せどり
「せどり」は本来、同業者間の商品の流通を取り次ぐ仕事を指した。あるいは、より一般的には、古書を安く買い取り高く売って利ざやを稼ぐ仕事を指した。希少価値が生じているのに気づかれず二束三文で売られている中古品を安く購入し、希少価値を正しく評価した金額で売る。買値と売値の差額が利益となる。
英語には「せどり」の概念は特になく、「せどり」に対応する単語も見出し難く、 resale(「転売」または「再販」)と訳される場合が多い。日本の文化としての「せどり」に言及する文脈ならば「Sedori」の語を用いる場合もあり得る。
「せどり」はもっぱら平仮名で表記されるが。漢字では「競取り」および「糶取り」という表記が対応する。語の由来は「糶を取る」という表現であるとされる。「糶」は「売りに出す米」もしくは「米を売り出す」という意味の字である。貯蔵してある米を選んで売り出す行為を「糶取る」と呼び、転じて多くの物から希少価値がある物だけを選び取って売る行為を「糶取り=せどり」と呼ぶようになった。古本業者の間では商品である古本を仕入れる際に競りで購入することがあり、そこから「競取り=せどり」と呼ばれるようになった、という説もある。古本の競りは束売りで行うことが多く、欲しい古本を入手するには他の不要な古本も一緒に購入しなければいけない。束売りの中から欲しい古本だけを抜き取る行為がせどりと呼ばれるようになったとされている。
せどりの(安価で購入した古本を高く売って儲ける)方法として最も一般的といえる方法に、古本屋巡りがある。近隣の古本屋を渡り歩き、希少価値のありそうな古本を見出す、という営みが活動の大半を占める。目当ての古本を安く買って高く売れれば、差額が利ざやとなる。最近ではインターネット上でも古本が販売されているため、自宅に居ながらせどりを営むことも可能になっている。希少価値のある古本を安く買って欲しい人へ高く売るという基本的な流れは変わらない。移動や本探しの手間が大幅に削減できるという利点はあるが、購入にも売却にも送料が発生するという難点もある。
インターネットを利用した古本のせどりは。近隣に古本屋がないような地域に住んでいる人でも気軽に始められる。ただし価値のある古本を安く購入できる機会はそうそうない。古本といえども書誌情報がデータベース化されており。その希少性も知れ渡っているため、もはや不相応に安く売られていない。
インターネットオークションや不要品譲渡サイトといったC2Cのサービスで一般消費者が出品している品を安く買い、高く売る、という形のせどり(または転売)は、儲かる可能性のあるビジネスモデルとして存続している。古書に限らず、ゲームソフト、ファッション関連、アイドル等の関連グッズ、等々、ときには「これのどこに需要があるのか」と首を傾げたくなるようなモノまで、さまざまな物品が昨今せどり(または転売)の対象となっている。果ては正常な流通を阻害する悪質な買い占めにつながる場合もままある。
せどりや転売には違法性の懸念がつきまとう。「古物営業法」に抵触する可能性が高い。せどりも転売も基本的に中古品を扱うが、中古品の売買は古物商にのみ認められた業務である。警察への届け出などが必要である。しかし素人のせどりはそういった届け出を行わずに中古品を売買しはじめやすい。その行為が「古物営業法」に抵触する可能性が高い。
せどりや転売は物品の買い占めにつながりやすいという懸念もある。昨今はフリマアプリが普及・浸透し、初心者でも簡単にせどりを行えるようになっている。同時に、巷で特定の商品の需要が急騰している、という情報も手軽に得られる。このため、多くの転売野郎が利益を得るために同じ商品を買いあさり、転売しようとした結果、市場で適正価格で販売されている商品が品薄になる。という事態が既に多々発生している。こういうせどり・転売は「小遣い稼ぎにぴったりなサイドビジネス」と評価される向きもあるが、限度を超えれば他者の消費活動を阻害する迷惑行為でしかない。
転売で儲けようとする者は「転売屋」と呼ばれる。特に悪質な者は俗に「転売ヤー」と表記され疎まれている。
「せどり」と「転売屋」の違いは曖昧だが、今日的な意味合いでは「扱う対象がせどり的か否か」で呼び分けられている傾向が見い出せる。せどりは古本を筆頭とする「希少価値を持つ中古品」を安く買って高く売って差額で儲ける営みである。古本の他には、絵画や彫刻などの美術品、古いオモチャなどがせどりの扱い対象になることもあるが、いずれにしても古さが希少性につながっているホビー用品を見出すという性質がある。一般の市場に影響を及ぼすことはほぼあり得ない。他方、「転売屋」は、そういった限定的な性質が特にない。非難の意味を込めて「転売屋」「転売ヤー」と呼ばれる場合、本来の真っ当な市場価値を無視して自身の利益を加えた価格で売らんとする、という意味合いを含みやすい。
