世界各国との戦い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 00:00 UTC 版)
2014年8月8日、アメリカ軍がISに対して、限定的な空爆及びヤズィーディー教徒などに対して支援物資の供給を開始。初日は、クルディスタン地域のアルビル近郊に展開していた野砲や車列が攻撃対象となった。アメリカは、空爆の期限を設けず、今後も空爆を実施することを示唆している。同年10月に入って、空爆の作戦名は「生来の決意」(Operation Inherent Resolve) と名付けられていることが明らかになっている。 ただし、アメリカ軍の空爆は、ISのイラク支配地に限定されており、ISのシリア支配地では実施されていないため空爆の効果を疑問視する人もいた。シリア国内のIS拠点を攻撃しないのは、ISと対立するアサド政権を支援する形になるためと指摘された。8月22日、アメリカはシリアの拠点に対する空爆の検討を開始したと発表した。この時点で、ISILの支配領域の合計面積は、イギリスより広くなっている。 8月24日、ISはシリア北東部ラッカ県にあるシリア政府軍の空軍基地を制圧、ラッカ県のほぼ全てを手中に収めた。この時、ISILはシリア兵500人を捕らえ、8月28日にこのうち160名を処刑したと発表、処刑映像を公開した。 8月25日、アメリカ合衆国大統領バラク・オバマは、アメリカ軍によるシリア上空での偵察飛行を承認した。 シリアのアサド政権は、ISの勢力拡大に対して国際社会と協力する用意があると表明した。これまで政権打倒を目指してきた反政府派を支援してきたイギリスやアメリカとの協力も歓迎するとしている。8月31日、ドイツはISILが自国の安全保障の脅威になるとして、ISILと対峙するクルド人勢力に武器を供与する方針を発表した。ドイツは世界第3位の武器輸出国である一方で、これまでは紛争地域への武器輸出を見送ってきたが、方針を転換した。 9月1日、国際連合の人権理事会は、ISのイラクでの人権侵害を「最も強い言葉」で非難する決議を全会一致で採択、ISILの行為は戦争犯罪や人道に対する罪に当たるとした。 9月19日、国連安保理は、全会一致でIS壊滅に向けて対策強化を求める議長声明を採択した。また同日、フランスはISのイラク北東部の補給所に対して、初の空爆を実施した。 9月23日にはアメリカ主導による有志国がシリアでも空爆作戦を開始した。さらに11月8日にはアメリカ軍などによって、IS幹部たちが乗る車列が空爆された。アル=アラビーヤが地元部族の話として伝えたところによると、この中に、最高指導者バグダーディーが乗っており、彼は致命傷を負ったという。ただし、アメリカ中央軍は、この車にバグダーディーが乗っていたかどうかについて不明としている。 2014年11月24日、アメリカ政府は国防長官チャック・ヘーゲルの辞任を発表した。辞任発表の場にはヘーゲルも立ち会い、円満辞任の形での発表されたが、ヘーゲルはオバマと対IS政策が対立したため辞任に追い込まれた面が強く、事実上の更迭と見られた。ウォールストリートジャーナルは、ヘーゲルは中東の泥沼からアメリカが足抜けする出口戦略を描くことが期待され長官に就任したが、ISILとの戦争には消極的だったため、中東へ回帰しつつあるオバマと対立していたと推測している。一方で国防総省はISの危険性を早期に認識し地上部隊の派遣を具申したものの、あくまで軍事予算の削減により財政再建を目指し、軍事介入は限定的な空爆に留めたいホワイトハウスと対立していたとの見方もある。 2014年12月、イランのF-4ファントム戦闘機がイラク東部でISに対する空爆を行った。 2014年12月24日、ISは米軍主導の有志連合の戦闘機を撃墜しヨルダン人の操縦士を拘束したと発表した。パイロット拘束の後、ヨルダンとアラブ首長国連邦は空爆作戦への参加を停止した。 2015年1月26日、パキスタン・ターリバーン運動(TTP)元幹部とみられる人物を、ホラサン(ホラーサーン)州知事に勝手に任命した。ターリバーンはISと協力関係にないが、TTPを脱退してISに参加した人物とみられている。 2015年1月26日、コバニ包囲戦にて、ISと戦っていたクルド人民兵部隊が、コバニをISから奪還したと発表した。クルド人部隊と、アメリカなどの有志連合の空爆の連携が、有効に機能した結果とされる。世界的に注目されていたコバニ戦でISが敗北したことは、ISの士気や、各地の支配に影響を及ぼすとの意見がある。