安倍・ロウハーニー政権期(2013~2020年)
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「日本とイランの関係」の記事における「安倍・ロウハーニー政権期(2013~2020年)」の解説
2005年にハータミー大統領が退陣してからは、長らく日本とイランの首脳会談は行われていなかった。しかし、2012年12月の衆院選の結果を受けて日本で安倍晋三が内閣総理大臣に返り咲き、イランでは強硬派のマフムード・アフマディーネジャード大統領が最長任期を満了して迎えた2013年6月の大統領選の結果を受けて同年8月からハサン・ロウハーニーが大統領に就任すると、両国の首脳は急速に関係を改善させた。安倍首相は、いち早くロウハーニー大統領の就任に対して祝辞を述べ、翌9月には首相の親書を携えた高村正彦総理特使をイランに派遣してロウハーニー大統領らと会談を行った。近年では、ニューヨークで毎年開催される国連総会など第三国の国際会議に参加する機会を捉えて安倍首相とロウハーニー大統領が会談することが慣例となっている。具体的には、2013年9月26日(現地時間、以下同)に国連総会開催中のニューヨークでロウハーニー大統領が就任してから初の首脳会談が実現し、翌2014年9月23日には同じく国連総会開催中のニューヨークで二度目の首脳会談を行った。また、2015年は、9月27日に国連総会開催中のニューヨークで定例となった首脳会談を行っただけではなく、遡る4月22日にも60周年記念を迎えたアジア・アフリカ会議を開催中のジャカルタで首脳会談の場を設けた。2016年9月、国連総会開催中のニューヨークで、同地では4度目、通算で5度目となる安倍・ロウハーニー首脳会談が行われた。尚、2016年8月には、革命直前のイランを訪問した福田赳夫首相以来38年ぶりとなる日本の現役首相のイラン訪問が予定されていたが、急遽、日本側の都合により安倍首相のイラン訪問の中止が決定された。政府筋によると、安倍首相はアメリカ大統領選の実施を待ち、その後にイラン訪問の是非を再検討する意向とのこと。 2017年1月8日の夜(現地時間)、ホメイニー師の弟子でありイラン革命の成就と防衛に生涯を捧げた、イラン公益評議会議長にして元大統領のハーシェミー・ラフサンジャーニーが心臓発作によりテヘラン市内の病院で逝去、82歳であった。翌9日、岸田文雄外務大臣が哀悼のメッセージを発出、10日には安倍首相がラフサンジャーニー元大統領の功績を偲びつつ、心からの哀悼の意を伝えるメッセージを発出した。また、この訃報を受けて、鈴鹿光次駐アフガニスタン日本大使が在アフガニスタン・イラン大使館を訪問してバフラーミー駐アフガニスタン・イラン大使(ペルシア語版)と会談、テヘランでラフサンジャーニー元大統領と何度か会って話したことがある旨を挙げて故人を回想しつつ、得意のペルシャ語で「ラフサンジャーニー師の死去に際して、深い追悼の意を表明する。/同師とのすばらしい思いでとともに/2017年1月10日/鈴鹿光次・駐アフガニスタン日本大使」と記帳した。 2017年5月19日、イランで大統領選挙(ペルシア語版、英語版)が行われ、翌20日に現職のロウハーニー大統領の再選が発表されたことを受けて、同日中に安倍首相および岸田外相がロウハーニー大統領に宛てて当選を寿ぐ祝辞を送った。 2018年5月8日、ドナルド・トランプ米大統領は他のP5+1(ペルシア語版、英語版)諸国(常任理事国5ヶ国およびドイツ)やイランとの事前調整が不十分な状況で核合意からの一方的な離脱を宣言。これを受けて翌9日、河野太郎外務大臣は「我が国は国際不拡散体制の強化と中東の安定に資する核合意を支持しており,引き続き関係国による建設的な対応を期待します。」と表明し、日本はアメリカの対イラン制裁に同調せず引き続き核合意維持を支持するとの談話を発表した。しかしトランプは同年11月にイランに対する経済制裁を復活させ、イランもこれに反発するなど関係が悪化。2019年6月12日より安倍首相がイランを訪問しロウハーニー大統領と最高指導者アリー・ハーメネイーと会談、アメリカとの橋渡しを試みることとなった。 2019年6月12日、当初の予定通り安倍首相によるイラン訪問が実現した。同日の夕刻、安倍首相はロウハーニー大統領と会談して、日本からイランへの医療、環境、防災等の分野における協力実施を表明した上で、イランが地域大国として中東の安定化に建設的な役割を果たすよう要請した。また、防災分野における協力は口先だけの外交辞令に止まらず、イランにおける洪水被害に対する支援として日本が合計250万ドルの緊急無償資金協力を実施することがロウハーニー大統領との首脳会談上で伝達された。翌13日の午前、安倍首相はハーメネイー最高指導者と会談して、ロウハーニー大統領に対して主張したのと同様にイランが地域大国として中東の安定化に建設的な役割を果たすよう要請した。2019年の安倍首相によるイラン訪問は、現地では概ね歓迎されて、日本とイランの二国間関係の強化に成功したと言える。しかし、その一方で、ハーメネイー師は安倍首相との会談において「安倍首相の善意と誠実さは疑わないが、トランプ大統領はメッセージを交換するに値する相手ではない。トランプ氏には返事もしない」、「トランプ大統領はイランと対話の用意があると述べつつ、安倍首相と会談した後、石油化学分野に対する制裁を科しており誠意がない」と述べるなどトランプ大統領に対する根強い不信感を表明しており、安倍首相のイラン訪問はアメリカとイランの関係修復に何ら資することはなかった。なお、中東ジャーナリストの川上泰徳は「米イランの仲介という点では、安倍首相の訪問は完全に失敗だった」と事実上の指摘をしている。安倍首相はイラン公式訪問の最中、米国とイランの関係改善を仲介するために米・イラン二国間の秘密協議を東京で設定すると打診したが、この仲介案は実現しなかった。 2019年12月20日、ロウハーニー大統領が現職の大統領として19年ぶりに日本を訪問し、同日18時から3時間以上にわたって安倍首相との首脳会談を行った。安倍首相は、アメリカの核合意(JCPOA)離脱に対するイランの過剰な報復措置について懸念を表明した上で国際原子力機関(IAEA)との連携が重要であるとの認識を示したが、これに対してロウハーニー大統領は、イランとしても核合意の維持が重要であると述べつつも報復的な核合意履行停止措置を取らざるを得なかったイランの立場を説明した。また、米軍の指揮下に入らず自衛隊が独自にペルシア湾地域を航行する船舶を警護していることについて安倍首相から説明があったが、ロウハーニー大統領は他国に依らず自らのイニシアティブで航行の安全確保に貢献する日本の意図に理解を示した上で、日本がこれらの活動をイランに透明性を持って説明していることを評価した。 2020年8月28日、安倍首相は首相官邸で開いた記者会見で、自身の体調悪化を理由に内閣総理大臣職を辞任することを表明。
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