再審請求審
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再審の申立にあたって弁護団と面会したAは、認知症を患い、裁判を受け服役したことも覚えていない状況であった。このため、2012年(平成24年)1月11日にAの成年後見を申し立て、同年3月2日に衛藤二男弁護士が成年後見人となった。3月12日、衛藤弁護士が成年後見人として再審を請求。高齢のAが再審請求中に死亡した場合に備え、弁護団の依頼を受けてAの長男も再審を請求することになった。Aの長男は、家族には迷惑を掛けられないと離婚した上で、2015年(平成27年)9月17日に再審を請求した。2件の再審請求は併合されて熊本地裁で審理された。 弁護側は、Aが燃やしたと供述したシャツの布片が発見されたこと、凶器とされた切り出し小刀と遺体の傷は矛盾するとの鑑定、致命傷となった傷はセーターの上から刺されたもので傷口から血が出るのが見えたとするAの供述と矛盾するとの鑑定などを無罪を言い渡すべき明らかな証拠として示し、再審開始を求めた。検察側は、これらの証拠には新規性や明白性がないとして全面的に争った。発見されたシャツの布片についても、凶器に巻き付けられたのは別の布であった可能性があると主張した。 再審請求審における裁判所・検察・弁護団による三者協議は、2012年(平成24年)11月27日から2015年(平成27年)12月まで、計19回を数えた。弁護側は裁判所に対して、保管する証拠の全面開示と未提出の証拠の目録作成および開示を検察に命じるよう申し立てたが、当初裁判所は任意の証拠開示を促すにとどまった。しかし、検察側が任意の開示を拒否したため、弁護側の度重なる要請を受けて2013年(平成25年)12月9日に裁判所は検察官に対して血痕・指紋・足跡の鑑定書や関係者の供述書など11点の証拠開示勧告を出した(同月18日にも追加の開示勧告)。これに応じて2014年(平成26年)4月24日開示された証拠からは、自供ではAは土足のまま被害者宅に上り込んで犯行に及んだとされているにもかかわらず室内からも被害者宅周辺からもAの履物に該当する足跡は検出されていないことなどが明らかになった。 2015年(平成27年)2月27日には大野教授に対する証人尋問が行われた。傷口と凶器とされた切り出し小刀との矛盾についてはすでに確定審の控訴審で弁護側が指摘していたが、そこでは検察側の鑑定人であった牧角三郎によって、受傷時に刃の先端部で皮膚が押し下げられる「押し下げ現象」で説明が可能と証言されていた。これに対して大野教授は、傷の場所や深さ、凶器の刃物によって衣服に空いた穴と傷口の長さがほぼ同じであることなどから「押し下げ現象」が発生した可能性はほとんどないと証言した。 2016年(平成28年)6月30日、熊本地裁は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を発見したとき」に該当すると判断し、再審開始を決定した。決定理由の中で、確定審の争点はAの自白の任意性と信用性であったとして、再審請求審で弁護側の提示した証拠について以下のように判断した。 シャツの布片 Aは、犯行時切り出し小刀にシャツの左袖部分の布片を巻き付け、犯行後に軍手とともに風呂の焚口で燃やしたと供述したが、その左袖部分は現存し、血液の付着も認められなかった。このことは、切り出し小刀に巻いた布片がシャツの左袖部分ではなかったというだけでなく、そもそも切り出し小刀に布片を巻いたという供述が「Aの体験に基づく供述ではないのではないか、すなわちその事実そのものが存在しなかったのではないかとの合理的な疑いが生じてくる」。 大野鑑定 大野鑑定は「非常に合理的」であり、被害者の遺体の傷のうち2か所について、凶器とされた「切出小刀によっては成傷し得ないのではないかという合理的な疑いが生じる」。シャツの布片のことも併せて考えると、凶器とされた「切出小刀は被害者を殺害した凶器ではないという疑いは、一層強いものになる」。 そして、これらはAの自白の「重要部分に客観的事実との矛盾が存在する」ことを示しており、さらに、自白の信用性を支えるとされたその他の事実も「その証明力や証拠価値に疑問が生じており」、Aの自白のみで「確定判決の有罪認定を維持し得るほどの信用性を認めることは、もはやできなくなった」とした。 決定を受け検察側は7月2日に福岡高裁に即時抗告。即時抗告審を担当した検察官は、障害者郵便制度悪用事件の國井弘樹だった。検察側は、「Aの自白以外にもAが本件事件の犯人であることを示す間接事実が多数認められ、確定判決も、このような全体像を正当に評価したもので、Aの自白のみをもって有罪判決を宣告したものではない」とし、自白と間接証拠によってAが犯人であることに疑いはないと主張した。また、大野鑑定に対しては反論する法医学者の意見書を提出する意向を示していたが、結局法医学者による意見書は提出されず、検察官による意見書のみが提出された。 福岡高裁は2017年(平成29年)11月29日に即時抗告を棄却。検察側は12月4日に最高裁に特別抗告した。弁護団は、2018年(平成30年)2月27日に特別抗告申立書に対する反論書を提出。これに対し検察側からは弁護側に対する反論や新たな証拠の提出は一切行われなかった。弁護団は、4月27日、6月29日、8月29日の三度に渡り、特別抗告の早期棄却を要請した。最高裁は、同年10月10日に特別抗告を棄却し、再審開始が確定した。ただし、Aの長男は、福岡高裁で即時抗告審が行われていた2017年(平成29年)9月に病死したため、Aの長男による再審請求手続きは終了している。
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再審請求審
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Xは2012年10月15日に札幌地裁に再審請求を行なった。弁護団は新証拠として豚を焼いた実験を元にした「灯油10リットルでは内臓まで炭化しない」とした弘前大学大学院教授・伊藤昭彦による鑑定結果を提出し、「炎を目撃した住民の供述から、遺体に着火された時刻は午後11時15分頃で、犯人は早くても事件当日の午後11時42分までは現場にいたが、被告人は午後11時半の時点で現場から15km離れたガソリンスタンドの防犯カメラに映っており、アリバイがある」と主張したが、「遺体が炭化するほど燃焼するのは不可能とは言えない」などとされ、2014年4月21日 札幌地裁は再審請求を棄却する決定を行なった。
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