コバニ戦では、クルドとIS双方の戦闘員や住民など約1600人が犠牲となったとされる。 2月3日、ISが拘束していたヨルダン軍パイロットを焼死させる映像を公開。この映像の公開を受け、ヨルダン軍はISILに対する空爆を再開した。 2015年5月16日、アメリカ特殊部隊が同組織で資金源である原油・ガス取引などを指揮していた幹部、アブ・サヤフ (ISIL)(英語版)を殺害したと発表。人質救出作戦以外ではシリアで初の地上作戦となった。 2015年8月21日、アメリカ軍が空爆で、当時ISナンバー2であったファディル・アフマド・ハヤリ(英語版)幹部(旧イラク軍中佐)を殺害したと発表。 2015年8月28日、8月24日にアメリカ軍がISの「首都」ラッカに空爆を行った際、ジュネイド・フセイン(英語版)幹部を殺害したと明らかにした。同幹部は世界各地でテロをおこす「一匹オオカミ」型のテロ要員確保を担っており、米軍や政府の関係者約1300人の個人情報をネット上に公開し、彼らを襲撃するよう呼びかけていた。 2015年8月29日、トルコが米軍などとの共同作戦に初参加し、有志連合の一員としてISへの空爆を初めて行った。2016年8月23日から24日にかけてIS占領下のジャラブルス(英語版)への越境攻撃した。なお22日にはジャラブルスにほど近いクルド人民兵組織シリア民主軍がISILを放逐したマンジビも攻撃しており、対クルド作戦も同時に進めている(ユーフラテスの盾作戦)。 2015年9月27日、フランス大統領府が、仏軍がシリアで初めてIS拠点に空爆を行ったと発表。イラクでの空爆に参加する一方で、シリアではISILと敵対するアサド政権の延命につながるなどの理由で攻撃を見送っていたが、内戦の泥沼化で難民問題も悪化したことなどから方針転換した。 2015年9月30日、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンは、シリア政府からの要請を受けたとしてシリア領内でISに対する空爆を開始する、と発表した(ロシア連邦航空宇宙軍によるシリア空爆)。この作戦についてロシア国防省は、アメリカ主導の生来の決意作戦には加わらないとしている。ロシア空軍は、2015年10月上旬現在Su-24、Su-25を用いて空爆を実施している。北オセチア共和国にあるロシア空軍基地にはTu-22M中距離爆撃機がロシア各地から集結している(その数は少数)といい、今後は北オセチア共和国のロシア空軍基地からの長距離爆撃になる可能性が高いという。また、シリア領内に展開しているロシア空軍の機体についている国籍識別標が消されていることが確認されている。 2015年12月2日、イギリス議会はイラクで実施している空爆をシリアへ拡大するよう求める動議を賛成多数で可決し承認した。3日に空爆を始めた。 2016年3月25日、アメリカ国防総省は、3月24日にアメリカ軍特殊部隊が行った急襲作戦で、当時IS組織ナンバー2であったアブドルラフマン・ムスタファ・カドゥリ(英語版)財務大臣が死亡したと発表した。 アメリカ軍報道官は、アメリカ軍が行った空爆で、2016年3月14日、アブオマル・シシャニ(英語版)戦争大臣(元グルジア軍司令官)が死亡したと発表した。 2017年5月28日にシリアのラッカ近郊でISIL幹部の会合が行われたのを狙ってロシア空軍が空爆を行い、その結果バグダーディーが死亡した可能性があると同国国防省が発表したが、バグダーディーはこの時点では死んでいなかった。 2019年3月23日にクルド人主体の民兵組織シリア民主軍(SDF)はISILが支配していたシリア東部バグズを制圧したと宣言。 2019年10月26日、アメリカ軍が指導者バグダーディーの居所を急襲(カイラ・ミューラー作戦)し、バグダーディーが自爆死した。 2019年10月29日、バグダーディーの後継者として指名される可能性があったISILスポークスマンのアブー・アル・ハサン・アル・ムハジルが28日に殺害されていたことをアメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領が明らかにした。 2019年10月31日にバグダーディーの後継者としてアブイブラヒム・ハシミが選出されたとされているが、氏名も含めて現実に存在する人物であるかどうかは不明である。
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