100年に一度の再開発とは? わかりやすく解説

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渋谷再開発

(100年に一度の再開発 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/27 08:49 UTC 版)

渋谷再開発(しぶやさいかいはつ)は、渋谷駅周辺地域で東急が主導して行っている、大規模な市街地再開発事業及び土地区画整理事業の総称である。「100年に一度の再開発」と呼ばれる。

経緯

これまで渋谷駅は、戦後の日本の高度経済成長百貨店競争、若者文化の隆盛、ITベンチャーの起業ブームなどで発展する中、4つの鉄道会社(JR東日本東急営団(現・東京メトロ)、京王電鉄)の8路線(山手線埼京線湘南新宿ライン東横線田園都市線銀座線半蔵門線井の頭線)が乗り入れるようになり、そのたびに拡張・増築を繰り返し、複雑に入り組んだ状態となっていた。この複雑さは渋谷の魅力であった一方で、人の動線の混乱を引き起こしたり、災害への備えが脆弱だったりと、弱点が露呈していた[1]

また、渋谷駅の駅施設と駅ビルは大正時代から戦前期にかけて形づくられた骨格をベースに、戦後復興期から1960年代にかけて改修・増築されたものであり、ほとんどの建物が1981年の耐震基準改正以前に建設されていることから老朽化が問題となり、安全性や防災面で対応が迫られていた。さらに、渋谷駅は渋谷川が形成する細長い谷地形の底に位置しているために浸水・冠水被害を受けやすかったり、駅からバスタクシーへの乗り継ぎで車道の横断が必要な箇所が多かったりと安全性の課題を抱えていた[2]。それだけでなく、小売業の多様化や競争激化[3]、及びネットショッピングの普及・隆盛などといったライフスタイルの多様化による2000年代以降の百貨店の売上低迷[1]は、渋谷駅の駅施設の中核となっていた東急百貨店東横店東急百貨店本店にも影響しており、消費の変化に対応し[4]リテール事業の業態を転換することが迫られていた[3]

その他、渋谷地域は都内の他地区と比べて空きオフィスの数や面積が少なく、渋谷に集まりつつあったベンチャー企業の需要を満たすことが困難になっていた[5]2000年頃、渋谷エリアにはGoogleAmazon.comLINEなどのIT企業が多く本社を構えており、「ビットバレー」と呼ばれていたが、業容の拡大で手狭になるなどして、その多くが渋谷を離れていった[6]

また、渋谷地域は外国人旅行者が多く集まるスポットでもあるにもかかわらず、ホテルの客室数も新宿の約5分の1と少なかった。これにより、夜遅くまで渋谷に滞在する観光客は少なく、ビジネス目的の出張でもホテル需要を満たせていない状況にあった[7]

そんな中、小渕内閣の緊急経済対策によって、長年棚上げされていた営団地下鉄13号線(現・東京メトロ副都心線)の渋谷延伸の方針が2001年に決定し、翌2002年には東急東横線との相互直通乗り入れ開始も決定した[2]。乗り入れに伴い渋谷駅 - 代官山駅間を地下化することも決まったことで、渋谷駅周辺に駅施設と線路の跡地からなる広大な未利用地が生まれることになり、2005年には渋谷駅周辺の139haが都市再生特別措置法に基づく特定都市再生緊急整備地域に指定されたこともあって、これを利用した大規模な再開発計画が動き出した[8]

この再開発にあたって、事業主の東急や渋谷区東京大学日本大学といった産官学と連携し、一貫した渋谷の街のグランドデザインを構想した。そこで目指したのが、「経済優先の街から人のための街にすること」であった[1]

事業一覧

渋谷ヒカリエ

2003年6月30日に閉館した東急文化会館跡地の再開発で、東京メトロ副都心線の東急東横線との相互直通運転開始に先立つ2012年4月26日に開業した[9]

渋谷駅街区

渋谷スクランブルスクエア

2013年3月16日の東急東横線の東京メトロ副都心線との相互直通運転開始に伴う渋谷駅ホームの地下化に伴い廃止された旧地上駅舎跡地と、2020年3月31日に閉店した東急百貨店東横店跡地の再開発である。東棟、西棟、中央棟に分かれており、東棟は東横線渋谷駅旧地上駅舎跡地と2013年3月31日に先行で閉店した東急百貨店東横店東館[10]跡地で西棟、中央棟に先立って建設され、2019年11月1日に開業した。残る西棟と中央棟は東急百貨店東横店西館及び南館跡地と渋谷駅の直上に建設され、2028年に完成する予定である[11]

