差別的選挙法の一般的な禁止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/28 02:18 UTC 版)
「投票権法 (1965年)」の記事における「差別的選挙法の一般的な禁止」の解説
第2節は、いかなる司法管轄区域も「投票の資格付けあるいは投票に先立つ要件判断あるいは標準・手段あるいは手続きを実行し、人種・肌の色・言語的少数者という状態を理由として投票権を否定し、あるいは剥奪する」ことを禁止している:37。最高裁判所は、民間の原告がこの禁制を強制するために訴訟を起こすことを認めている:138。1980年の「モービル市対ボールデン事件」では、この法が1965年に法制化された時に、第2節は単純に憲法修正第15条を言い直しただけであり、差別の目的で意図的に実行されあるいは維持されている投票法のみを禁じたと裁定した :60–61。1982年、議会は第2節を修正して「結果試験」を創設し、投票法が意図的に差別目的で実行されあるいは維持されているかに拘わらず、差別の「効果」がある投票法を禁じた:3。1982年改訂は、結果試験であっても、保護された少数集団が比例代表を選出する権利を保障するものではないこととした。 ある司法管轄区域の選挙法がこの一般条項に違背しているかを判断するとき、裁判所は1982年改訂に付随した上院司法委員会の報告書に挙げられた要素(上院要素)に依存してきた。それは次のものである。 投票権に影響する司法管轄区域における公式の差別の歴史 その司法管轄区域において投票が人種で2極化されている程度 その司法管轄区域が過半数投票要件を使用している程度。通常大きな選挙区であり、投票時の差別の機会を強める傾向にある「黒点投票」 (bullet voting) などの仕組みを禁止するものである 少数派の候補者が司法管轄区域の候補者選択過程があるとして、それへのアクセスを否定されるか その司法管轄区域の少数派が教育・雇用・医療など社会経済的分野で差別されている程度 政治的運動において、公然のあるいは微妙な人種的アピールが存在するか 少数派の候補者が選挙に勝てる程度 当選した役人が少数派集団の関心事に反応しない程度 異議申し立てされる法に対する政策の公正化が弱いものであるか この報告書は、これら要素の全てあるいは過半数が選挙の道具に存在して差別に繋がっている必要はないことを示しており、またこのリストが完全なものではないことも示している。裁判所はその裁量で付加的な証拠を検討できる:344:28–29。 第2節は、2種類の差別を禁じている。すなわち「投票の否定」と「投票の弱体化」であり、否定とはある人が票を投じる機会を否定されるか、その票が適切に数えられないこと、弱体化とはある人物の票の実質的な強度が減ずることである:691–692。第2節に関わる訴訟の多くは投票の弱体化に関わり、特に司法管轄区域の選挙区割り計画あるいは、全体選挙区/中選挙区の利用で、少数派有権者が好む候補者を選出するだけの票を集められないということである:708–709。中選挙区の選挙は、団結した多数派集団が司法管轄区域の全ての議員を当選させることで、少数派有権者の投ずる票の強さを弱めることができる:221。選挙区割り計画は、少数の地区に多くの少数派者を「詰め込む」か、多数の地区に少数の少数派者を置くことで少数派集団を「割る」かによって、少数派の票の効率を悪くするよう区割りを変えることである。 「ソーンバーグ対ジングルズ事件」(1986年)では、最高裁判所が「潜水を通じた票の弱体化」という言葉を使って、ある司法管轄区域が全体選挙区/中選挙区制度の利用あるいは選挙区割り再編計画によって、少数派のの票を弱体化したという主張を説明しており、そのような主張を第2節の下で評価する法的な枠組みを作った。「ジングルズ」試験の下で、原告は下記3つの前提条件の存在を示す必要がある。 人種的あるいは言語的少数者集団が、「小選挙区において多数を形成できる数があり纏まっている」 少数派集団が「政治的に団結している」(すなわち集団の構成員が同じ投票を行う傾向にある) 「1つのブロックとして十分な多数派の票が、通常は少数派の好む候補者を負かすことなる」:50–51 第1の前提条件は「纏まり」要件と呼ばれ、多数派・少数派選挙区(選挙区の有権者の半数以上が少数派人種または民族である選挙区)が創設されるかに関わっている。第2と第3の前提条件は2つ合わせて「人種で2極化された投票」あるいは「人種ブロック投票」要件と呼ばれ、異なる人種集団の投票パターンが互いに異なるかに関わっている。