プログラム、大会、出版物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 23:54 UTC 版)
「子どものための哲学」の記事における「プログラム、大会、出版物」の解説
アメリカ合衆国には、大学で行われている哲学講義を公立学校向けに提供するアウトリーチ活動はたくさんあり、次に挙げる大学がその代表例である。マサチューセッツ大学ボストン校、シカゴ大学、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校、マウント・ホリヨーク大学、モントクレア州立大学、ミシガン州立大学、ハワイ大学マノア校、ノートルダム・ド・ナミュール大学、ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校。 シカゴ大学では、市民の知識プロジェクト(Civic Knowledge Project)の一環として、在学生がシカゴのサウスサイドにある学校で教えている。この授業は「ウィニング・ワーズ(Winning Words)」と呼ばれており、シカゴの小中高校生と放課後に行うものである。 このプログラムの目的は、地元の若者に対して哲学、推論、そして対話やレトリックといった言語技術を教えることによって、生徒の自尊心を高めると同時に、広く哲学的素材に親しんでもらうことである。アメリカ哲学協会にも認知されているこのプログラムの内容には、哲学の概論とソクラテス式問答法だけでなく、ライティング、スピーチ、ディベート、演劇、詩、アートの技術も含まれている。教材にはソクラテス式問答法が用いられており、生徒の批判的思考力、推論能力、表現能力が高まるようになっている。こうした思考・コミュニケーション方法によってセンス・オブ・ワンダーを育むことができるが、それは真剣な内省、知的能力の向上、そして倫理的反省の源になるのである。2012年2月に、アメリカ哲学協会にある大学進学以前の哲学に関する委員会は、中央部会の定期会合にてこのウィニング・ワーズと市民の知識プロジェクトを取り上げた。 こうした動きに加えて、子どものための哲学ノースウェストセンター(ワシントン州シアトル)のような独立センターも登場し始めている。ノースウェストセンターはシアトル地区でのワークショップ活動をワシントン州全体にまで拡張し、哲学教育をK-12教育(幼稚園から高校卒業までの期間の教育)に取り入れる手法を広めている。 アメリカ合衆国の教育省が1990年代初頭にこういったプログラムに対する予算を削減する以前には、哲学的省察・批判的思考一般を扱うK-12向けの学校プログラムの数は全米で5,000以上存在していた。この数字は現在に至るまで急激に減少している。 子どものための哲学推進研究所は、その卓越性とイノベーションについてアメリカ哲学協会にも認められた機関である。この研究所はリップマンの方法を用いて、哲学的な関心をそそるような物語を読み聞かせ、生徒が自らの哲学的問題を見出し、それを問うことを促す活動を行っており、モントクレア公立学校システムとの提携のもとで非常に長い間K-12の生徒を教えてきた。生徒は自らの問いを発するように促され、哲学的ファシリテーター(IAPCのメンバー)の補助によって哲学的能力を伸ばすとともに、批判的、ケア的、創造的な思考力を向上させ、最初に与えられた問いに応えるには「どうすれば、あるい何を信じるのが一番よいか」について理性的な判断に至るようになる。IAPCには大きな教師準備教育部門があり、議論プランを含む教師向けの授業マニュアルを提供している。このマニュアルは、哲学的議論をファシリテートするためにデザインされたもので、生徒からよく聞かれる質問にも対応できるような内容になっている。IAPCメンバーは学校の生徒と直接関わるだけでなく、得意先として、プロもしくはプロを目指している教員、学校職員、政策立案者、教育学や哲学などが専門の大学教員や学生ともやりとりしている。IAPCの育てた教員は世界中で活躍しており、学んだカリキュラムを母国に持ち帰って実践している。オーストラリアでは、哲学と子どもに関する機関が入門的なワークショップを行い、学校や教師向けの授業を行っている。 年に一度、「フィロソフィー・スラム(Philosophy Slam)」というK-12の生徒のための大会が開かれている。若い生徒は自らの哲学的思索を示す絵を提出し、学年が上の生徒は高度な哲学的文章を提出する。 イギリスでは、リーズ大学にグレース・ロビンソンが指揮する「リーズ哲学交流(Leeds Philosophy Exchange)」というプログラムがあり、学生が学校で活動する機会を提供している。ブリストル大学の「ブリストル哲学交流(Bristol Philosophy Exchange)」も同様のプログラムで、哲学専攻の学生と小学校教師が交流し、毎週の子どもとの哲学的探究に参加することで能力と知識を共有している。 教育的慈善団体の「哲学ファンデーション(The Philosophy Foundation、旧称Philosophy Shop)」は、哲学科の卒業生を訓練し、小学生や中高生と一緒に哲学をする能力を身につけさせた上で全国の学校に派遣している。また、訓練により他分野でも有用な哲学のスキル(質問能力、思考力、討論能力)を身につけた教師を育て、第3期の教育ステージを含む全ての教育段階において探求を主軸においた教育方法を促進している。 SAPEREはイギリスの慈善団体で、イギリス全土のP4C教師を訓練している。 シンキング・スペースは学校と協力し、専門的知識を持った哲学者と教師を結びつける創造的な哲学プロジェクトを推進している。 ヨーロッパ大陸では「子どもとともにする哲学(philosophy with children, PWC)」の実践者コミュニティの増大を受け、1993年に「スティッチング・ソフィア――子どもとともにする哲学推進欧州ファンデーション(Stichting SOPHIA —The European Foundation for the Advancement of Doing Philosophy with Children)」が設立され、ユーレリア・ボッシュ(カタロニア)が会長に、カレル・ファン・デル・リーウ(オランダ)が書記に就任した。欧州共同体(現・欧州連合)のモットー「多様性の中での結束(unity through diversity)」にならい、ソフィアはヨーロッパの多様な文化・言語圏におけるすべての子どもとともにする哲学の発展を支持し、協働的な相互成長の基盤として実践者の共同体を育んだ。ソフィアのメンバーが協力し、欧州連合から資金援助を受けることで、多くの革新的なプロジェクトが生み出された。PWCプロジェクトが扱ったテーマには、アート、市民(シティズンシップ)、孤児、建築、アンチ・レイシズム、音楽、コミュニティの発展などがあった。 オーストラレーシアでのP4Cネットワークは、1980年代から拡大してきた。オーストラレーシアの各国にP4C関連の協会が設立され、「オーストラレーシア初等・中等学校哲学協会連合会(Federation of Australasian Philosophy in Schools Associations, FAPSA)」の後押しによってP4Cがオーストラレーシア中に広められることになった。FAPSAは専門的な非営利団体として学校における哲学の推進を担うと同時に、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの各国にある所属協会の利益も代表している。FAPSAの主要な目的は、所属協会の教育目標の達成を支援することである。FAPSAは『Journal for Philosophy in Schools』という学術誌も発行している。 2007年には、西オーストラリア州のパースで「フィロソトン(Philosothon)」という哲学大会が誕生した。この大会はP4Cを促進するもので、歴史は短いが著しい成功を収めている。現在では、オーストラリアの各州で毎年一度フィロソトンが開催され、またPAPSAが主催するオーストラレーシア全体でのフィロソトンが毎年国を変えて行われている。フィロソトンに参加する学校の数は、オーストラレーシア、ヨーロッパ大陸、イギリス全て合わせて400を超えている。
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