ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 | Concerto pour piano et orchestre e-Moll Op.11 CT47 | 作曲年: 1830年 出版年: 1833年 初版出版地/出版社: Leipzig and Paris 献呈先: Friedrich Kalkbrenner |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 第1楽章 Mov.1 Allegro Maestoso | 21分30秒 | No Image |
2 | 第2楽章 Mov.2 Romanza Larghetto | 11分30秒 | No Image |
3 | 第3楽章 Mov.3 Rondo Vivace | 10分30秒 | No Image |
作品解説
ヘ短調協奏曲(第2番)を完成したショパンは、それほど時を置かずに第2の協奏曲(第1番)の作曲に着手した。1830年中に着手、完成されたホ短調協奏曲は、前作に比してより技巧的であり、楽曲の規模も多少広がりをもっている。しかし、ヘ短調協奏曲にもみられた楽曲構成面での薄弱さは、前作には見られなかった動機の徹底的な使用などによって克服されつつあるとはいえ、完全に払拭されているわけではない。
なお、オーケストレイションについては、ヘ短調協奏曲と同様に作曲者自身の手によるものであるという確証はない。2管編成にバス・パートの補強としてトロンボーン1本を加えるという特徴的な楽器編成が一致していることからも、同一人物が手掛けた可能性が伺える。
ヘ短調協奏曲と同様に、ピアノ協奏曲として多くの弱点を持ちながらも、これらの作品が今日の協奏曲レパートリーの中核を成すものとして存続しているのは、勿論、旋律美やヴィルトゥオーゾ・パッセージの華やかさなど、作品に内在する他の様々な魅力があってのことである。しかし一方で、同時代に数多と生産された同様式の協奏曲のほとんど全てが忘れ去られたことを考えるならば、作曲者の故国ポーランドが国の威信をかけて開催しているピアノ・コンクールの存在があることも念頭に置かねばなるまい。
第1楽章 ホ短調 4分の3拍子
協奏曲風のソナタ形式を模した構造を採っており、提示部が調的対立を構成原理としていないため、ヘ短調協奏曲の冒頭楽章と同様に、ソナタ形式というより大きな3部分形式である。
冒頭、まず刺繍音形と分散和音上行を特徴とするモティーフ(ホ→嬰ニ→ホ→ト→ロ)と、付点リズムで下行する躍動的なモティーフによるホ短調の主題が提示される。前半のモティーフは、楽章を通していたるところにあらわれる。続いて哀愁を帯びたカンティレーナ風の主題があらわれる(第25小節~)。低声部には先ほどの冒頭モティーフが持続低音のように鳴り響いており、このモティーフによる推移を経て、ホ長調(同主長調)の、やはりカンティレーナ風の主題が歌われる(第61小節~)。2つのカンティレーナ風主題は、1フレーズがおおよそ1オクターヴ以内にとどまっており、順次進行を基本としてアーチ状の旋律線を描いている点で共通している。ショパンのベルカント的な旋律美の面目躍如といったところだろう。
やはり冒頭動機による推移の後、独奏ピアノの登場となる(第139小節~)。まずホ短調の2つの主題を、技巧的な装飾をともないながら再提示する。これに続く推移(第179小節~)は、ピアノの即興的なパッセージの連鎖によって拡大されているが、その中には冒頭モティーフの刺繍音形や、下行音形が編み込まれている。
「情熱的にappassionato」と指示された旋回音形に導かれて、ホ長調主題が再提示される。これに続いて、休みない技巧的パッセージの連鎖を経てコデッタとなる。
展開部風の第2部(第385小節~)は、2つ目の主題(ホ短調のカンティレーナ)をハ長調(VI度調)に移して開始される。続いてピアノの技巧的なパッセージを「背景」として、オーケストラが冒頭モティーフをゼクエンツ風に反復した後、長く引き延ばされた属和音をともなって急速に下行するピアノの半音階が主題の再現を導く。
主題を再現する第3部(第486小節~)は、オーケストラが冒頭主題を、独奏ピアノが2つのカンティレーナ主題を担当する。長調のカンティレーナ主題は主調の平行調であるト長調へと移されている(第573小節~)。これは明らかに主調のコーダを導くためのものであり、形式上の独創性などではなく、戦略的な調設定として理解すべきであろう。
ホ短調へのドミナント進行によって主調へ回帰し、第1部と同様に技巧的な推移部にオーケストラのコーダが続いて楽章を閉じる。
第2楽章 ホ長調 4分の4拍子 ロマンス
弦楽合奏による模倣風の12小節間の導入の後に、独奏ピアノによって主題があらわれる。楽章を通して、弦楽合奏は和声付けに徹しており、ピアノ・パートはノクターン風の独奏曲の趣である。
属調であらわれる第2主題、美しい装飾をともなった主題の回帰、平行調での第2主題の技巧的な展開と続き、最後に弦楽合奏が奏でる主題を、独奏ピアノの半音階と分散和音の即興的なパッセージが飾る中で楽章が閉じられる。
第3楽章 ホ長調 4分の2拍子
嬰ハ短調(平行調)による短い導入の後、独奏ピアノによる躍動的な主題が提示される。ヘ短調協奏曲のフィナーレにはマズルカの要素が取り込まれていたが、今回はクラコヴィアクの要素が用いられている。
ロンド風に作曲されているが、楽想が次々とあらわれて自由に展開する部分が大半を占めており、大きな2部分形式とみることができる。
独奏ピアノによるロンド主題やクープレ主題の合間に、オーケストラによるエピソードが挿入されるという形を採っており、ロンド主題をオーケストラが演奏することは1度もないことも特徴的である。また、楽章中に2度あらわれるユニゾンの旋法的な主題は、楽章全体の民族舞踊的な性格を高めると同時に、その特徴的な響きが第2の主題としての機能を果たしている。
楽曲の前半部分は、ロンド風に展開する舞踊主題と、この旋法的なユニゾン主題の前後を、独奏ピアノによる即興的で自由なパッセージがつなぐ。
後半への接続部分は極めて印象的かつ、創意工夫にあふれている。主調の属和音を引き延ばし(第268~271小節)、主和音への解決と同時に主題の再現を期待させるも、半音階を上って到達するのは、半音低められた変ホ長調(第272小節~)。さらに主和音の第2転回形という不安定な和声の上に、舞踊主題がカンティレーナ風に再現される。これが一瞬変ホ短調へと傾斜し(第278小節)、異名同音の読み替えによって主調へ復帰して完全な主題再現となる(第280小節~)。
後半部分は、前半部分にほぼ対応しており、舞踊主題とユニゾン主題の前後を技巧的なパッセージがつなぎ、コーダへと突入する。音階と分散和音が目まぐるしく駆け巡るコーダによって、楽曲は華麗に締めくくられる。
ルビンシテイン, アントン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ルビンシテイン, アントン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 | Piano Concerto No.1 in E minor Op.25 | 作曲年: 1850年 出版年: 1858年 初版出版地/出版社: Bessel, Peters |
ヴィークルンド:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調
ドホナーニ:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調
ザウアー:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調
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