いわゆる「ダフ屋」は、野球観戦やコンサートのチケットを本来の販売価格よりも高く売るような者を指すが、これも「転売屋」に該当する(せどりとは言わない)。今日では医薬品や衛生用品など必要とする人が多い物品を買い占め、販売価格よりもはるかに高額な設定で売りつける転売ヤーも後をたたない。
せ‐どり【瀬取り】
せ‐どり【▽競取り/×糶取り】
せ‐どり【背取り】
競取り(せどり)
瀬取り
【英】: ship-to-ship transfer
タンカーが互いに接舷{せつげん}して積荷を移し替える作業を瀬取りという。 近年急速に進んだタンカーの大型化に比べて油受入港にある施設の拡張が間に合わなかったり、または地形的に拡張の余地がない場合などに大型タンカーで沖合まで運び、中・小型タンカーに積み替えて目的地まで輸送したり、これとは逆に大型タンカーが入港できない油積出港において、中・小型タンカーで積出港の沖合まで運び、大型タンカーに積み替えて目的地に輸送することがある。あるいは座礁したタンカーから小型タンカーに移し替えて離礁させる場合など、瀬取りの目的は多い。最近は油タンカーだけではなく、LPG 、LNG などの液化ガスや化学製品などいろいろな瀬取りも行われている。瀬取り作業が安全に行われるために ICS/OCIMF では ship-to-ship transfer guide(石油編および液化ガス編)を発行し、瀬取り作業、設備など全般について本指針に従うよう勧告している。瀬取り作業に際して最も注意を払うべき点は接舷の際の衝突事故の防止であり、瀬取りの行われる海域の広さ・気象・海象・曳船{えいせん}利用の可否などの諸条件を勘案して、両船が互いに低速力で並走航行しながら一方が徐々に接近して接げんする方法か、または一方が錨泊{びょうはく}し、他方が曳船などの援助で接舷する方法のいずれかが採用される。接舷の際、両船間の衝突エネルギーを吸収するとともに瀬取り中、動揺などによる両船の船体接触事故を防止するため大型の空気式フェンダーをどちらかの船に事前に取り付けておく。移送作業は両船の中央部の甲板上パイプラインにラバーホースを接続して行われる。 |

競取
せどり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/01 09:49 UTC 版)
せどり(競取り、糶取り)とは、「同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること。また、それを業とする人(三省堂 大辞林より)」を指す。古本用語を元にした「掘り出し物を第三者に転売すること。」を指す言葉[1]。
語源と意味
一般的にはひらがなで「せどり」と書く。辞書では「競取り」という漢字が当てられているが、元々は「糶取り」という字が使われていた。[要出典]
「糶取り」の「糶(ちょう、せり、うりよね)」とは、「米を売りに出す」の意で、そこから「米の競り売り」や「行商」のことを指す。漢字としては「出+米+翟(=擢:抜き出す)」から成り、貯蔵してあった米を選り出して売りに出すことを意味し、そこから転じて多くの物の中から選び出して売ることを「糶取る(動詞)」または「糶り取る」と言う。[要出典]「糶取り」とは「糶取る」の連用形である。
『書物語辞典(1936年 古典社)』によると、語源は不明。漢字は当て字で「糶取」「背取」などと書き、『せどりの營業は、店舗から店舖を訪問して相互の有無を通じて口錢を得るのを目的とする。すなわち甲書店の依頼品を同業者間をたづね歩き値の安きを求め其の間に立つて若干の利得をする(同書より)』との事で、書店同士の売買の仲介をする事、またはそれを生業とした者を指す。
古本用語
「古書店などで安く売っている本を買い、他の古書店などに高く売って利ざやを稼ぐ」こと、またはそれをする者を指す。同業者の店頭から高値で転売する事を目的に「抜き買い」するため、せどり行為は業界内では嫌われる。一方、本の希少価値にこだわらない、大量仕入れ、大量販売形式の大規模古書店においては、「一度に数十から100冊の本を買ってもらえる」「長期在庫が減る」ということから、せどりが必ずしも嫌われているわけではない。
