【T-55】(てぃーごじゅうご)
ソ連が1958年に開発し1970年代後半まで生産された、冷戦時代を代表する主力戦車。
T-54と一纏めにしてT-54/55とも呼ばれる事もある。
T-54の改良・発展型でNBC防御システムを標準装備し、エンジンを580馬力の物に換装、空気圧でクラッチ操作を助ける動力サポート機構が追加されている。
工作精度が悪く、歯車の噛み合わせがきちんとしていない関係でギアチェンジが非常に固いため、車内にはレバーを叩くためのハンマーが装備されている。
本車は多数の紛争で使用され、低いシルエットと避弾経始の良さ・強力な武装・良好な機動性により、ソ連軍の最強・最優秀戦車と呼ばれて西側から極めて恐れられた。
本車の実際の性能が西側に明らかになるのは、中東戦争でイスラエル国防軍の戦車に苦戦し、イスラエル軍が鹵獲した実車がアメリカなどに引き渡され、性能テストが行われてからであった。
輸出は主に中東諸国や中国・インドなどのアジア・アフリカなどに対して行われた。
ポーランドやチェコスロバキアなどではライセンス生産も行われている。
ライセンス生産品は工作精度が比較的良好で、ソ連製のものよりギアは固くない。
開発から半世紀以上経った現在でも、電子化されておらずブラックボックスもない純粋な機械部品で構成されるこの戦車は扱い・整備が簡便であることから、多くの途上国や武装勢力で現役である。
スペックデータ
乗員 | 4名 |
全長 | 9.2m |
車体長 | 6.45m |
全高 | 2.35m |
全幅 | 3.27m |
重量 | 36t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
エンジン | V2-55 12気筒液冷ディーゼルエンジン(580馬力) |
最高速度 | 50km/h(整地) 35km/h(不整地) |
行動距離 | 約460km |
兵装 | D-10T 56口径100mmライフル砲 Dshk 12.7mm機関銃2挺 SGMT 7.62mm機関銃2挺 |
装甲 | 防盾210mm 砲塔側面110mm・後面60mm 上面30mm 車体前面上・下部100mm 車体側面上部80mm・下部20mm 車体上面33mm・底面20mm |
T-55の派生型
- T-55A
NBC防護システムを装備した型。
- T-55AM
FCSを換装した型。
- T-55AMV
爆発反応装甲を装備した型。
- T-55AD
対ミサイル防護システムを搭載した型。
- MTV-55
自走戦車橋型。
- T-55AGM
ウクライナでの近代化改修型。主砲やエンジンの換装、「ニージュ(ナイフ)」爆発反応装甲ブロックと複合装甲の追加等が行われている。
- T-55AM2
チェコでの近代改修型。
砲発射式対戦車ミサイルの発射能力の付与と、装甲防御力・射撃統制システムの性能向上が行われており、射撃統制システムはKTD-2レーザー測遠機とTShSM-32PB照準機、対戦車ミサイル用の1K13レーザー照準・誘導装置、BV-55デジタル弾道コンピュータを装備し、車体上部前面には箱型追加装甲、砲塔前半部には馬蹄型追加装甲が施された。
海外へも一部が輸出され、カンボジアなどが配備している。
- T-55 エニグマ
湾岸戦争においてイラク軍が使用した増加装甲装備型。
砲塔周りと車体に中空の鉄箱を貼り付け、対HEAT弾用のスペースドアーマーにしている。基本はT-55だが、ハッチなど細部にT-54の部品も混じって使われている。
- チラン5
中東戦争で捕獲したT-55(チラン2)にイスラエルが近代化改修を行った派生型。
主に副武装のDshk 12.7mm機関銃とSGMT 7.62mm機関銃がブローニングM2とブローニングM1919に換装されたほか、装填手や運転手のハッチが新型に付け替えられた。
名称はチラン海峡に由来する。
- TR-580
ルーマニアでの独自改修型。
足回りが片側6個の小転輪と上部支持輪を組み合わせた西側標準タイプになり、ゴム製サイドスカートを導入している。
イラン・イラク戦争ではイラク軍が戦車兵力を補うために輸入し、戦線に投入している。
- TR-85
TR-580の改修型。
車体を延長し、ドイツ製DE-830CPディーゼルエンジンを導入したことが大きな特徴で、他にも中国との技術提携によるレーザー測距器が追加され、車体前面と砲塔には複合装甲が施されている。
主砲にはD-10T2S 100mmライフル砲を搭載する。
- TM-800
TR-580の輸出仕様。
基本的内容はTR-580と同等であるが、複合装甲を砲塔前半部に導入し、主砲にはTR-580と同じD-10T2S 100mmライフル砲を搭載するが、デジタル弾道計算機やレーザーレンジファインダーで構成される新型射撃統制システムを装備する。
しかし、チェコやポーランド等、同系列の戦車やT-72改修型を生産・販売する競争相手も多く、国際市場でも今のところ輸出商談の成立もみていない。
- TR-85
- BTR-T
旧式化したT-55の車体を利用して製造した歩兵戦闘車。詳しくはBTR-Tを参照。
- アチザリット
チラン4・チラン5をベースに開発されたイスラエルの装甲兵員輸送車。アチザリットを参照。
T-55
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 09:08 UTC 版)
T-55(ロシア語:Т-55)は、ソビエト連邦で開発された中戦車である。戦後第一世代の主力戦車とも分類される。
注釈
出典
- ^ “ロシア、博物館にしかないような「T-55」タンクまで動員…「固定砲として使用」”. 中央日報 (2023年5月9日). 2023年11月21日閲覧。
- ^ “60年前のロシア軍戦車、ドニプロ川の橋頭堡攻撃試み撃破される?”. Forbes (2023年11月21日). 2023年11月21日閲覧。
- ^ https://www.cnn.co.jp/world/35202810.html
- ^ https://web.archive.org/web/20230621050602/https://japanese.joins.com/JArticle/305717
- ^ tanks-encyclopedia.com T-55/130 Self Propelled Gun
- ^ T-55/160mm自走砲 実車写真
- ^ “In Iraq has developed a new tank Al-Kafeel based on the Soviet T-55” (英語). weaponews.com. 2020年5月8日閲覧。
- ^ “IRQ - al-Kafeel 1 (modernizace tanku T-55) : Other” (英語). https://www.valka.cz. 2020年5月8日閲覧。
- ^ Sawiyya, AuthorRangga Baswara (2019年6月14日). “Irak Luncurkan Tank Baru Kafeel-1 Hasil Upgrade Type-69QM” (英語). Airspace Review. 2020年5月8日閲覧。
T-55
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