ある原告がこれら前提条件の存在を証明するならば、その原告はさらに残りの上院要素やその他の証拠を使い、「状況の全体性」の下で、その司法管轄区域の再地区割り計画あるいは全体/中選挙区の選挙が少数派集団の能力を消して、その選ぶ候補者を選出させないことを、示さねばならない:344–345。 その後の訴訟で「潜水を通じた票の弱体化」の輪郭をさらに定義することになった。「バートレット対ストリックランド事件」(2009年) で、最高裁判所は、第1の「ジングルズ」前提条件は、少数派集団の大きさが地区で多数派を形成するほど大きくなくとも、多数派集団の中から「垣根を越えた」票を得ることで好みの候補者を当選させられる程度に大きいならば、原告がその司法管轄区域の中における潜水クレームをやり遂げることができない場合のみ満足され得ると裁定した:A2。対照的に最高裁判所判決は、異なる保護された少数派集団が連衡として「ジングルズ」前提条件を集合的に満足できるかについて述べておらず、下級審はこの問題について判断が分かれた。 最高裁判所は「ジョンソン対ド・グランディ事件」(1994年)で、「状況の全体性」試験に関する追加的ガイドを与えた。「ジングルズ」前提条件3個の存在は、特に選挙区再編成計画に異議申し立てする訴訟において他の要素がそのような判断に対して重きをなす場合、潜水を通じた投票の弱体化の可能性を証明するには不十分である可能性があることを強調した。特に、裁判所は、「ジングルズ」前提条件3個が満足される場合であっても、ある司法管轄区域は、その選挙区再編成計画に少数派集団の人口に応じた多くの多数派・少数派地区を含む場合は、投票の弱体化にはならないと裁定した。この判断は、第2節が司法管轄区域に多数派・少数派地区の数を最大にすることを求めてはいないことを明らかにした。この意見は多数派・少数派地区の比率を区別してもおり、第2節が明確には少数派に保証していない選挙「結果」の比率から、彼らの選ぶ候補者が当選する比例的「機会」を持たせられるものである:1013–1014。 3番目の「ジングルズ」前提条件に関する問題が未解決のまま残っている。「ジングルズ」で最高裁判所は、人種的多数派のメンバーが人種の問題をもとに投票に動機づけられ、支持政党など人種が重なるかもしれない検討項目に基づいていないので、ブロックとして投票することを原告が証明しなければならないかについて、判断が分かれた。裁判所の絶対多数は、そのような証拠を求めることが、議会の第2節を「結果」試験とする意図に反することになると言っているが、ホワイト判事は、その証拠が選挙の計画が「人種的」差別に繋がることを示すために必要であると主張した:555–557。「ジングルズ」以降、下級裁判所はこの問題の判断が分かれている。 第2節の訴訟の大半が潜水を通じた投票弱体化の主張に関するものだったが:708–709、裁判所はこの条項の下で他の種の投票弱体化についても検討してきた。「ホルダー対ホール事件」(1994年) で、最高裁判所は、少数派の投票が小さな大きさの政府、例えば委員1人の郡政委員会で弱体化されたというクレームは、第2節の下では訴えられないと裁定した。多数判事は、政体にとって画一でなく、弱体化は行わない「ベンチマーク」の大きさが存在しており、第2節の下で救済を不可能にしていると、理由づけた。別の種の投票弱体化は、ある候補者が過半数選挙で選ばれるという司法管轄区域の要件から生じるかもしれない。過半数選挙要件では、少数派集団の選んだ候補者が単純に最大多数票を得たとしても、決選投票では多数派が別の候補者で結束すれば落選することになる。最高裁判所は、そのようなクレームが第2節の下で訴えられるかは検討しておらず、下級審は同じ問題で異なる判断をしている。 投票の弱体化についてのクレームに加えて、裁判所は第2節の下に持ち出された投票否定のクレームも検討してきた。1974年の「リチャードソン対ラミレス事件」では、最高裁判所が、重罪による投票権はく奪法は第2節に違背していないと裁定した。理由はいろいろあるが、憲法修正第15条の第2節はそのような法を許容しているからだった:756–757。ミシシッピ州の連邦地区裁判所は、ある人が州の選挙と地方の選挙で別々の有権者登録を必要とする「二重登録」システムが、上院要素に照らして人種的に異なる効果を持つならば、第2節に違背する可能性があると裁定した:754。2013年から、連邦裁判所下級審は第2節の下に持ち出された有権者ID法に対する様々な異議申し立てを検討し始めている。
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