軍事予算
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2013年3月5日に、中国国務院財政部は第12期第1回全人代に提出され審議された2012年支出実績と2013年度予算案を公表した。その後支出実績と予算案は全人代に承認された。それによれば2012年度(1 - 12月)軍事支出実績額は6506億300万人民元であった。2013年度の国防予算は7201億6800万人民元であり、2012年度支出実績に比べ10.7%増である。 このような「公表額」に対して、世界各国の政府や軍事研究機関は、「中国政府が、いわゆる中国脅威論によって軍備拡張が抑え込まれることを警戒して、軍事支出が小さく見えるように操作している」との見解を持っている。ストックホルム国際平和研究所の推定による、2012年度の中国の軍事支出実績額は為替レートベースで1660億ドルで、アメリカ合衆国に次いで世界で2位(世界シェア9.5%)であり、2003年 - 2012年の10年間で175%増加した。また購買力平価ベースでは軍事支出実績額は2490億ドルで世界第2位である。中国の軍事支出を国際比較する場合、時価為替レートベースと購買力平価ベースでは相対関係が異なってくる。物価の安い国は同等の予算金額で物価の高い国の数倍の軍備が購入可能という問題を指す。例えば、日本の陸上自衛官1人の給与金額で中国兵20人が雇用可能であり、物価の相違を修正せずに単純に金額を比較しても実際の単年度軍事資産購入量と乖離してしまう。CIAの各国国力・GDP分析は購買力平価で比較されている。 中国の軍事支出が明確でないという見解の論拠の一般論としては、民主的政治制度が確立している国では、政府の収入と支出の予算案も、立法過程も、可決された予算も、予算の執行も、今年度および過去年度も含めて書籍とウェブで公表され、誰でも閲覧できるが、独裁政権が統治している国は、民主国家と比較して政府の情報公開度が低く、公開された情報には隠蔽・歪曲・誇張された情報が含まれているので、公開された情報の信用性は低いということが指摘される。 2000年代に入ってからアメリカやイギリス、日本などは中国に対して国防予算の内訳の透明性を向上させることを求めている。2008年(平成20年)3月4日には、日本の町村信孝官房長官が中国の国防予算について「とても周辺の国々、世界の国々には理解できない。その中身がはっきりせず、透明性の欠如は大きい」とし、さらに「五輪を開き、平和的に発展していこうというお国であるならば自らの努力で(中身を)明らかにしてもらいたい」と批判した。また、2009年(平成21年)3月4日には河村建夫官房長官が「発表されたものは依然として不透明な部分があり、国防政策、軍事力の透明性を一層高めていただくことが望ましい」と中国の国防予算の内訳について透明性の向上を求めた。 中国人民解放軍には他国の軍隊には見られない「自力更生」と呼ばれる独特のシステムが存在した。これは要するに、「国家などの公的予算に頼らず軍が自分で自分の食料や装備を調達する」ということである。元々は軍人が自力で耕作して食料を調達して戦闘に従事し続けたことを意味するが、1980年代になると軍事費の削減によって「軍事費は軍自らが調達する」という方針を共産党が打ち出したことにより、改革開放政策による国の近代化と資本主義経済の導入が開始されたことにあわせ、軍の近代化に伴う人員削減で必然に出る失業対策も含めて、各部隊が幅広く企業経営へ乗り出していた。これは1998年に中国共産党が人民解放軍の商業活動を禁止するまで続いた。実際には現在も一般人も利用できる又は一般人向けの各種学校、食堂やクラブなどの飲食店、射撃場など娯楽施設、病院、宿泊施設、食品加工や機器製造等の工場、農牧場、養殖場、炭鉱など鉱山、出版社などあらゆる企業、施設、設備を運営している。イギリスBBCの報道によると、「食料の90%を外部からの調達に依存している」ということである。人員規模を考慮すると、およそ20万人以上の食料を自給できているということであり、他の軍隊に見られない驚異的な特徴の一つとなっているといえる。
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