渋谷駅の改良

2013年3月16日に東急東横線の東京メトロ副都心線との相互直通運転が開始されたことを契機として、渋谷駅の改良も行われた。JR東日本は2015年から2023年まで計5回に渡り、渋谷駅で運休を伴う線路切替工事を行った。2020年には、これまで東急百貨店東横店東館と東横線渋谷駅が建っていたことから山手線ホームよりも約350m南に離れた場所に存在していた埼京線及び湘南新宿ラインのホームが山手線ホームと並列した場所に移転し、乗り換えの利便性が向上した[9][12]他、2023年1月9日には、山手線ホームが島式となった[13]。東京地下鉄は2009年から断続的に工事を進め、2016年から2020年にかけて計4回に渡って行われた運休を伴う線路切替工事も経て2020年に銀座線ホームを東急百貨店東横店内から明治通りをまたぐ位置に移転した[14]

渋谷キャスト

都営住宅「宮下町アパート」跡地の再開発で、2017年4月28日に開業した[15][16]

渋谷ストリーム

2013年3月16日の東急東横線の東京メトロ副都心線との相互直通運転開始に伴う渋谷駅ホームの地下化に伴い廃止された旧地上駅舎跡地の南側で行われた再開発で、2018年9月13日に開業した[17]。この事業と並行して、隣接する渋谷川の整備も官民連携で行われ、渋谷川の水流が復活した他、渋谷川沿いには東急東横線の旧線路跡地を活用して遊歩道「渋谷リバーストリート」が整備された[18]

渋谷ブリッジ

2013年3月16日の東急東横線の東京メトロ副都心線との相互直通運転開始に伴う渋谷駅〜代官山駅間の地下化に伴い廃止された線路跡の再開発で、2018年に完成した[19]

渋谷ソラスタ

東急不動産の本社があった「新南平台東急ビル」とその周辺を一体的に建て替える計画で、2019年3月29日に竣工した[20]

渋谷フクラス

2015年3月22日に閉店した東急プラザ渋谷[21]跡地の再開発で、2019年12月5日に開業した[22][23]

Shibuya Sakura Stage

渋谷駅桜丘口に存在していた老朽化した小さな建物が密集した地域を一体的に開発する計画で[24]2023年11月30日に竣工した[25]

渋谷アクシュ

渋谷ヒカリエに隣接した4棟のビルを一体的に建て替える計画で、2024年7月8日に開業した[26]