古書業界で使われている「せどり」は、業者間の「競り」から来た言葉で「競取り」と書く。[要出典]古書組合などの業者間の競り売りは、主に束売りで行われるため、欲しい本を競り落とすためには必要のない本まで買わなければならない場合がある。その場合、競り落とした後に必要な本を抜き出し、必要のない本は何らかの形で処分する事になり、結果として「必要な本だけを抜き出す」事になる。そこから「多くの本から必要な本だけを抜き出す」行為を「競取り」と言うようになった。現在の古書業界では店舗を回って在庫を集め、ネットで売りさばく「せどり師」「せどらー」と呼ばれる人々による古本屋も存在する。
商売
過去には、店を持たずに各地を回り、自分の知識と目利きを頼りに仕入れた商品を同業者に販売したり、注文を受けた本を探し出して手数料を受け取ったりする「せどり屋」という商売があったが[2]、現在では新古書店などで安く売っている商品や古紙回収で集めた書籍を、主にインターネットを利用して販売する事を「背取り(せどり)」と言い、せどりをしている個人や業者を「せどらー」などと呼ぶ。リサイクル業務の一つに分類できる[要出典]。本の背(背表紙、タイトル)で仕入れを判断することからこの字が当てられる[3]。坪内祐三はブックオフなどで、携帯やスマホのバーコードリーダー(アプリ)でAmazonの買い取り価格をチェックしつつ仕入れる本をチェックすることを「Amazonせどり」と表現した[3]。
本に限らず、CD、DVD、ビデオソフト、ゲームソフト、カレンダーなど、インターネット上に中古市場の存在する多くの媒体が販売ルートとなっており、「せどり」を指南するウェブサイトやノウハウ(情報商材)を売る商売、または専門の塾やセミナー、ツールも存在している。[要出典]
せどりを題材にした創作
- 『探石行』(つげ義春) - 『無能の人』第4話に収められている。古本業者の山井が登場。山井は「病」をもじったもので、せどりをなりわいとし、いつも寝てばかりいる。
- 『せどり男爵数奇譚』(梶山季之:著) - 古書ミステリー小説で「せどり」という言葉を世に広める切っ掛けを作ったという説がある[4][5]。
- 『死の蔵書』(ジョン・ダニング:著) - せどり屋が被害者のミステリー小説。
- 『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上延:著) - 主人公の働く古書店の常連にせどり屋がいる。ミステリー小説。
- 『栞と紙魚子』「古本地獄屋敷」(諸星大二郎:著) - 行方不明になった、主人公の父の居場所を示唆するのがセドリ師。漫画。
法令による規制
原則として、日本国内において、いったん一般消費者の手に渡った物品(「古物」)を転売買して営業を行う者は古物営業法に基づく古物商許可を受ける必要がある[6]。個人であっても、古物商許可を得ずにインターネットオークションその他で継続反復し、大量の転売買営業を行っている場合、古物営業法違反により逮捕される事例がある。
参考
- 大辞林 第二版(三省堂)
- 全訳 漢辞海(三省堂)
- 書物語辞典(1936年 古典社 古典社編集部):[7]
- Weblio辞書:[8]
- 増殖漢字辞典:[9]
- 散歩の達人 2005年10月号 神保町特集:古書組合の競り売りの模様などが紹介されている。
- まんだらけ風雲録(古川益三:著):古書組合の競り売りやまんだらけがせどりで大儲けするエピソードなどが収録されている。
脚注
- ^ “せどりの意味 - goo国語辞書”. goo辞書. 2022年1月6日閲覧。
- ^ 唐沢俊一、唐沢俊一ホームページ :: 日記(2000年12月27日)、2013年3月2日参照。
- ^ a b 坪内祐三「高原書店からブックオフへ、または「せどり」の変容」『新潮45』第34巻第6号、2015年6月、174-183頁、NAID 40020457447。
- ^ 松岡正剛、536夜『せどり男爵数奇譚』梶山季之|松岡正剛の千夜千冊(2002年5月14日)
- ^ 【赤字のお仕事】「糶取り」…ネットオークションでもおなじみのあれはこう
- ^ “古物商は必要?逮捕される?取得のメリット・デメリット”. 警視庁. 2013年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月28日閲覧。
- ^ pdfファイル
- ^ 競取りとは
- ^ Archived 2013年1月20日, at the Wayback Machine.
関連項目
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