820形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/03 04:56 UTC 版)
「山陽電気鉄道820・850形電車」の記事における「820形」の解説
終戦後、戦災や自然災害によって極端な車両不足に陥った山陽電鉄は、運輸省モハ63形の割当車である700形を導入するという、思い切った手段をとることで車両不足を解決すると同時に、前身の宇治川電気電鉄部創設以来の懸案であった、明石以東の区間における架線電圧の直流1,500Vへの昇圧をはじめ、車体の大型化および規格の統一についても同時に達成した。この一連の大工事によって、兵庫 - 姫路間を大型車で直通運転可能となり、この直通運転に充当する車両として5編成10両の700形に続く大型車の新製投入が計画された。 もっとも、1948年の計画段階では日本の車両工業界は前年の危機的状況こそ脱したものの、未だ機器や部材の調達について困難な状況が続いており、国鉄モハ63形の割り当てを受け入れる以外では、原則的に運輸省が制定した規格型電車と呼ばれる一連の標準設計車を導入する他なかった。 そこで、20m級車体を備える700形は当時の山陽の輸送実態においてはあまりにも大型過ぎたことから、1列車単位での輸送力の適正化を考慮し、車体幅はホームに隙間が出ないように700形と同じ2.8mを踏襲しつつ車体長を17mに短縮、この条件に適合する運輸省規格型(A型)準拠の設計が採用されることとなった。 もっとも、後に820形と通称されることとなるこのグループの設計認可申請が出される頃には日本経済の復興の進展で車両製造を巡る状況は大幅に改善されており、規格型電車についても基本的な部材寸法は未だ厳しい制約が課せられたままであったものの、内装などについては各鉄道会社側の裁量による仕様変更が認められるようになっていた。そこで山陽電鉄では社内で検討を重ね、営業面や沿線・利用者へのPR効果も勘案して、第二次世界大戦後の日本の私鉄で新造された車両としては最初の例となる、各車客用扉間座席への転換クロスシートの導入・設置が決定された。 本形式登場の前にも、1947年に運転を開始した近畿日本鉄道の特急など、優等列車にクロスシート車を使用した事例はあるが、近鉄特急の場合であれば戦前から走っていた近鉄2200系や近鉄6301系電車を整備し充当していた。このため、純然たる特急車用新造車としては、山陽の820形が戦後最初に完成・就役した車両となる。なお、820形の登場後に製造された他の私鉄の特急用車両としては、同じ1949年に続いて登場した小田急電鉄1910形や1950年に登場した近鉄6401系があるが、これら大手私鉄の車両に先んじてこうしたロマンスカーを導入したことは、戦災による保有車両壊滅という危機的状況を経て、車両の大型化と路線の規格統一を完了したばかりの山陽にとっては快挙であった。
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車体設計は前述の通り運輸省の私鉄向け規格型設計のうち、A型と呼ばれる仕様に準拠している。 これは全長17,000mm、最大幅2,800mmとし、半鋼製全溶接構造で窓の上下に補強帯(ウィンドウ・シル/ヘッダー)を露出させた、当時としては一般的な構造のものである。 側面窓配置はd1 (1) D8D (1) 2(d:乗務員扉、D:客用扉、(1) :戸袋窓)で、当然ながら同じ17m級の運輸省規格型電車(A'型)である京阪1300系電車と同様の配置となっている。 車内は前述の通り扉間に転換クロスシートが並び、両端部は電動車での主電動機点検蓋との干渉回避の必要もあってロングシートとされている。 側窓は戸袋窓・客用扉を含めてすべて2段窓とされ、開閉可能な各窓は二段上昇式として下段には併用軌道があったことから保護棒が取り付けられている。 妻面は運転台側が非貫通構造かつ緩くRを描く丸妻とされ、3枚窓で中央と左側の窓が2段窓になっていたほか、前照灯は筒型の通常灯具が屋根中央に1基設置され、尾灯は左右の窓上に各1灯、裾部にはアンチクライマーがそれぞれ取り付けられていた。連結面は切妻で、山陽初の広幅貫通路が採用されている。なお、追加製造された830では連結面側にも運転台が設置されており、連結面にも通常の運転台側に準じた前照灯・尾灯が設置されている。 通風器はガーランド式で屋根中央に1列で配置され、パンタグラフを搭載する偶数車は6基、奇数車は8基、それぞれ搭載する。 塗色は戦前の200形以来のツートンカラーで登場したが、当時のクリームと青緑色のツートンとは異なり、その後1980年代半ばまでの山陽の標準色となるクリームイエローとネービーブルーの鮮やかなツートンカラーで登場し、廃車までこの塗装で首尾一貫した。
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