Shibuya Upper West Project

2023年に閉店した東急百貨店本店跡地の再開発計画。2027年度竣工予定。

出典

  1. ^ a b c 100年に1度の大規模再開発!渋谷はどう変わるのじゃ? - NHK
  2. ^ a b 田原裕子「「100年に一度」の渋谷再開発の背景と経緯 ー地域の課題解決とグローバルな都市間競争ー」『人文地理学会大会 研究発表要旨』2020年、18-21頁、doi:10.11518/hgeog.2020.0_18 
  3. ^ a b 東急本店の閉店 電鉄系百貨店「路線変更」の向かう先”. WWD JAPAN (2023年2月6日). 2023年12月10日閲覧。
  4. ^ 東急百貨店、新業態に注力 東横店2020年に営業終了”. 日本経済新聞 (2019年7月22日). 2023年12月10日閲覧。
  5. ^ 渋谷再開発、若者〝だけ〟の街から脱却へ 新たなランドマークが11月完成”. 産経新聞 (2023年2月10日). 2023年12月3日閲覧。
  6. ^ 渋谷「複雑・歩きにくい」は再開発で解決する?”. 東洋経済オンライン. p. 5 (2018年2月18日). 2023年12月3日閲覧。
  7. ^ 100年に一度の再開発で渋谷の姿はこう変わる - 宣伝会議デジタルマガジン
  8. ^ 東急グループと渋谷 - 東急電鉄株式会社
  9. ^ a b あれから20年…渋谷駅周辺再開発ストーリー「渋谷がオトナになる日」”. シブヤ経済新聞 (2019年11月1日). 2023年12月3日閲覧。
  10. ^ 「東急百貨店東横店」東館が閉館 渋谷駅再開発に伴い解体へ”. FASHIONSNAP (2013年3月31日). 2023年12月4日閲覧。
  11. ^ 「渋谷スクランブルスクエア」が開業 新たな渋谷のシンボルに”. 朝日新聞デジタル (2019年11月5日). 2023年12月3日閲覧。
  12. ^ 渋谷駅「埼京線ホーム」が遠く離れているワケ”. 東洋経済オンライン. p. 2 (2018年6月14日). 2023年12月3日閲覧。
  13. ^ 第4回渋谷駅線路切換工事が完了! 山手線外回りホーム82年の歴史に幕 - 鉄建建設株式会社
  14. ^ 銀座線が丸2日運休、「渋谷駅大工事」の全貌”. 東洋経済オンライン. p. 2 (2016年11月9日). 2023年12月3日閲覧。
  15. ^ “「渋谷の日」に複合施設「渋谷キャスト」開業 オープニングイベント多彩に”. シブヤ経済新聞. (2017年4月28日). https://www.shibukei.com/headline/12284/ 2023年12月3日閲覧。 
  16. ^ “宮下町アパート跡地事業”. 東京都都市整備局. (2017年10月19日). https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei03.htm 2023年12月3日閲覧。 
  17. ^ “渋谷ストリーム開業 地上35階、グーグル日本法人も入居”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2018年9月13日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35321680T10C18A9XQH000/ 2023年12月3日閲覧。 
  18. ^ まだまだ終わらない!渋谷の再開発プロジェクト全部見せ→2027 - おうち大学
  19. ^ “渋谷ブリッジ 完成”. 建設工業新聞. (2018年9月13日). https://www.decn.co.jp/?p=102248 2023年12月3日閲覧。 
  20. ^ 東急不動産株式会社: ニュースリリース「渋谷ソラスタ(SHIBUYA SOLASTA)」竣工(2019年3月19日)
  21. ^ 東急プラザ 渋谷が3月22日をもって閉館 特別セールや渋谷の歴史を辿る企画展実施”. WWD JAPAN (2014年12月11日). 2023年12月3日閲覧。
  22. ^ 「大人をたのしめる渋谷へ」をコンセプトに 新生「東急プラザ渋谷」 渋谷駅西口に、12月5日(木)グランドオープン 東急不動産ニュースリリース、2019年09月11日、2023年12月3日閲覧。
  23. ^ 新店・改装店情報 東急プラザ渋谷 50代以上の大人を渋谷に呼び戻す! 商業界オンライン、2019年12月5日、2023年12月3日閲覧。
  24. ^ 渋谷駅桜丘口地区で開発中の複合施設の現場を見てきた。名称は「Shibuya Sakura Stage」に決定”. トラベルWatch (2023年2月10日). 2023年12月3日閲覧。
  25. ^ 渋谷駅直結「Shibuya Sakura Stage」竣工!東京都渋谷区・桜丘エリアに新たなランドマーク”. 健美家 (2023年11月29日). 2023年12月3日閲覧。
  26. ^ 渋谷二丁目17地区再開発の名称が「渋谷アクシュ」に 広場やデッキ整備も”. シブヤ経済新聞 (2023年5月30日). 2023年12月3日閲覧。

関連項目

外部リンク


100年に一度の再開発

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 17:55 UTC 版)

渋谷」の記事における「100年に一度の再開発」の解説

2013年東急東横線渋谷駅地下化したのを契機に各線の渋谷駅改良工事東急及び東急不動産主導してそれに伴う周辺地域大規模な都市再開発行っており、その規模は「100年一度と言われる2012年渋谷ヒカリエ完成以降渋谷ストリーム渋谷スクランブルスクエアといった、オフィス併設複合商業施設次々と建設している。都心3区千代田区港区中央区)や西新宿擁する新宿比較するともともとの渋谷オフィスビル集積それほど多くはなかったが、再開発により渋谷高層ビル化及びIT企業中心としたオフィス機能強化進んでいる。 スーモ関東住みたい街ランキング」では2016年10位(2018年11位)など上位ランクインし、賃貸マンションなどの建設相次いだ一方学生渋谷離れ原宿台頭起きており、もはや「若者の街」ではなく中高年の街」ではないかとの指摘もある。 2020年には埼京線ホーム山手線と並ぶ位置移動し他路線との乗換時間短縮され一方COVID-19及び緊急事態宣言打撃受けた再開発全体完成としては2027年予定しており、渋谷大きな変化遂げている。

※この「100年に一度の再開発」の解説は、「渋谷」の解説の一部です。
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