処女
『美しい星』(三島由紀夫) 「自分の故郷は金星だ」と信ずる大杉暁子は、同じく金星人と自称する美青年竹宮と出会い、ともに内灘の砂丘へ円盤を見に行く。やがて妊娠した暁子は、「自分と竹宮との間には何事もなく、自分は処女懐胎したのだ」と考える→〔宇宙人〕3。
『ギリシア哲学者列伝』(ラエルティオス)第3巻第1章「プラトン」 プラトンの父はアリストン、母はペリクティオネである。アリストンは、娘時代のペリクティオネを無理やり自分のものにしようとしつつ、思いとどまっていた。その頃アリストンは、夢でアポロン神の幻を見た。それでアリストンは、子供が生まれるまではペリクティオネに触れず、清らかなままにしておいた。こうして生まれたのがプラトンである。
『マタイによる福音書』第1章 マリアはヨセフと婚約していたが、2人が一緒になる前に、身ごもっていることが明らかになった。天使がヨセフに「恐れずマリアを迎えなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を産む」と夢告した。ヨセフはマリアと結婚し、男の子が生まれるまでマリアと関係することはなかった。
『わが女学生時代の罪』(木々高太郎) 女学生の「私(木村りみ子)」は処女でありながら妊娠し、女児を出産した。「私」は同学年で同姓同名の木村里美子と、深い同性愛関係にあったが、里美子は富田銀二とも肉体の交渉を持った。そのため富田銀二の胤(たね)が、里美子を媒介として、「私」の胎内に入ってしまったらしかった〔*後に富田銀二は、「私」と女児の存在を知る。「私」は富田銀二から逃れるため病院に入院し、精神病学の教授・大心地(おおころち)先生から精神分析を受ける〕。
*→〔性交〕8の『南総里見八犬伝』第2輯巻之1第12回~巻之2第13回。
★2.処女懐胎を疑う女。
『ヤコブ原福音書』(新約聖書外典)第19~20章 イエスを懐胎し出産したマリアが本当に処女なのかどうか、サロメは疑う。サロメはマリアの身体に指を入れる。その指は火で燃え落ちそうになった。
★3.花嫁がすでに処女でない。
『陰火(紙の鶴)』(太宰治) 「おれ」は処女でない妻をめとって、3年間それを知らずにいた。「おれ」が妻に問うと、妻は「たった1度」と囁(ささや)いた。しばらくして「2度」と訂正し、それから「3度」と言い、やがて「6度ほど」と言って泣いた。翌日、「おれ」は気をまぎらすために、さまざまなことをした。友人のアパアトへ行き、将棋を何番もさし、鼻紙を折って鶴を作った。
『業苦』(嘉村礒多) 圭一郎は19歳の時、2歳上の咲子と結婚するが、「彼女は処女でなかったのではないか」と疑い続け、果して咲子が或る男と2年間も醜関係を結んでいたことを知って、懊悩する。以来彼は異性を見るたびに、「処女か否か」をまず考えるようになる。やがて圭一郎は薄幸の処女千登世と出会い、駆け落ちする。
『とりかへばや物語』 権大納言家の姫君は、尚侍(ないしのかみ)となって帝に寵愛されたが、彼女はかつて男装していたことがあり(*→〔男装〕5)、その折、宰相中将に本性を見破られて、男児を産んでいた。そうした事情を知らぬ帝は、尚侍を我がものとした夜、彼女が処女でなかったことを残念に思った〔*しかし帝の彼女への愛は深く、2人の間に生まれた子は次代の帝になる〕。
『トリスタンとイゾルデ』(シュトラースブルク)第16~18章 マルケ王の妃と定められたイゾルデは、愛の媚薬を飲んだため騎士トリスタンと関係を持ち、処女でなくなった。彼女は、マルケ王との初夜の床に、身代わりとして側近のブランゲーネを送りこみ、王を欺いた。
『予告された殺人の記録』(ガルシア=マルケス) 花嫁アンヘラはバヤルドと結婚式をあげたその夜のうちに、「処女でない」との理由で実家に送り返された。一家の名誉のため、アンヘラの兄弟である双子が、彼女を犯した男サンティアゴを刺し殺した。
*花嫁が処女でなかったので、殺してしまう→〔初夜〕3の『本陣殺人事件』(横溝正史)。
『キリシタン伝説百話』(谷真介)100「雪の三タ丸屋(サンタマルヤ)」 昔、るそんの国の貧しい大工の娘に、丸屋という美しい娘がいた。丸屋は幼い頃から、「どうしたら、人々の魂を救うことができるだろう」と考えていた。ある時丸屋は、天の神様のお告げを聞き、「私は嫁に行かず、一生びるぜん(処女)を通します」と誓いを立てた→〔蝶〕6。
『ギリシア哲学者列伝』(ラエルティオス)第9巻第7章「デモクリトス」 ヒッポクラテスが若い娘を連れて、デモクリトスのところへ訪ねて来た。最初の日には、デモクリトスは「こんにちは、娘さん」と挨拶したが、次の日には「こんにちは、奥さん」と挨拶した。実際その娘は、夜の間に処女を失ってしまっていたのである。
『潮騒』(三島由紀夫)第13章 歌島屈指の金持ち宮田照吉の娘・海女の初江と、漁師の久保新治が関係を持ったとの噂が流れる。夏の浜辺で、海から上がった老若の海女たちが乳房くらべに興じる。初江の乳房は、まぎれもなく、男を知らぬ処女の乳房であることを、誰もが認める。
『デイジー・ミラー』(ジェイムズ) ヨーロッパ滞在中のアメリカ娘デイジー・ミラーは、複数の男友達と遊びまわり、社交界から爪はじきされる。デイジーに心ひかれる青年ウィンターボーンは、彼女がふしだらな女なのか無邪気なだけなのか、判断に苦しむ。デイジーは夜遊びの結果マラリヤに感染して急死するが、その後、男友達から、彼女がまったくの純潔の身であったことをウィンターボーンは知らされる。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 少女クンティー(=プリター)が、好奇心から子授けのマントラを試すと、太陽神スーリヤが現れる。スーリヤはクンティーを抱いて子種を授け、その後にクンティーを再び処女に戻して、天界へ帰る〔*クンティーは、生まれた赤ん坊カルナの処置に困り、川に捨てる。クンティーは後にパーンドゥ王の妃となって、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナを産む〕。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 ドラウパディーは、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァたち5人兄弟共通の妻となる。1日目はユディシュティラとの結婚式、2日目はビーマとの結婚式、というように5日間に渡って結婚式が行なわれ、そのたびごとにドラウパディーは処女を回復した。
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