ローズマリーの花言葉
ローズマリーは地中海沿岸を原産地とする、常緑のハーブである。ローズマリー(Rosemary)の学名は「Rosmarinus(ローズマリナス)」と言い、日本語では「海の雫」と訳される。ラテン語で露を表す「ros」と、海を表す「marinus」が組み合わさってできた言葉であり、地中海沿岸に咲くローズマリーの小さく青い花が、海からこぼれた雫のように見え、このような学名を付けられたとされている。
古来よりヨーロッパでは神秘的な力を持つ植物として認識されてきたため、薬や食用として用いられる以外にも、結婚式や葬儀などの儀式の際に象徴的に使われることも多い。また、死者や悪魔などの邪悪なものから身を守ってくれる力があるとも信じられており、悪魔払いの儀式に使われることもあった。そのため、愛や誠実さに関する花言葉や、神聖さを想起させるような花言葉が多い。
ローズマリーの花言葉は、ヨーロッパの人々にとっては比較的知名度が高いと言える。その理由として、イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品の中に、象徴的なアイテムとして出てくる花であることが挙げられる。悲劇『ハムレット』のヒロインであるオフィーリアが正気を失い、自分の兄をハムレットだと思い込み、ローズマリーを渡して「私を忘れないで」と語りかけるシーンが有名。他にも『リア王』、『ロミオとジュリエット』などの作中にもローズマリーに関するエピソードが登場し、印象的な演出としてその花言葉が使われている。
ローズマリーの花言葉の由来
#「追憶」「記憶」「思い出」などの記憶に関する花言葉の由来ヨーロッパでは古来から、ローズマリーには記憶力を良くする効能があるとされていた。紀元前5世紀頃の古代ギリシャでは、学生は勉強の際、記憶力を良くするためにローズマリーを体のどこかに身につけたり、髪に挿したり、あるいは花冠にして頭につけていたという。このようなエピソードが、ローズマリーの「思い出」や「記憶」といった花言葉の由来となった。
#「変わらぬ愛」「貞節」「私を想って」「誠実」「静かな力強さ」などの愛や誠実さに関する花言葉の由来
ローズマリーには愛に関する花言葉が多く存在するが、その由来となっているのは、ローズマリーが持つ強く清々しい香りだと言われている。ローズマリーは季節に関係なく、土に植えられていても、摘まれても、乾燥させた後も、非常に長い期間強い香りが続くハーブである。和名である『マンネンロウ』は現在、中国語の名前である『迷迭香』の漢字で表記されているが、元々は「いつまでも変わらない香り」という意味の『万年香(マンネンコウ)』が変化して付けられた名前だという説がある。「変わらぬ愛」というのは、長期間持続するローズマリーの強い香りに、永遠に続く愛情を重ねて付けられた花言葉であるとされている。
また、ローズマリーという植物はキリスト教、ひいては聖母マリアと非常に馴染み深い。キリスト教には、次のようなエピソードがある。ヘロデ王の軍に追われていた聖母マリアは、幼子イエスと共にエジプトへと逃げた。身を隠すため、マリアは白い花が群生する畑の中にイエスと隠れた。夜露に濡れるのを避けるため、マリアは上から青いマントで自身とイエスを覆ったが、白い花の中に青いマントでは目立ってしまう。
追手に見つかってしまうかもしれないと案じていた矢先に、白かった花はたちまち青くなって、マントの色とみるみる同化していった。そのおかげでマリアとイエスは追手から身を守ることができた。それ以来、その植物は「聖母マリアのバラ(rose of maria)」と称され、次第に「ローズマリー(rosemary)」という名前に変化していったというエピソードである。
このように、ローズマリーは幼子イエスを守った「聖なる植物」であり、冠婚葬祭などの宗教的な儀式には欠かせないものであることも、「愛」に関する花言葉が数多く存在する理由である。さらに、「誠実」や「貞節」などの花言葉は、聖母マリアから連想されて付けられたものだと言える。
ローズマリーの「愛」に関係する花言葉は、キリスト教以外では、古代ギリシャの神話にもそのルーツがあることが窺える。愛と美を司る女神「アフロディーテ(ローマ神話におけるヴィーナス)」はバラやアネモネ、ホタルブクロなどの美しい花々をアイテムにしているが、その花のひとつがローズマリーである。
#「あなたは私を蘇らせる」という花言葉の由来
(1)ミイラの防腐剤
古代エジプトにおいて、ローズマリーの枝は防腐剤としてミイラと共に棺に入れられていた。古代エジプトの国王、ファラオの墓からもローズマリーの枝が発見されている。その後、ヨーロッパでもその慣習に倣い、葬儀の際にローズマリーを用いるようになる。そのうち、ミイラの「不死性」や「再生」といったイメージがローズマリーからも連想されるようになり、このような花言葉が与えられたのだという説。
(2)ハンガリー王妃の『若返りの水』
1370年頃、ハンガリー王妃であるエリザベート1世は手足の痛みに悩まされ、体調を崩していた。そこへイタリアの修道院から来た僧侶が、ローズマリーを主原料としたチンキ(ハーブをアルコールに漬け込んだ治療薬)を王妃に献上した。このチンキを毎日使った王妃は痛みが改善し、体調も回復。そしてその後、驚くことに、70歳を過ぎていた王妃は20代のポーランドの王子に求婚された。ローズマリーには「若返りの力」があり、その効果で王妃の肌が若返ったためである。
このようなエピソードがヨーロッパ中に伝わり、ローズマリーは「若返りのハーブ」として知られるようになった。ハンガリー王妃が使ったローズマリーのチンキは、のちに『ハンガリー・ウォーター(ハンガリー王妃の水)』と名付けられた。ローズマリーの効果によって若さを蘇らせたハンガリー王妃のエピソードが、この花言葉の由来となった説。
ただし、1370年当時のポーランド王ラヨシュ1世(ハンガリー王も兼任していた)は、ハンガリー王妃エリザベート1世の息子である。ラヨシュ1世の子供(エリザベート1世にとって孫にあたる)は女子しかいないことからも、このエピソードは創作であると推察される。
ローズマリーの英語の花言葉
ローズマリーの花言葉は英語で「remembrance(思い出、記憶、追憶、追悼)」「fidelity(忠実、貞節)」と表す。ローズマリーの色別の花言葉の解説
ローズマリーの花には淡い青、白、ピンク、薄紫など、多様な色が存在する。しかし色別、品種別による花言葉は与えられていない。ローズマリーの本数別の花言葉の解説
ローズマリーには枝の本数別による花言葉は与えられていない。ローズマリーの怖い花言葉
数多くの花言葉を持つローズマリーだが、その内容は「愛」や「誠実」など、印象の良いものばかりである。ヨーロッパ諸国の人々にとっては聖母マリアを象徴する花であるため、神聖なイメージを持つ植物としても有名である。その一方で、実はローズマリーは「悪徳」という、ネガティブなイメージを抱く花言葉も与えられている。「悪徳」の由来となったのは、ヨーロッパに古くから伝わる逸話。「ローズマリーの下では、蛇の姿となった妖精たちが集まり、皆で悪さをたくらんでいる」という話である。妖精の逸話以外で「悪徳」の由来として考えられるのは、妊娠中の女性にローズマリーを薬として用いらせると、逆に体に悪影響を与えてしまうことがあるという話だろう。また、葬儀の際に死者の棺に供える花だということも、このネガティブな花言葉に関係している可能性がある。
※ 花言葉の内容は諸説あります。
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