄木細工において寄せ木のスライスにも用いられる。 ボード鉋(ぼーどかんな) 主に石膏ボードの大きさを調整する「側合わせ」という作業や、面を取ったりするための鉋。ネジを使った従来の鉋とは全く違う刃の固定方法が用いられている事が多く、さらにカッターナイフの刃を流用出来るものがが多い。 デコラ鉋(でこらかんな) 主にメラミン樹脂化粧板の端部を面取りするための鉋。デコラは住友ベークライトの登録商標で、この種の材の通称になっている。非常に硬く均質な材質を削るために、HSSの刃、下場のステンレス張り、一枚刃という作りのものが多い。 替刃式鉋(かえばしきかんな) 従来の鉋の刃先だけを交換出来る様に作られている鉋。研摩の手間を省く事が出来る。替刃は使い捨て又は再研磨可能な製品もある。鋼材は様々である。 こそげ/洗い屋小刀(あらいやこがたな) 洗い屋だけが用いる鉋。台が無く、鉋身とそれに直接つながった持ち手だけの様なスクレーパーの様な構造である。上手く使えば鉋の様な切削が可能。 組子鉋 組子を作るための専用の鉋で、ゴマガラ鉋、麻の葉鉋、花形組子鉋、切鉋、等多くの種類がある。普通のかんなとの一番の違いは、鉋身が彫刻刀の三角刀のように屈折していることである。 刃の角度が組子の折り曲げる部分の角度として再現される。
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